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壺井栄 「二十四の瞳」

永遠に読み継がれる名作、壺井栄さんの「二十四の瞳」を再読しました。

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(角川文庫の夏の文庫キャンペーン。てぬぐい柄の表紙は、代官山のてぬぐい屋さん「かまわぬ」とのコラボレーションです。)

この本を読んだのは、小学生の頃。当時、小説の内容をどれだけ理解していたかわかりませんが、少なくともいえるのは、当時は生徒の立場で読んでいたということです。生徒たちのひとりとして、大石先生のことばに耳を傾けていました。

今回は、自分が大石先生の立場で読んでいることに気づきました。大石先生が教師として、母として、子どもたちを育てるという業(わざ)の中で、子どもたちの未来を思い、幸せを願い、(世の中の)平和を望み、無事を祈る気持ちが、同じ女性としてわかりすぎるほどに理解できました。

大石先生と子どもたちがともにすごした時間は、人生の長さではほんの一時ですが、それでもこれほど濃密な関係を築くことができたのは、教室という場所を越えて、お互いの存在が、ことばが、心の中で生き続けていたからだろうと思います。

貧しさと、戦争という抗えない時代の渦の中で、子どもたちはそれぞれの運命に押し出されていきます。学ぶことが好きでも奉公に出なければならないコトエ、歌の道に進みたくとも親から反対されてしまうマスノ、旧家に生まれながら夜逃げ同然に島から出て行く富士子、例外なく戦争に駆り出される男の子たち…。

大石先生がその気持ちに寄り添い、ともに涙を流したことは、何より彼らを励まし、生きる喜びを与えたことと思います。どの子どもにも等しく愛を注ぐ大石先生に、教師としてのあるべき姿勢を見つけました。

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コメント

こんにちは。
まさにこの時期、じっくり読み返したい「二十四の瞳」ですね。
何度も映画化されたりテレビドラマになったりの
名作ですが、私も小学生の時以来、本で読んでないかも…
あらためて今の時代だからこそ読み終えた後の思いも
あの時とは違うかも。
遠藤周作も高校時代大好きな作家さんでした。
当時の先生の影響で大江健三郎氏や遠藤周作氏はほぼ
読破した事を懐かしく思い出しました。
私の中での勝手なイメージですが、セレンディピティさんって
先生のイメージに雰囲気がピッタリです♪

投稿: ゆず | 2011年8月15日 (月) 12時00分

☆ ゆずさま ☆
こんばんは。
偶然ですが、今日は終戦記念日でしたね。
「二十四の瞳」今改めて読むと、小学生には少し難しい気がするので
どれだけ理解できていたのか?と思いますが
それでもところどころ印象的なシーンは覚えていました。
大人になると、自分自身も経験を重ね、成長しているし
自分を取り巻く状況も変わっているので、
違った視点で読むことができて、おもしろいなと思いました。

私は学生時代はずっと家庭教師をしていましたが
実は子どもは苦手で、それに人間ができていないので
学校の先生はとても務まらないと自覚してます。sweat01
子ども時代に大石先生のような先生に出会えた人は幸せですね。

投稿: ☆ ゆずさま ☆ | 2011年8月16日 (火) 01時06分

子供の頃、読んだ小説を読み返すと、今の立場で、
その物語に出てくる人物の気持ちで読んでいる・・・
なるほどと思いました。
そう思うと読み返したくなる小説がいくつかありますね^^

今、電子書籍などを利用すると、著作権を過ぎた小説が
無料で読めるようです。
私は、ipadで、読もうかとも考えています^^

投稿: イザワ | 2011年8月16日 (火) 03時17分

☆ イザワさま ☆
同じ小説でも、どの立場に自分を投影するかによって
見方が変わってくるものだな…と思いました。
それと大人になると、文章に書かれていない部分を
自分の経験で補って読むことができるのだな、とも。

電子書籍は私もちょっと興味があります。
(PCの青空文庫はいくつか読んだことがあります。)
ソフトが充実してきたら、考えてみようかな。

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2011年8月16日 (火) 07時05分

戦場を描かずに、戦争の悲惨さを描いてみせた名作ですね。敗戦の日(終戦ではなく)にこそ読み返したい作品でもあると思います。私は戦争を否定することで平和がかなうとは思っていませんが、戦争の生みだす悲惨な面は直視するべきだと考えています。少なくても激情や民族感情、行き過ぎた正義感などで、安易にするべきではないと思っている好戦的平和主義者の私でも、この本は必読だと断言したいですね。

投稿: ヌマンタ | 2011年8月16日 (火) 15時38分

☆ ヌマンタさま ☆
この作品、戦場どころか空襲のシーンもないのですよね。
これだけ控えめな表現でありながら、軍国教育の恐ろしさや
戦争が生み出す不幸が、痛いほどに伝わってくるまさに名作ですね。
女性として、母として、感じるものがありました。
再び読むことができてよかったです。

TB、ありがとうございました。
私の方からもTBさせていただきました☆

投稿: ☆ ヌマンタさま ☆ | 2011年8月17日 (水) 00時29分

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目頭が熱くなることを避けられない。 表題の作品を読んだことはなくても、映画やTVドラマなどで観たことがないなんて人は稀だろう。私は映像の記憶が鮮明すぎて、原作を読んだことがあるのかどうか記憶にない。 だから今回読んでみて、これが初読であることに気がついた。事前にあらすじが分っていながら、それでいて心が感動に揺れるのを抑え切れなかった。 私は平和を守るためには戦うことも必要だと確信している好戦的平和主義者だ。決して戦争を頭ごなしに否定するようなことはしない。戦争を必要悪だと卑下しているのではない... [続きを読む]

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