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「プレシャス」

DVDで、映画「プレシャス」(原題:Precious: Based on the Novel Push by Sapphire)を見ました。公開された時から気になっていた作品ですが、ニューヨークのハーレムを舞台に、肉体的、精神的、性的虐待を受けて育った16歳の少女の話と聞いて、私には見ることにとても耐えられないのでは、と躊躇していました。

たしかに主人公プレシャスを取り巻く状況は悲惨ではあるのですが、作品はセンセーショナルな表現は一切なく、ドキュメンタリーフィルムのように淡々と撮られていたので、余計な感情に左右されず、作品に向き合うことができました。作り手の良心が感じられ、真摯な思いが伝わってきました。

プレシャスが数学の先生に恋して授業を妨害する生徒をぶっとばしたり、空腹に耐えかねてフライドチキンを食い逃げしたり… くすりとさせる場面もところどころにあって、救われました。

     Precious

プレシャスは2度の妊娠で高校を退学になりますが、そうした彼女を見捨てることなく、さまざまな形でバックアップする体制が整っている、アメリカの教育や福祉のあり方に心を捉えられました。

プレシャスは代替学校に通うチャンスを得て、レイン先生に出会います。ABCからねばり強く教える先生の指導で、日記を書き始めるくプレシャス。それは自分を見つめ、表現することであり、最終的には自分を愛し、認めることにつながりました。

母親とのトラブルで家にいられなくなり、急場しのぎでレイン先生のもとに身を寄せるプレシャスは、人の心の温かさに初めて触れます。ちょうどクリスマスの時期で、ツリーを見たプレシャスが「TVで見たクリスマスと同じだ…」とつぶやいた時には、彼女のこれまでの過酷な人生を思い、胸がつぶれました。

16年間、誰にも相談できずに、たったひとりで虐待の苦しみに耐えてきたプレシャス。その強靭な精神力に驚かされますが、ソーシャルワーカーの粘り強いアプローチによって、母親との面談が成立し、ようやく虐待の実体が明らかになります。

その告白は衝撃的なものではありましたが、虐待の理由がわかったことがプレシャスを呪縛から解き放ち、「働きながら学び、子どもを育てる」という生きる力を与えたように思いました。最後にプレシャスが二人の子どもを連れて、胸を張って歩いていく姿には、希望の光が感じられました。

ソーシャルワーカーの女優さんは誰かな?と何気なくエンドロールを見ていたら、なんと世界の歌姫マライヤ・キャリーでした。ほとんど素のままの出演で、全く気づかなかったのでびっくり! また、アメリカで絶大な人気を誇り、もっとも影響力のある黒人女性であるオプラ・ウィンフリーが作品の総指揮を務めています。

ハーレムでは、プレシャスのようなケースは決してめずらしくないということですが、日本でも最近は虐待事件が後を絶たず、とても他人事とは思えません。社会が、学校が、地域が、子どもたちの心を叫びを捉え、助けるために何ができるか、考えさせられました。

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コメント

ご覧になったのですね(^o^)。こんな苦境の中で、いつも前向きでいられるプレシャスを見習わなくては…

投稿: マイキー | 2011年6月14日 (火) 16時26分

今晩は!

あ~、これ、いつもDVD借りようかな・・って思いつつまだなのです。
アカデミー賞授賞式の時、この作品を知って、必ず見たいと思ってる作品です。

ただ確かにちょっと辛そうなんですよね・・。私の個人的な感覚なんですが、こういう日常の中の暴力(DVとか)の方が、戦場を舞台にしたものとかよりも、私は精神的にず~っと辛いんですよね・・。

記事を読ませていただくと、やっぱりとても良い作品みたいですね。私も早く見たいな~って思います。good

投稿: ごみつ | 2011年6月15日 (水) 02時00分

考えさせられるテーマですね。
仰るように最近、日本でも幼児虐待が多いと聞きます・・・
軽く語れるテーマではありません。
日本も大きな転換期に来ているように思わされるニュースが
最近、多いような気がしています。

投稿: イザワ | 2011年6月15日 (水) 03時21分

☆ マイキーさま ☆
マイキーさんのご紹介記事を読んで、見る勇気が出ました。
ありがとうございました。

プレシャスは、犯罪組織やドラッグに関わっていなかったことが
救いだった、とも思いました。まっすぐな心を持っていれば、
いつかはきっと苦難を乗り越えられる… そう信じたいです。

投稿: ☆ マイキーさま ☆ | 2011年6月15日 (水) 17時13分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは☆
私もこの作品、見たいと思いながら
なかなか見る勇気が持てずにいました。
私は特にエンターテイメントとして描かれるバイオレンスが
苦手ですが、(北野武、タランティーノなど…)
この作品は暴力シーンも抑えてあり
監督の良識を感じました。
ドキュメンタリー風で見応えのある作品でした。

最近の日本のニュースで聞く虐待事件の方が
私にはずっと残酷に感じられて辛いです…。

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2011年6月15日 (水) 17時26分

☆ イザワさま ☆
核家族化など、社会的な要因もあるのかもしれませんが
最近は特に心の痛む犯罪が多いですね…。
一言では語れない問題だと思いますが、
経済的な豊かさや便利な生活と引き換えに
失われた何かがあるのかもしれませんね。

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2011年6月15日 (水) 17時34分

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