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「日の名残り」

DVDで、アンソニー・ホプキンズ主演の映画、「日の名残り」(原題:The Remains of the Day)を見ました。原作は、「わたしを離さないで」と同じく、カズオ・イシグロ氏。アンソニー・ホプキンズの名演と相まって、重厚で上質な、イギリスらしい味わいに満ちた作品でした。

The_remains_of_the_day_2

舞台は第二次世界大戦前、緑豊かな森にある、イギリスの名門貴族ダーリントン卿のお屋敷です。ここは、イギリス首相をはじめ、国内外の実力者たちがお忍びで足を運び、国の命運をかけた重要な案件について議論を重ねる、いわば民間外交の場となっていました。

ベテラン執事のスティーブン(アンソニー・ホプキンズ)は常に職務を忘れず、ゆるぎない忠誠心をもって、主人のダーリントン卿に仕えてきました。自分にも、部下に対しても厳しく、決して妥協を許さないその姿勢は、主人の絶大な信頼を得ていますが、周りの人には少々気詰まりなほど。

職務に忠実なスティーブンは、主人や客人に意見を求められた時、たとえ愚かだと思われようとも、自分の考えを口にし、他人に意見するようなことを決してしません。しかし彼は、ひとりの時間を読書に費やし、常に自分を鍛錬している勉強家なのです。

彼は女官のミス・ケントン(エマ・トンプソン)の仕事ぶりを認め、二人はいつしか恋愛に似た信頼関係で結ばれるようになります。しかし、ケントンがひそやかな愛情を示しても、スティーブンはそれに動じ、応えることはありません。あきらめたケントンは、結局他の男性と結婚して、屋敷を出ていってしまいます…。

大きな事件が起こるわけでも、これといった結末があるわけでもないのですが、不思議と引き込まれる作品でした。スティーブンの誇り高い生き方、お互いに惹かれあいながらも欲望に走ることのない二人に、今の時代にはない精神の尊さが感じられたからかもしれません。

ドイツに友好的な立場をとっていたダーリントン卿は、ナチスを支持したとされて、戦後は裁判にかけられ、その心労がもとで亡くなってしまいます。

屋敷の新しい持ち主となったのが、かつてダーリントン卿を批判して敵対関係にあった、アメリカの富豪政治家ルイスという皮肉。でもスティーブンは、ルイスに対してもダーリントン卿の時と同様に、忠実な執事であり続けるのだろうな…と思います。

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コメント

今晩は!

あ、「日の名残り」、ご覧になったんですね!
なかなか良かったでしょう~?shine

この映画は私と、カズオ・イシグロとの最初の出会いでもあります。
原作者が日系と知って、どれだけ私が驚き、かつ彼に興味を抱いたかわかってもらえたと思います。w(゚o゚)w 
原作も素晴らしかったですよ。

アンソニー・ホプキンスの作品としても、私はこれが彼のベストなんじゃないか・・と思ってます。
セレンディピティさんの記事を読んで、久しぶりでまた見たくなっています。book

この映画のホプキンスに匹敵する執事は、私が知る限りでは「バットマン」シリーズのアルフレッドくらいだわ~。(笑)

投稿: ごみつ | 2011年6月25日 (土) 00時05分

今の時代、実直という言葉はまじめというより
融通が効かない・・・というような感じで捉えられがちですが、
日本人が忘れかけている事かもしれません。
昔のお父さんたちは、こういった実直さで、ある意味日本を
支えてこられたのだと思います。
そういったことを言っても、自分は子供たちの目からみれば、
なんとも、軟派な父親に映っているに違いありませんが・・・^^;^^;

投稿: イザワ | 2011年6月25日 (土) 03時30分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは♪

「日の名残り」とってもよかったです!
たしかにこれを見ると、カズオ・イシグロって何者?!と思いますね。
イギリス人としか思えないメンタリティ
それにどうしてこんなにイギリス貴族社会のことを
よく知っているの?!
原作は今、図書館に予約を入れているので
こちらも読むのがとても楽しみです。

アンソニー・ホプキンズは、レクター教授の印象が強烈でしたが、
これからはこの執事役が頭に浮かびそうです。
すばらしい演技でしたね。
「お嬢様の目は節穴ですか?」の執事とは大違いです。(笑)

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2011年6月25日 (土) 17時35分

☆ イザワさま ☆
今はアメリカ的な教育…というか、自己主張することが
いいことである、と捉えられているところがありますが
かつては日本にも、耐え忍び、自分を抑制する美学が
生きていたように思います。
そういう点では、昔の日本とイギリスは
似ているところがあったのかもしれませんね。
久しぶりに、忘れかけていた
清廉な美に触れたように思いました。

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2011年6月25日 (土) 17時46分

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