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「未来を生きる君たちへ」

デンマークを代表するスサンネ・ビア監督の映画、「未来を生きる君たちへ」(原題:Hævnen 英題:In a Better World)を見ました。今年のアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞で、最優秀外国語映画賞を受賞した作品です。

デンマーク映画はあまりなじみがないな… と思ったら、以前スサンネ・ビア監督の「ある愛の風景」という作品を見ていることがわかって(しかもこの時の主演俳優さんが今回出ている)急に親しみがわいてきました。期待通りにすばらしい作品でした。

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原題のHævnenは復讐という意味だそうですが、私は復讐と表裏をなす「赦し」もまた、この作品のもうひとつのテーマだと思いました。舞台はデンマークのある港町。物語は、ロンドンからの転校生クリスチャンとスウェーデン人のエリアス、2人の少年の家族を軸に進んでいきます。

転校の多かったクリスチャンは、体験からいじめっ子は力でねじ伏せなければわからないと信じていて、そうすることで今まで自分を守ってきました。いじめられっ子のエリアスのことも、相手をなぐり、ナイフで脅すことによって助けます。

一方、アフリカで医療奉仕をしているエリアスの父アントンは非暴力主義者。やり返すこと=復讐からは何も生まれないと信じ、子どもたちもそう育ててきました。

アントンは町で気の荒い男にいきなり殴られますが、殴り返そうとしません。「あいつは殴るしか能がない愚か者だ。私はちっとも痛くなんかない。私の方がずっと強いんだ。」と子どもたちに示すアントンですが、クリスチャンは納得できず、「相手がそのことを理解しなければ意味がない」と答えます。

In_a_better_world_2_2

私だったら… もしも自分や家族がひどく傷つけられたら、心の中では決して赦すことはできないと思う。かといって、復讐する自分の姿も想像できない。辛くてもなるべく考えないよう、忘れようと努力するような気がします。苦しみに耐えるしかないから。アントンのいうように、復讐からは何も生まれないと思うから。

非暴力主義者のアントンも、映画では完璧な人間とは描かれていません。アフリカでは、医師の良心に従って極悪人ビッグマンの治療をするものの、その後の暴言にがまんできずに、丸腰のままキャンプから追い出してしまいます。そうすれば、ビッグマンは民衆に叩き殺されると知りながら…。

アントンを殴った男を懲らしめるため、クリスチャンは男を探し出し、車を爆破させる計画を立てます。それは思いがけない事態を招くことになりますが、赦しが時として復讐心を変える力を持つこと、その可能性を示してくれたラストには、一筋の希望の光が感じられました。

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映画」カテゴリの記事

コメント

今晩は!cherry

この作品、見にいかれたのですね。
私、予告編を見て、かなり厳しそうな作品だな・・と感じましたが、とても良いドラマだった様ですね。

私達は、普段の生活の中では、滅多に大きな残酷な暴力に出会う事がないから、なかなか想像も出来ない事ですよね。
大きな悲しみと、絶望の淵に立たされた時、自分がどんな人間になるのか・・。

暴力が暴力をうむ事は頭で理解でみても、人間はそこまで理性的な存在になれるのか・・。

とても難しい、人類にとって永遠のテーマですよね。libra

投稿: ごみつ | 2011年9月14日 (水) 00時01分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは♪
この作品、シリアスなテーマではあるけれど
家族の問題として描かれていたせいか、比較的すんなりと
映画の世界の中に入ることができました。
時々どきっとする場面もありましたが、
見た後はとても温かい気持ちになりましたよ。

世界中がアントンみたいな人ばかりだったら
争いごとは起きないと思いますが、時には自分を守るために
暴力が必要になることもあるでしょうし
なかなか一筋縄ではいかない難しい問題ですね…。
いろいろ考えさせられました。

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2011年9月14日 (水) 14時04分

おひさしぶりです!ずーっとケイタイからアクセスしていて、セレンディピティさんのブログはもちろんいつも拝見していたのですが、コメントを入れようと思いながら、次の日になると、既に新しい投稿があって、コメント入力のタイミングがつかめませんでした。最近は落ち着いたので、(テニス観戦も終わりましたし)今日はPCから。

この映画、トレーラーを見た限り、見覚えある小さな港町…と思い、ググッてみました。ウチの夫の出身の島にある、小さな漁村が舞台でした。Faabogっていいますが、ホントに小さな小さな漁村です。

