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有川浩 「県庁おもてなし課」

有川浩(ありかわ・ひろ)さんのベストセラー、「県庁おもてなし課」を読みました。高知県庁に実在する「観光部おもてなし課」を舞台に、25歳の若き職員、掛水君が県の観光発展をめざして奮闘する物語。高知出身という有川さんの郷土愛にあふれた観光小説です。

もとは地方を元気にするために書かれ、いくつかの地方紙で連載された新聞小説だったそうですが、今回の単行本化にあたって、有川さんはこの本の印税をすべて東日本大震災の被災地に寄付すると発表しました。その心意気に拍手を送り、購入しました。

Omotenasi

有川作品には、悪い人が出てくることも、ネガティブな展開になることもないような気がします。さらりと読めて、最後にはハッピーで前向きな気持ちになる。昔の少女漫画やホームドラマに似た安心感が、刺激に満ちた今の時代に、ほっとする心地よさを与えてくれるのかな、と思います。

物語は、活動が一向に進まない県庁・おもてなし課の掛水と、それに業を煮やして叱咤激励する高知出身の人気作家、吉門喬介のやり取りから始まります。作品の中では何度となくお役所批判も登場しますが、私にはそれもお役所に対する応援メッセージのように感じられました。

吉門氏の厳しい一言には、故郷への限りない愛情が伝わってきます。そしてその忠告を素直に受け、仕事で応える掛水くんの、若さゆえの柔軟性、謙虚さ、まっすぐな情熱はとてもさわやかで、好感が持てました。

かつて県庁に勤め、今は地元で観光業を営む清遠氏が県に提案したのは、高知まるごとレジャーランド化構想。既にある観光スポットを有機的につないでブランドイメージを統一させるという計画は、ただ「見せ方を変えるだけ」という妙。地方の観光活性化を握る鍵は、実は予算などではなくアイデアなのかもしれません。

「観光地ではトイレが重要」「お仕着せの懐石料理よりもその土地の名物が食べたい」などは女性にはよくわかる意見でしたし、その土地の人にとってはなんでもない当たり前のことが、外から来た人には新鮮に見える、という意見にも納得でした。

宮崎県や、北海道の旭山動物園など、近年観光地として成功してきたところは、まさにプレゼンテーションとおもてなしマインドの勝利なのだろうなと思います。どの地域も、魅力的な観光地となる可能性を秘めている… そんな気がしました。

こうして書くと、なんだかビジネス書みたいですが、家族愛あり、さわやかな恋愛ありの物語です。全体に貫かれた高知弁の会話には、ほっこりと温かい気持ちになりました。

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コメント

毎年、市町村の要覧に載せる写真を撮らせて
頂いていますが、どこの市町村も観光には
力を入れています。
たぶん、その力の入れようによって、成果に
違いがでてくるのかもしれませんが、でも
そんな単純なことではないかとも思います。

軽く読めるというのは最近のヒット本の特徴の
一つだと思いますが、この本もヒットするかも
しれませんね^^

投稿: イザワ | 2011年6月16日 (木) 00時41分

今晩は。

有川浩さんの小説はこれで確か3冊目?お気に入りの作家さんになったみたいですね。bookshine

ストーリーを読ませていただくと、気楽に、気持ち良く楽しめる内容みたいですね~。それにテーマも面白いですね。地方自治体の活性化は、どこでも大きなテーマみたいですし、もちろんお役所勤めでない人にとっても、ビジネス上の参考になったり、元気を与えてくれそうです。

私、ポジティブシンキングな内容の本であれ、映画であれ、人生にはとっても大切だと思う。「泣きたければこの1冊」みたいなスタンスより、ず~っと素敵ですよ。notes

投稿: ごみつ | 2011年6月16日 (木) 01時23分

セレンディピティさんのご紹介の仕方が、これまたいつも自然で「読んでみようかな?」って気にさせてくれます(笑)読んでみたいです。
ドイツに越したばかりの時、度胸試しと言葉試しに、日本人観光客を相手に観光ガイドをした事があります。地元主催のセミナーに参加して歴史などを学んだのですが、ガイドをしていくうちに自分でも気づきました。観光客をおもてなしするには、至る所に休める場所=カフェや立ち食いスタンド、ベンチ、そしてトイレ。欲を言えば天候でしょうか。ドイツは悪天候が当たり前でしたから…。

一緒のコメントですみません。プレシャス、とうとうご覧になられたのですね!私も始めは観ようか迷いましたが、やはり勇気を出して政界でした。映画の中でモニーク演じる母親が、「ベネフィット(福祉)を利用して生きていくんだよ」と、プレシャスに言う場面がありますよね。あの言葉こそ、アメリカや欧州諸国が抱えている福祉のジレンマだと思いました。ドイツではChild benefitが、子供が就労するまで、もしくは27歳まで毎月一人頭25,000円ほど出ます。『子供を10人生んで、ベンツを買おう』と、あるコメディアンが言った事がありますが、的を得ていて笑えなかった、という事がありました(苦笑)
プレシャス、とてもいい映画でした。マライア・キャリー、ほっぺがプクっとして可愛かったですね。

投稿: schatzi | 2011年6月16日 (木) 05時15分

☆ イザワさま ☆
地方にとって、やはり観光は重要な産業なのでしょうね。
人が集まれば、それだけ活気も生まれますし。

本にもありましたが、交通が不便なことは決してマイナスではなく
その場所に魅力があれば、人は訪れるし、
むしろそのことに特別感が生まれる…という意見に納得しました。
それから、どの地域にも宝はあるのに
地元の人は、そのことに気づいていない場合もあるのかな?
とも思いました。

この本は、発売2ヶ月で20万部近く売り上げたヒット作なんですよ。
有川浩さんの作品は、軽く読めて、明るい気持ちになる…というのが
人気の秘密かもしれませんね。

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2011年6月16日 (木) 11時40分

☆ ごみつさま ☆
あ、3冊目です。覚えていてくださったのですね。
有川さんの作品、漫画やドラマを見るような感覚で、
気軽にさくっと読めて、読んだあとにさわやかで明るい気持ちが
残るのが魅力かなと思います。
今の時代の空気を、うまくつかんでいるのでしょうね。
地方活性化、観光というテーマもおもしろかったです。

以前にある作家の方が「これで、泣かせますよ!」みたいなことを
おっしゃっていて、ちょっと嫌な気持ちになったことがあります。
そんなのにひっかかるもんか、と思ってしまいます。(笑)

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2011年6月16日 (木) 12時05分

☆ schatziさま ☆
日本人観光客を相手にガイド、というとなかなかたいへんそうですね。
中にはわがままな方もいるでしょうし…。
でも、ドイツの魅力を伝えたい、好きになってもらいたい
という気持ちが、歴史や文化を学ぶきっかけになったり
おもてなしの心につながったり… いい経験をされましたね。

プレシャス、いい作品でしたね。
作り手の真摯な気持ちが伝わってきました。
勇気を出して見てよかったです。
アメリカの教育や福祉のシステムは、人生をやり直す機会を
与えてくれる、という点では優れていると思いますが
ほんとうに困っている人のもとに届かなかったり
それを悪用しようという人が出てくるのは困りますね。
日本でも最近では、働かないで生活保護を受けながら
遊んだり贅沢をしたり…という人の話をニュースで聞くことがあります。
難しい問題ですね。

マライヤ・キャリー、びっくりしました!
ナチュラルな表情が、かわいかったですね。

投稿: ☆ schatziさま ☆ | 2011年6月16日 (木) 12時34分

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