上高地(8) 山間の秘湯 白骨温泉へ
見晴台から、車はどんどん谷底へと向かい、白骨温泉に着きました。小さな集落に8軒、少し離れたところに3軒のお宿があるだけのこじんまりとした温泉です。集落に入ったとたん、ほんのりと湯の花の香りが鼻をくすぐりました。民芸風の味わいのある家並みに、旅情をかきたてられました。
白骨温泉は、大正時代に新聞に連載された、中里介山の「大菩薩峠」という小説に登場し、その名を広く知られるようになったそうです。山の奥深く、まさに秘湯とよぶのにふさわしい温泉で、昔の人はどうやってここまで来たのだろう、と想像をかきたてられました。
今回私たちがお世話になったお宿は、江戸時代から続いているという老舗、湯元齋藤旅館です。チェックインして、お部屋でひと休みした後は、早速小さな集落を歩いてみました。
(左)一軒だけあった味わいのあるお土産屋さん。白骨温泉は長野県と岐阜県のほぼ県境にあるので、信州のほか、飛騨の民芸品や名産品もありました。野沢菜漬けや信州味噌など、私もいろいろ買い求めました。
(右)この地方の伝統的な家の造りなのでしょうか。古い佇まいのすてきなお宿がありました。
(左)なまこ壁の土蔵も味わいがありました。外人のお客様が、興味深そうに見ていましたよ。小さな集落はあっという間にひと回りしてしまいましたが、ざあざあという渓流の音と、湯の花の香りに、酔うような心地よさを感じました。
(右)湯元齋藤旅館は、7年前に改築したそうで、最新式の設備が整っていましたが、古材を使って、昔の建物の一部が復元されていました。こちらは大正当時の建物を復元した大正館です。
(左)こちらは明治当時の建物を復元した明治館。1階はラウンジとライブラリーになっていました。(右)廊下にあったお花。飛騨の背負子(しょいこ)がかわいい♪ すぐそこで摘んできました、といった感じのお花と枝の活け込みがすてきでした。
白骨温泉のお湯は乳白色。ふんわり優しいお湯の色は周囲の自然とよく調和して、心がほぐれるのを感じました。筋肉痛に効くそうで、心なしか足の疲れもすうっと和らぐようでした。香りが強く、旅行から帰った後も何日間か、ずっと湯の花の香りがしているような気がしました。
お風呂の後は、ゆっくり食事を楽しみました。
前菜の季節の七種盛りです。洋の要素を取り入れた華やかな盛り付けでした。右に見えるのは枝豆豆腐。そして奥にあるのは地元の信州安曇野豚のしゃぶしゃぶ。紙鍋でいただきました。
(左)右は地元の飛騨牛のステーキ。左は季節の鱧(はも)のてんぷら。アンデスの紅塩でいただきました。(右)あいなめと丸茄子の炊き合わせ。小さな人形のついた器がかわいかったです。
このほか、焼き物やお造りなどがあり、最後は梅紫蘇のごはんとともに、おつゆの代わりに信州そばをいただきました。松本の酒造で作らせているというお宿のオリジナルの日本酒が、お魚にもお肉にも合い、きりっとした口当たりでとてもおいしかったです。
【 おまけ 】 旅の余韻を味わいたくて、中里介山の時代小説「大菩薩峠」を借りてきました。全部で20冊ある長編小説ですが、(七)~(八)にまたがっている「白骨の巻」だけ、読もうと思います。どんなお話でしょうか…? わくわくしてきます。
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コメント
こんにちは。
わ~、温泉だ!
風情のあるステキな温泉地ですね。私も行きたいな~。
私の夢は、ひなびた温泉地で1ケ月位静養でもしながら、本を読んで過ごす事です。でもいざとなったら、数日で退屈しちゃうかな?(笑)
「大菩薩峠」は読んだ事はないんですが、片岡千恵蔵と市川雷蔵が机竜之介を演じた映画を見た事があります。虚無を描いたニヒリズムあふれる作品なんですよ~。原作、すごい長いですよね~。
ああ、飛騨牛
のステーキ、食べたい・・。(笑)
投稿: ごみつ | 2009年8月26日 (水) 14時13分
こんばんは!
前から行ってみたい所でした。
近くまでは行った事は、あるのですがまだ行っていないので〜
乳白色の温泉に入って、美味しい飛騨牛と日本酒を飲んでみたいです♪
セレンディピティさんらしいですね、早速本を借りていらしたんですね!
楽しみが倍増で また行きたくなりますね!
投稿: Rei | 2009年8月26日 (水) 20時15分
☆ ごみつさま ☆
山の奥深くにあって、あまり観光地化されていない
素朴ないい温泉でした。お湯もとてもよかったので、
私もまた行ってみたいな~と思いましたよ。
温泉にのんびり一ヶ月、いいですね~
昔は湯治とか、あったのでしょうが
気ぜわしい今の時代には、なによりのぜいたくですね。
「大菩薩峠」今回初めて知りましたが、映画にもなっているのですね!
出演者の豪華さから想像するに、
当時はきっと人気の作品だったのでしょうね。
時代ものは読んだことがないので、どうなるかしらと楽しみです。
投稿: セレンディピティ | 2009年8月27日 (木) 07時39分
☆ Reiさま ☆
白骨温泉、素朴で旅情があって、
Reiさんもきっと気に入られるのでは、と思います。
ちょっと行きにくい場所にありますが、
そこがまたいいのかもしれませんね。
お湯もすばらしかったですし、地元の食材を使ったお料理は
おもてなしの心が感じられて、どれもおいしかったです。
「大菩薩峠」は中里介山がこちらのお宿に泊まって執筆されたそうなので、
気になって、読んでみたくなりました☆
投稿: セレンディピティ | 2009年8月27日 (木) 07時48分
なるほど〜。
温泉に宿泊する予定があったのもあって、上高地ではフレンチを選択されていたのですね。
木造の趣きある建物が魅力的な山の中の温泉ですね。
長野と岐阜の県境と聞くと「山の奥」という感じがしますが、標高も高いのでしょうか。
日本にはたくさんの温泉街がありますが、近代化が進み、情緒豊かな温泉街は少なくなっている傾向があるように感じます。こういう古き良き日本の文化や伝統を大切にする温泉街はいつまでも残っていて欲しいものですね。
投稿: olive | 2009年8月27日 (木) 10時11分
☆ oliveさま ☆
たしかに旅先で和食が続くと、飽きてしまいますね。
でもそれとは別に、帝国ホテルではフレンチと決めていたんですよ。
古い佇まいの木造建築が魅力的な、素朴な雰囲気の温泉でした。
上高地や白骨温泉は、どちらも長野県と岐阜県の県境にあって
だいたい1500m級です。空気が薄いとは感じませんでしたが
朝晩は東京よりはだいぶ涼しかったです。
温泉町にはそれぞれ特徴があって魅力的ですが
たまにはこういう幽境な温泉もいいものだなと思いました。
普段の生活を離れて、リフレッシュしました☆
投稿: セレンディピティ | 2009年8月27日 (木) 15時02分