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村上春樹 「ねむり」

村上春樹さんの新刊、「ねむり」を読みました。1989年に書かれた短編「眠り」を手直しされたもので、オリジナルは当時「TVピープル」という単行本に収められました。私はその頃に一度読んでいるはずですが、なぜか記憶になくsweat01 おかげで、新鮮な気持ちで読み直すことができました。

Nemuri

濃紺&シルバーのスタイリッシュなデザイン。これは、「眠り」がドイツで出版された時の装丁だそうです。カット・メンシック氏のイラストが、主人公の内面に広がる恐怖を視覚的に表現していてすばらしく、イラストと文章の相乗効果で、作品の不思議な世界に渦のように引き込まれました。

この短編小説は、眠れなくなって17日目になる、ある女性の一人称によって語られます。眠れないといっても一般的な不眠症と違い、疲労も体の変調もなく、意識はいつも以上にクリアに保たれている。ただ単に眠れない状態が延々と続くだけ…。

いつもどおりに家庭の仕事をこなし、「アンナ・カレーニア」を読み続ける。眠れなくても生活に支障はないものの、体や心を休ませずに活動し続けることで、やがて「死」に対するイメージが揺らぎ始めます。

「死」とは、永遠の眠りであり、休息だと思っていたけれど、ほんとうは今の状態のように、暗闇の中で永遠に覚醒し続けることなのではないか、という思いにとらわれる恐怖。しかも、その答えは、その時になってみないとわからないのです…。

…久しぶりに、村上ワールドに酔いしれました。20年前に読んだ時は、おそらく若すぎてピンとこなかったのだと思いますが、今読むと心にぐいぐいと迫るものがありました。それは、主人公と自分の立場が似ていて、多くの部分で共感を得た、ということもあるかもしれません。

あとがきによると、村上氏は「ノルウェイの森」「ダンス・ダンス・ダンス」という2つの長編が成功を収めた後、(いろいろな理由で)しばらく小説が書けない状態が続いていて、ローマで暮らしながら翻訳の仕事をされていたそうです。

その後、春が来て、ようやく心の氷が解け始めた時に書かれたのが、この「眠り」という作品だそうです。そうしたいきさつをうかがって読むと、当時の作者の心の一端に触れることができたような気がしました。

          sleepy          sleepy          sleepy

先日のシリコン製のフラワー型に添付されていたレシピを見て、「シフォン風アーモンドケーキ」を焼きました。

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軽くてふわふわした食感のシフォンケーキですが、アーモンドパウダーが入っているので、しっとりとした仕上がりになりました。油は、オリーブオイルを使っています。お菓子にオリーブ油?と思いますが、クセがなくよく合いました。

上にはたっぷり粉砂糖をふるって。素朴な風合いでおいしくいただきました。

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コメント

今晩は。

村上春樹氏は、ホント~にビッグネームになりましたね。
イシグロカズオもインタビューで「一番気になる作家」って語っていたし、とにかくアニメ以外でこれほど外国人に認知度が高くて人気のある日本人は彼だけです。

実は私、かなり前に「TVピープル」を読んだきりなんですよね。
この本を読んで、この作家は私の感性とはまったく別の人だ・・と思ってしまって。「ねむり」って「TVピープル」の中に入ってたんでしたっけ。全然覚えてないや。coldsweats01
「ノルウェーの森」の時に、あの緑と赤の本を持ってるのがお洒落・・みたいなイメージが先行していた事なんかも、ちょっと拒絶感があったんですよね。

でも、今、読み返してみればまた違った読み方が出来るかもしれません。近いうちに何か読んでみたいな~って思っています。

あ、今回はハート形の「シフォンケーキ」なんですね!可愛いし美味しそう!フラワー型、大活躍中ですね。cake


投稿: ごみつ | 2011年6月 9日 (木) 01時09分

テレビで昔、見たのですが、本当に眠れない人がいるんですよね!
この小説の主人公と同じでやはり疲労感もなにもなく、
ただただ、眠れない・・・
眠りは疲労回復のため・・・という考え方もありますが、
確か、キリンだったか・・・1日に15分程度しか寝ないそうです。
不思議ですね。
小説家は、自分のことに当てはまるような事を書いている時の
迫力は凄いものがあるでしょうね。

