東京国立近代美術館 「生誕100年 岡本太郎展」
記事にするのが遅くなりましたが… 今月初め、竹橋の東京国立近代美術館で開かれていた「生誕100年 岡本太郎展」を見に行きました。
’70年に開催された日本万国博覧会(大阪万博)のシンボル「太陽の塔」などの作品で知られる岡本太郎氏。生前はメディアによく登場していたこともあって、ミーハーなおじさんというイメージを少なからず抱いていましたが、集大成ともいえる今回の展示で、今まで知らなかった岡本太郎氏の新しい魅力を発見しました。
「対決」をキーワードにした今回の展示では、既成の価値観に立ち向かう太郎氏の芸術家としての姿勢に触れることができました。戦前、パリに渡ってピカソの作品に強烈な刺激を受けたという太郎氏は、それまでの日本美術界のありかたや、「きれいな」芸術に異議を唱えます。
たしかに岡本作品の、強い色彩のコントラストやくっきりとした輪郭からは、「美しさ」というよりは、心臓の鼓動や、内側からあふれるエネルギーのようなものが伝わってきます。初期の作品は、抽象画というよりは、グラフィック・アートやアメリカン・コミックスのようにも感じられました。
「駄々っ子」という作品。左はどことなくスポンジボブに似ているような…。(笑)
彫刻や絵画だけでなく、写真作品も数多く残した太郎氏。しかも、現代アートの対極ともいえる原始的な縄文土器に芸術的な美しさを見出し、撮影されていたことに驚きました。また、東北や沖縄を旅して、その土地に残る伝統的な風習やお祭りを取材し、写真や著作の記録を残しています。
そもそも「人類の進歩と調和」という大阪万博のテーマに逆行するかのように、プリミティブアートのトーテムポールを模した「太陽の塔」を創造したのは、現代文明に対する批判も込められているのだそうです。
「芸術は爆発だ!」の名言で知られる太郎氏は、商業デザイナーでもあり、印象的な言葉を紡ぐコピーライターでもありました。自らの戦争体験から、ベトナム戦争時には、アメリカの新聞「ワシントン・ポスト」紙に意見広告を出しました。
岡本太郎氏の作品は個人所蔵がほとんどありません。それは彼が、自分の作品が多くの人の目に触れることを望み、個人の手に渡ることを断ったからだそうです。展覧会は5月8日で終わってしまいましたが、作品は「岡本太郎記念館」や「川崎市岡本太郎美術館」で見ることができます。
岡本太郎記念館 @東京・青山
川崎市岡本太郎美術館 @川崎・多摩
生意気な言い方ですが、岡本太郎氏は自らがピエロとなることで、芸術を多くの人に広め、楽しい、おもしろいと感じてもらうことを望んだのではないのかな…と思いました。彼のひととなりに触れることのできる貴重な展覧会でした。
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コメント
岡本太郎氏の絵は、毎日渋谷駅で観ています。いたずら描きをした馬鹿がいたようですが、太郎氏なら「もっとデッカク描け」と言ったでしょうね。
長いこと、日本の美術界は彼の作品をまっとうに評価することを避けてきましたね。ある意味、鬼っ子でした。今でも一部の美術評論家は彼の作品を避けています。
私に言わせれば、それこそが彼の作品の衝撃度の大きさを証明するものでしかないのですがねェ。
投稿: ヌマンタ | 2011年5月18日 (水) 12時14分
ごぶさたしてゴメンナサイ!
こんばんは!
太郎展にいらっしゃったんですね~☆
私は行きそこないました(笑)
太郎氏の作品を見るとなぜか元気が湧いてきます。
なぜか、というか、作品からあふれるエネルギーをもらっているのかもしれないですね。
亡くなられてからも作品に宿るエネルギーが変わらない(もしくは増大している?)というのはすごいことですよね。
投稿: ルプレ | 2011年5月18日 (水) 21時41分
今晩は。
そうよ!グラスの底に顔があったって良いのよね!
岡本太郎展、行かれたんですね。私も行きたかったな~。
うちの職場でも太郎フェアをやっています。彼の言葉を集めた本が一番売れてますよ。
昔、よくテレビに出ていた頃、「芸術は爆発だ!」っていう言葉が、彼の宣伝文句の様に思えていましたが(子供だったせいもあり)、今では彼が感じていたその言葉の意味がよ~くわかります。
だって、芸術家にとって、芸術は爆発に決まってるのよね・・。
何だか、ホントに展覧会行かなかったのが残念に思えてきちゃいました~。
投稿: ごみつ | 2011年5月18日 (水) 22時06分
浦安の運動公園にも岡本太郎さんのオブジェが
飾られていて、良く目に着く所にあるのは、
凄いことだと思っていました。
あの、目をカッと見開いて話すような仕種は
故意に行っていたと聞いたことがあります。
まさしく、自分をピエロとなることで・・・
だと思います。
投稿: イザワ | 2011年5月19日 (木) 01時18分
☆ ヌマンタさま ☆
渋谷の「明日の神話」については、今日記事を追加しました。
私もこのニュースを聞いたときは、眉をひそめていたのですが
これがなかなかよくできていて(笑)感心しました。
岡本太郎氏、いろいろな意味でインパクトの強い方でしたね。
音楽界でいえば、山本直純さんといったところかしら。(笑)
生前はパフォーマンスの部分が目立っていましたが
お亡くなりになられてから、秘書で養女でいらっしゃる
岡本敏子さんのご尽力によって、アーティストとしての岡本氏が
見直されているそうです。今回の展示では、
今まで知らなかった一面に触れることができ、楽しかったです。
投稿: ☆ ヌマンタさま ☆ | 2011年5月19日 (木) 11時07分
☆ ルプレさま ☆
こちらこそご無沙汰しています。
こんにちは。
お元気でいらっしゃいましたか?
太郎氏の作品を見ると、あふれんばかりのエネルギーに
圧倒されますね。
ご本人も存在感のある方でしたが(笑)
お亡くなりになってからも、作品を通じて私たち見る者に
元気を与え続けるってすばらしいことだな~と思いました。
企画展、懐かしいものにも出会えて、とても楽しかったです。
投稿: ☆ ルプレさま ☆ | 2011年5月19日 (木) 11時26分
☆ ごみつさま ☆
こんにちは☆
あ、展示会に、顔のグラスも置いてありましたよ!
懐かしくなりました。
岡本太郎展、彼の知らなかった一面を見ることもできて
とても楽しかったです。展示会の最後には
太郎氏のことばがいろいろ書かれていましたが、いずれも
既存のものをよしとしない前向な姿勢が感じられて、
励まされる思いでした。
彫刻や絵画作品だけでなく、ことばにもパワーがある方ですね。
芸術は爆発だ!も、一言で本質を捉えていることばですよね。
企画展は終わってしまいましたが、今回の作品は、
ほとんどが青山と川崎の記念館から出品されたものなので
機会があれば是非足を運ばれてみてください。
投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2011年5月19日 (木) 11時38分
☆ イザワさま ☆
岡本太郎さん、作品が多くの方の目に触れることを望み
パブリックアートに力を入れられていたそうです。
街角や公園で、さりげなくアートに出会えるってすてきなことですね。
特徴のある顔つきや話し方を真似するタレントがいても
ご本人はかえって喜んでいたとか。
尊大でない、懐の深い方ですね…。
投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2011年5月19日 (木) 11時58分