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「BIUTIFUL ビューティフル」

ハビエル・バルデム主演の映画、「BIUTIFUL ビューティフル」を見ました。スペインのバルセロナを舞台に、死期を目の前にしたある男の苦悩を切々と描いた物語。重くて救いのない話ですが、なんともいえない味わいがあって、私はとても好きです。静かなるラストに、深々とした余韻を味わいました。

     Biutiful_2

いわゆる余命ものの映画は、いかにも感動させようという企みが感じられて、私はあまり好きではないのですが、この作品にはそうした感傷的な甘さはありません。ここに描かれているのは、底辺ともいえる人生の厳しい現実。そんなところが私の心を捕らえたのかもしれません。

舞台はバルセロナ、といっても「それでも恋するバルセロナ」に描かれた美しい街ではなく、人々がぎりぎりのところでもがいて生活しているスラム街です。ウスバル(ハビエル・バルデム)は、アフリカ系や中国系の不法移民たちに、偽ブランドのバッグを作って売らせる非合法な仕事を斡旋し、その紹介料で生活しています。

犯罪には違いないのですが、中国系移民たちに暖房器具を買ったり、住む場所のなくなったセネガル人の母子を家に招きいれたり、知り合いの警察官に賄賂を渡して彼らを見逃してもらったり… ウスバルを見ていると、善意すら感じられるのが不思議です。彼はまた、死者の魂を静める、おくりびとのような仕事もしています。

ウスバルは二人の子どものよき父親でもあります。コーンフレークの貧しい夕食を、子どもたちの好きなハンバーガーやポテトオムレツに見立てて食べさせるところは、切なくも心温まる場面。こういう人が、どうしてまっとうな生き方ができなかったのか… やり切れない気持ちになりました。

末期の癌に侵され余命が2ヶ月しかないことを知ったウスバルは、誰にもそれを告げず秘かに死にゆく準備を始めます。一番心配なのは子どもたちのこと。しかし別れた妻も、血を分けた兄も、とても子どもたちを託すような信頼に足りません。そして頼みの綱のセネガル人の女性も、母国に帰ってしまいます。

もがけばもがくほど、指の間から砂がこぼれ落ちるように、予期せぬ不運にみまわれるウスバル。しかし映画のラスト近くで死期を目前にした彼の表情は、穏やかな美しさに満ちているように思いました。

彼を天国へと迎えにきたかのように登場する、一度も会ったことのない亡き父親との語らい。白い雪の林の風景の中に流れる、ラヴェルのピアノ協奏曲の美しい調べが静かに心にしみわたりました。

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映画」カテゴリの記事

コメント

今晩は。

あ、この作品、私も劇場で予告編見ました。
かなり重たい雰囲気の作品なのかな~・・って印象でしたが、記事を読ませていただくと、とても良さそうなドラマですね。
ハビエルの演技も見ごたえありそうです。

残される子供達の事が、心配で気になりますね・・・。clover

公式サイトを見てたら、この映画に黒澤明の「生きる」のオマージュシーンが1シーンあるって書いてありました。気になる!!セレンディピティさん、どこだかわかりますか?

公園のブランコのシーンとかかしら?movie


投稿: ごみつ | 2011年6月26日 (日) 23時28分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは♪
この作品、重そう~と思いながらも気になっていました。
たしかに不法移民など、底辺の暮らしが描かれているし
かなり重いのですが、ぐいぐい引き込まれる作品でした。
(こういう映画にありがちな、バイオレンスや性的なシーンが
ほとんどなかったことも、私としてはよかった。)
そしてまた、ハビエルがいいんですよ~。
彼は色男よりも、人間ドラマの方が似合いますね。
この作品を見て、ペネロペが惚れた理由がわかりました。(笑)

映画はウスバルが亡くなる前に終わってしまうので
その後の子どもたちのことはわからないのですが
お父さんから大切なものをもらっているので
力強く生きていける…と信じたいです。

警察がセネガル人を捕まえる時に木刀?みたいなものを使っていたので
そこかな~?と思ったのですが、「生きる」って現代劇なんですね。
ちょっと調べましたら、「主人公が居酒屋で小説家に告白する場面」
だそうですが、それがこの映画ではどの場面に相当していたのか…?
「生きる」を見て、確かめてみたくなりました。(笑)

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2011年6月27日 (月) 10時53分

この作品もチェックしていました。
新潟ではまだ上映されていません。
先日も書きましたが、今面白そうな映画たくさんありますよね。
今度の週末は2、3本まとめて観てしまおうかと思っているところです。
127時間も観れたらいいなぁ。

投稿: olive | 2011年6月27日 (月) 15時13分

☆ oliveさま ☆
BIUTIFULは、かなり重いし暗いので
好き嫌いが分かれる作品かもしれません。
私は結構気に入ったのですが、それは
ハビエル・バルデムの魅力によるところが大きいかな…。
週末は何をご覧になるのでしょうか?
楽しんでいらしてくださいね。

投稿: ☆ oliveさま ☆ | 2011年6月28日 (火) 00時53分

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