午前十時の映画祭 「ドクトル・ジバゴ」
数週間前、午前十時の映画祭で、1965年に公開された映画「ドクトル・ジバゴ」(原題:Doctor Zhivago)を見に行きました。
途中休憩を含めて、全部で3時間半という長編ですが、ひとつひとつの場面がていねいに描かれていて、次はどうなるのだろう、と飽きることなく物語の世界に引き込まれました。
ロシア革命、第一次世界大戦、といった激動の時代の中で、運命の糸に引き寄せられるようにしてめぐり合った二人が、時代の波に翻弄されながら、やはり運命によって引き裂かれていく物語。ある男女の一大ロマンスが、壮大なスケールで描かれていました。
とにかく映画を見た後は、作品のもつ迫力に圧倒されてことばが出ませんでした。それは、命を賭けて書かれた(本国ロシアでは発禁処分)原作の持つ力強さもあるでしょうが、それ以上に映像のすばらしさ、演じる俳優たちの魅力によるところが大きかったです。
こういう作品を見ると、最近の映画は軽くて、薄っぺらに思えてしまう…。重厚な作品ではありますが、ベースとなるのは恋愛物語なので、二人の行く末にどきどきしながら、オペラを見ているような感覚で楽しめました。
大画面で見る、北国ロシアの美しくも厳しい、壮大な自然の風景にも魅せられました。(冷戦時代の作品なので、実際には別の場所で撮影されたそうです。) また、映画の中で繰り返し登場する、ロシアの民族楽器バラライカが奏でる「ラーラのテーマ」に旅情をかきたてられました。
そして、ラーラを演じるジュリー・クリスティの美しさ! 彼女を取り巻く運命は、その美しさが招いてしまったのでは、と思えるほど。清楚で美しいジバゴの妻トーニャも、すばらしい女性でした。ジバゴはトーニャを心から愛しながら、一方でラーラに対する燃えるような思いも止めることができませんでした…。
形はどうあれ、彼なりのやり方でラーラを愛し、守り続けたコマロフスキー。理想に燃える革命活動家から、冷徹な赤軍の将軍に変わり果てたラーラの夫パーシャ。それぞれのキャストも個性的で、存在感がありました。
「ドクトル・ジバゴ」は2002年にもイギリスでTVドラマ化されており、しかもラーラをキーラ・ナイトレイが演じていると知って、こちらも見てみたくなりました。DVDでは2時間に編集されています。
短くカットされていることもあり、65年版のもつ圧倒されるような重厚感には及びませんでしたが、アレンジが少し違うところもあって、こちらも楽しめました。
キーラ・ナイトレイは文芸作品の似合う美しい女優さんですが、この作品を演じたのは今から9年前…まだ人気が出る前の若い頃とあって、65年版のジュリー・クリスティにはさすがに迫力負けしていましたが、きらきらとした輝きがありました。
65年版では、運命に抗うことのできない二人の愛の物語だったのが、02年版では単なる不倫のドラマのように感じられてしまったのは、今という時代の違いもあるのかもしれません。
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コメント
こんばんは。
確かに昔の大作映画は重厚な感じがしますね。
今は、画像を比較的簡単にCGなどでいじれる分、
大作感が出ない気もします。
また、観る側も沢山の画像に慣れてきていることも
要因かもしれません。
これからの作り手は今までと違った形で撮って行かないと
新鮮感もなく、また、それを実現したものが次代の
映画界を変えていく可能性もあるような気がしています。
投稿: イザワ | 2011年5月11日 (水) 03時26分
☆ イザワさま ☆
もちろん昔も、軽いタッチの娯楽映画はたくさんあったと思いますが
いわゆる名作といわれる、超大作の重みに圧倒されました。
おっしゃるように、今はCGなど技術の進歩で
今まで具現化できなかったような映像も作れるようになりましたが
映像的な驚きはあっても、物語を丹念に積み上げていくような作品は
少なくなっているかもしれませんね。
いつも、というと疲れますが
たまには古い作品をじっくり見るのもいいものだな、と思いました。
投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2011年5月11日 (水) 12時01分
こんにちは。
おお・・「ドクトル・ジバコ」を、劇場でご覧になったのですね!
すごく迫力があっただろうと思います!
もう、私はこの映画のタイトルを聞いただけで、頭には「ラーラのテーマ」が流れまくります!
ああ、これでどうして私の一番好きな監督がデビッド・リーンなのかがわかってもらえたかしら~~。(ノ_-。)
こういう大作を撮れる監督さんは、そうそういませんよね。
女性を主人公にした作品で、あと「ライアンの娘」(アイルランドが舞台)っていうのがあるのですが、それも素晴らしいですよ。
私も久しぶりで「ドクトル・ジバゴ」見たくなってきちゃいました。

投稿: ごみつ | 2011年5月11日 (水) 12時26分
おや、これは懐かしい映画です。三軒茶屋の映画館で高校生の頃、観たと記憶しています。普通は三本立てなのですが、この時は二本立てだったので、ちょっと損した気持ちで入館しましたが、退館する時には満足しきっていましたね。「ラーラのテーマ」、映画音楽好きには忘れられぬ名曲です。カセットテープにため込んでいますが、未だデジタル化していません。そろそろ本気で取り組まねば・・・
投稿: ヌマンタ | 2011年5月11日 (水) 17時31分
☆ ごみつさま ☆
こんにちは♪
「ドクトル・ジバゴ」とってもよかったです~
私の場合、古い映画をあまり見ていないこともあって
よけいに衝撃が大きかったです。
ごみつさんがお好きな、デビッド・リーン監督の作品
少しずつ時間をかけて、ゆっくり見ていきたくなりました。
「ライアンの娘」も、いつか見てみますね。
「ラーラのテーマ」今まではただ映画音楽のひとつでしたが
映画を見た後は、全く違って聴こえました。
映画の力ってすごいですね。
TB、ありがとうございました。
私も後ほどさせていただきますね。
記事を拝見したら、「インドへの道」もデビッド・リーン監督なのですね!
この作品、私はあるシーンが強烈に印象に残っています。
投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2011年5月12日 (木) 13時11分
☆ ヌマンタさま ☆
「ドクトル・ジバゴ」すばらしい映画でしたね。
それにしても、ヌマンタさん、高校生の時に
「ドクトル・ジバゴ」をご覧になったとは、ずいぶんと早熟ですね。
私は、今この齢で見たからこそ、何か感じるものがあった
ような気がしています。
2本のうち、1本が「ドクトル・ジバゴ」でしたら
かなりお得感がありますが、その後は2本めを見ないで
しばらく余韻にひたっていたいです。(笑)
投稿: ☆ ヌマンタさま ☆ | 2011年5月12日 (木) 13時20分