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「昼が夜に負うもの」 / レモンケーキ

久しぶりに、最近読んだ本から…。新聞の書評で見ておもしろそうだと思い、ヤスミナ・カドラの「昼が夜に負うもの」という作品を読みました。

     Photo_3 「昼が夜に負うもの

ヤスミナ・カドラは、アルジェリアからフランスに亡命したアラブ系の作家です。軍の検閲を逃れるために、ヤスミナという女性名のペンネームで執筆活動を始めたというユニークな経歴を持つ作家で、この作品は、フランスでベストセラーになったそうです。

アルジェリアは自分にとっては遠い存在の国ですし、しかも本はかなり分厚い。もともと翻訳小説は読みにくくて苦手なのですが、この作品は日本語訳が美しく、自然と物語の世界に入ることができました。アルジェリアを舞台に、戦争という時代をはさんで描かれる青春物語です。

主人公は天使のように美しいアラブ系の少年ユネス。裕福で教養ある叔父のもとで愛情たっぷりに育てられた彼は、ヨーロッパ系の少年たちと深い友情で結ばれます。しかし、アルジェリア戦争が始まると、彼はアラブ名のユネスとフランス名のジョナス、ふたつのアイデンティティの間で苦しむことになります。

私の心に一番響いたのは、ユネスが、いわれない罪を着せられたアラブ人の召使を助けようとして、雇い主である友人の父親と話す場面です。

地平線まで広がる葡萄畑を眺めながら、「荒れた土地に命を吹き込み、このような美しい風景を作り上げたのは私たちだ」という友人の父に対して、「自然に対して謙虚に生きていた人々の土地を取り上げたのあなたたちだ」と答えるのです。

ユネスはエミリーという女性を生涯愛し続けますが、ある事情によって、その恋は決して叶うことがありません。苦悩しながらも最後まで自分を貫き通すユネスの強い心に感動しました。

          ☆          ☆          ☆

小説の舞台はアルジェリア。まだ見ぬ国の、エキゾチックな街の様子やのどかな田園風景を想像しました。そして地中海の青い海! 地中海というとヨーロッパからの視線で考えてしまいますが、アフリカから見る地中海もさぞ美しいだろうなと思いました。

地中海といえば、レモン。(…かなり強引ですが  )先日、レモンケーキを焼きました。

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お正月に伊豆を訪れた時に採ってきた無農薬のレモンの皮を2個分入れて作りました。アイシングを雪の結晶の形にしぼって乾かし、ケーキの上にのせて、粉砂糖をふりました。先日東京方面で降った雪を思いながら…。

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レモンの香り豊かなバターケーキ。おいしくいただきました。

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コメント

アルジェリアは、かつてこの地を支配するスルタンが、数十万の白人奴隷を酷使していた国ですね。ちなみに、それは19世紀初頭まで続きます。その後、フランスの植民地にされ、主客逆転したわけです。それだけに複雑な民族感情を育んだ土地なのだろうと思います。その地を舞台にしたのなら、きっと波瀾万丈の物語が紡がれるのでしょうね。仕事がひと段落したら読んでみたいですね。

投稿: ヌマンタ | 2010年2月 4日 (木) 12時37分

私も翻訳物って苦手です。よほど「読んでみたい!」と思わない限り手をつけませんね。
というか、最近は日本のものも全然読めてなくて…。

昨日テレビで脳科学者の茂木さんが「最近の生活はインターネットや携帯電話の便利機能に頼りすぎてなくて脳を使わなくなっている。脳を鍛えるには考えることが大切だ」というようなことをおっしゃっていて、彼と「確かに最近頭使ってないよね。考えたり思い出そうとすることがなくなってきているよね。そう考えると本を読むって大切なことだよね」と話していたばかりなんです。

そこへきて、今日のセレンディピティさんの話題は本でしょう?ますます本を読まねば!と思いましたよ。映画を観るのも楽しいけど本には本にしかない良さがありますものね。

投稿: olive | 2010年2月 4日 (木) 15時43分

最近モロッコなど北アフリカに心惹かれているのでアルジェリアが
舞台のこの小説も気になります。
なんだか映画になりそうなストーリーですね。
島国である日本に育つ若い方々にはこういう本を通して
民族や宗教について、何か感じてもらえるといいですね。
私も翻訳物は苦手です。出来る限り原書で読みたいと思うので
フランス語のものは絶対に無理…
もっと真面目に授業受けていればよかったわぁ…