投稿: イザワ | 2011年6月 9日 (木) 02時49分

村上春樹は、日本に居たときはまったく無関心だったのですが、ドイツにいたとき、友達が彼の大ファンで、『日本人なのに海辺のカフカを読んだことがないの?』って白い目で見られ(笑)しょうがなく彼女の本を借りて読んだのが始まりでした。日本に帰ったときにホンモノ(日本語)を買って返りましたが、彼はほんと、海外で人気モノですね!アメリカではよく解かりませんが(住んでいるのに曖昧ですみません・苦笑)ドイツではかなりの地位を確立していましたよ。女性は彼の世界の虜でした。

あと2日で子供は10週間の夏休みに突入です。私も読書にどっぷりつかるつもりです。村上春樹かぁ、私も読んでみます。

About a Boy、私はあの映画ではレイチェル・ワイズの上品な美しさと、あの男の子の生意気さしか記憶がないんですよね(苦笑)ヒューの映画では、あの映画だけは私の中でイマイチなのが原因かと。

近々The Great Gatsbyのリメイクが登場するらしいので、その前におさらいで若かりしロバート・レッドフォードのオリジナルを観ました。昔の映画は『間』が最高ですね。原作を読んでいないので、これもこの夏の宿題にする予定です。

投稿: schatzi | 2011年6月 9日 (木) 03時59分

☆ ごみつさま ☆
小説って感性のものですから、人気があるなしにかかわらず、
合う合わないという相性はありますね。
私もどうも合わない…という作家さんいますし。

村上春樹さんの小説は、あまり泥くささがないですよね。
私は一時期取り付かれたように読んでいたのですが
優しくて、正しいけれど、手ごたえの感じられない主人公像に
嫌気がさして、以来ぴたっと読めなくなった時期がありました。
村上氏に対しては、以前はドライなイメージを持っていましたが
その後の作品や言動などから、実は熱い人なのかな?と思ったり…
とにかく不思議な魅力のある作家さんです。

「ねむり」は、以前に読んだ時の記憶は残っていなかったのですが
今回読んだ時には、ぐぐっと来るものがありました。
久々に村上ワールドのおもしろさを思い出させてくれた作品です。
読んだ時の年齢とか、自分を取り巻く状況とかによって
捉え方も変わってくるものかもしれませんね。

ハート型のシフォン、ふわふわしっとりでおいしかったです☆

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2011年6月 9日 (木) 12時25分

☆ イザワさま ☆
眠りも深さや長さなど、結構個人差がありますね。
ナポレオンみたいに眠らなくてもだいじょうぶ、という人
ほんとうにいるんですね。そして、キリンは15分ですか!
おもしろいですね。
私は子どもの頃から、魚が目を閉じずに、しかも泳ぎながら眠れる
というのが不思議でしかたがありませんでした。
寝ている時は動きが鈍いそうですが…。

ブランクを乗り越えて生み出された作品、とうかがったせいか
冬眠から目覚めた後のあふれるエネルギーが感じられる気がしました。

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2011年6月 9日 (木) 12時43分

☆ schatziさま ☆
schatziさんのドイツのお友だちも村上春樹さんのファンでしたか。
「海辺のカフカ」も不思議な世界をもった作品でしたね…。
ことばや文化を越えて、同じ世界観を共有できるってすごいですね。
なんだか不思議な感覚です。
アメリカでは、どうなのでしょうね?
私は、ファンという人に会ったことがありませんでしたが…。

About a Boyのレイチェル・ワイズ、きれいでしたね!
ヒューへの強烈な一言が、的確で気持ちよかったです。
私はあの役、ヒューらしい…と思いましたが
schatziさんはダメでしたか。

The Great Gatsbyの再映画化については、私も聞きました♪
しかも、ディカプリオが主演で、キャリー・マリガンも出るというので
とっても楽しみにしています。
schatziさんは早速レッドフォード版をチェックされたのですね。
私は先に原作の方を読もうと思っています。
これも村上春樹さんの訳が話題になっていましたが
私はあえて、他の方の訳(いくつか出ています)で読んでみようか
と迷っているところです。

長い夏休み、楽しくおすごしくださいね☆

投稿: ☆ schatziさま ☆ | 2011年6月 9日 (木) 13時14分

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