デンマーク人って、自分の生まれ故郷に骨をうずめるか、国外に移住するかのどちらかにはっきり分かれます。他の欧州人にもれず、旅行好きな国民ですが、絶対にデンマークが一番!って思っている人も大半です。その度が越して、ドイツ国境付近では極右の大会なども開かれる程ですが、少数民族特有なのか、心にフラストレーションを溜めている人が本当に多いです。福祉大国ですから、働かなくてもある程度の生活水準が保てますが、税金は多国と比べ物にならないほど高い。難民も多い。自分で行動は起こさないけど、不満は沢山あるって人がいっぱい居ます。

映画のトレーラーからも、『北欧人の、えも言えぬフラストレーション』が見てとれました。

この監督が撮った、『Brother』という映画、ご存知ですか?ハリウッドでもリメイクされてましたが(リメイク版の方がすこし明るかったですが)、あの暗さ(苦笑)が北欧っぽくて、ウチのオットはこの手の社会派映画は苦手です。彼は、あの国の『うけ身体勢』が嫌で国を出た口なので。

映画の内容から離れたコメントになってしまいました(汗)

投稿: schatzi | 2011年9月16日 (金) 02時45分

おはようございます。
難しそうなテーマですが
とても見応えがありそうです。
正当防衛が成り立つように暴力行為が
完全に悪かと言われると
そうではないですよね。
だからと言って推進して受け入れられるものでも無いですし。
特に今、子供の苛め問題も酷い世の中ですからね
やった、やられた、やりかえした
何が正しくて何が正しくないか見失う人も多いと思います。
この映画を見て沢山の方が見つめ直してくれると良いですね。
アタシも見てみます!

投稿: ミイサ | 2011年9月16日 (金) 07時31分

☆ schatziさま ☆
こちらこそご無沙汰しています♪ コメントありがとうございました。
テニスシーズンの間は、schatziさんお忙しそうでしたね。
US Openが終わって、ようやくひと段落といったところでしょうか。(笑)

なんと、この港町をschatziさんはご存知だったのですね!
今、日本は北欧ブームでして… (私も含め)インテリアや雑貨、スローな暮らしに憧れている女性は多いと思います。それに、教育、経済、福祉などのシステムが充実している、理想的な国家というイメージもありますし。
先日、新聞の投書欄に、北欧に永住している方から「税金がものすごく高いし、決して理想的な国ではない」というような声が載っていました。外から見るのと、内側から見るのとでは、やはり差があるのでしょうね。

映画の中で、デンマーク人がスウェーデン人のなまりを馬鹿にしたり、「国に帰れ!」と言ったりする場面があったので、同じ北欧同士でも関係は複雑なのかな、と思いました。

Brotherは、私も見ました! 日本では「ある愛の風景」というタイトルでしたが、
今回のこの作品と同じ監督さんなんですよ。
私は先にハリウッド・リメイク版の方を見たのですが、たしかにハリウッド版の方が
エピソードに温かみが感じられましたね。

いろいろ貴重なお話をありがとうございました☆

投稿: ☆ schatziさま ☆ | 2011年9月16日 (金) 08時48分

☆ ミイサさま ☆
おはようございます♪ コメントありがとうございます。
この作品、難しいテーマですが、見応えがありました。
ちょっとどきっとする場面もありましたが
家族や友情を題材にしていたこともあり、監督の温かい眼差しが感じられて
見終わった時には、ほっと温かい気持ちになりました。

エリアスを、とりあえずいじめっ子から救ったのは
お父さんの教えではなく、お友だちが反撃して助けてくれたから
なんですよね。
でもその反撃も行過ぎると、相手を傷つけることになるし
今度は相手が反撃して、もっと辛い思いをするかもしれないし…。
こうした問題は、ほんとうにデリケートで難しいですね。
一人ひとりが相手を思いやる心を持てればいいのでしょうが
実際にはなかなか簡単にはいかないですし…。

いろいろ考えさせられる作品でした。
よかったら是非ご覧になってみてください☆

投稿: ☆ ミイサさま ☆ | 2011年9月16日 (金) 09時20分

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 2011年に、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した作品。暴力の連鎖を描いた、デン [続きを読む]

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