レモンケーキ、爽やかなレモンの香りが漂ってくるようです♪
国産レモンの香りって輸入物とは比べ物にならないですよね!
最近地元の生産者さんのレモンを買ったのですが
包丁を入れた途端、広がる香りにノックアウトされました。
できるだけこれからはこの生産者さんから買いたいと思ってます。

投稿: ゆず | 2010年2月 4日 (木) 16時49分

☆ ヌマンタさま ☆
以前ヌマンタさんは、白人奴隷に関する本を
ご紹介されていたことがありますね。
記事を拝見して初めて知ったので、興味深く思っていました。
歴史的背景を知っていると、もっと違った感じ方ができたかもしれませんが、
未知の世界に触れることができて、とても楽しく読みました。
今とても気になる作家さんです。

投稿: セレンディピティ | 2010年2月 5日 (金) 00時54分

☆ oliveさま ☆
本を読むのは好きで、読みたい本はたくさんあるのですが
読むのが遅いので、なかなか進みません。
でもまあ、自分のペースで楽しめばいいのかな~と思います。
本は映画とはまた違ったおもしろさがありますね!

脳を鍛えるのには、あえてほんの少しアナログの生活にもどす勇気も
必要なのかもしれませんね…。
私は(脳を鍛えるためではなく、単に好きなだけですが)
カーナビではなく地図、
電卓を使わずできるだけ筆算で計算するようにしています。(笑)
う~ん、少しは効果があるかしら~??

投稿: セレンディピティ | 2010年2月 5日 (金) 01時07分

☆ ゆずさま ☆
私もモロッコなど、北アフリカの雰囲気に惹かれます~☆
なんとなくフレンチ・コロニアル風の美しい風景を想像してしまいます。
実際には、いろいろ難しい問題もあるのでしょうが…。
欧米やアジアの情報は、日本にも比較的多く入ってきますが
アラブやアフリカって、私たちには遠い地域ですよね…。
未知の世界をほんの少し垣間見ることができて、楽しかったです。
私も、ひょっとしたら映画化されるかな~?と思いながら読みました。
翻訳ものはわかりにくいですが、かといって原書で読むほどの語学力がないのが、辛いところです。
でもこの作品は、訳者の方もものすごく思い入れがあったようで
とても美しい文体で読みやすかったです。

無農薬のレモン、大事に大事に少しずつ使っています。
ゆずさん、お近くにレモンを作っている方がいらっしゃるのですね!
いいな~☆ レモンの芳しい香り、私も大好きです♪

投稿: セレンディピティ | 2010年2月 5日 (金) 01時19分

この本は読んだ事がないのですが、ぱっとみて他の本を思い出しました。数年前にベストセラーとなったthe kite runnerです。ご存知ですか?これは中東アフガニスタンが舞台で、私は2年位前に読んだのですが、日本語にも訳されているそうです。映画化もされたっていうのはウィキで知りました(邦題/君の為なら千回でも)。映画は観なくてもいいかなぁなんて思いましたが(苦笑)この本、お勧めです。

私はこの本で中東デヴュー(?)したのですが、家の構造や食卓、遊び方がアジアや欧米とまったく違って興味深かったです。

レモンケーキ、次男がとっても好きでして(たぶん小さい時レモンの木を育てていたからでしょうか)今でもよく作ります。食べると舌にちょっとビターな感覚が残るのが美味しいですよね。シチリアにて何度か休暇をとりましたが、あそこは地中海の真ん中に浮かぶ砦の様な島で、内地のイタリア文化と反対側のアルジェリアの文化(アフリカ)が入り混じり、かなり魅力的な土地でした。レモンとアルジェリア…、そしてなぜかシチリアに話しが飛んでしまいました(爆)

投稿: Schatzi | 2010年2月 5日 (金) 23時24分

☆ Schatziさま ☆
「君のためなら千回でも」聞いたことがあります!
これも中東を舞台にした小説/映画なのですね。
ちょっと調べましたら、邦訳は文庫も出ているようなので
早速読んでみたいと思います。ご紹介ありがとうございました☆

レモン味のケーキは、うちでも家族がみんな大好きです。
さわやかな酸味があって、おっしゃるようにちょっと苦味もあって
おいしいですね。
シチリア、行った方に伺うと、確かに魅力的な場所のようですね。
なるほど、地理的にヨーロッパとアフリカと、
両方の文化が混ざっているのですね。
あぁ、いつか行ってみたいです… 

投稿: セレンディピティ | 2010年2月 6日 (土) 01時10分

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