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川本三郎 「マイ・バック・ページ ある60年代の物語」

文筆家の川本三郎さんが、ご自身の69~72年をふりかえって書かれた回顧録、「マイ・バック・ページ ある60年代の物語」を読みました。初版は88年ですが、昨年、妻夫木聡さんと松山ケンイチさんの主演で映画化されたのを機に、復刊されたものです。

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新左翼運動(全共闘運動)については、後のニュース映像などを見ておぼろげに知っているだけだったので、この本を通じて、60年代という時代の空気、全共闘運動がどういうものだったのか、記憶の断片がつながって、ようやく少し理解できた気がしました。

前半では、大学卒業後、「週刊朝日」「朝日ジャーナル」編集時代の思い出がエッセイ風に綴られています。ある高校生の活動家の話、自殺してしまったあるアイドルの話… どれも興味深かったですが、どの話にも暗い死の影が感じられるのが気になりました。

それはこの時代が、ベトナム戦争と切り離せない関係にあるからに他なりません。心情的には新左翼運動に共感しながら運動を傍観している、ベトナム戦争に反対しながら安全な場所に身を置いている、そうした自分に対して罪の意識を感じてしまう、若き川本氏の苦悩に共感しました。

後半では、川本氏があやしげな活動家Kと関わることによって、Kが起こす自衛官殺害事件の共犯者として逮捕されてしまうまでの経過が、著者の心の動きとともにていねいに描かれています。サスペンスのような緊張感があって引き込まれました。

Kはいかにも怪しい人物で、川本氏がなぜKに肩入れするのか、読みながら私にはどうしても理解できませんでしたが、思想犯が大目に見られていた当時の空気、スクープを取りたいという新米記者の野心、若さゆえの認識の甘さ… いろいろな要因があったのだと思います。

英雄ではない活動家に光を当てたい、という思いが川本氏にあったのかもしれません。しかしKは、ただ大きいことをして世間をあっと言わせたかっただけ。そこに思想など何もなかったのです…。

多少、弁解と受け取れる部分もありますが、この本には川本氏の素直な気持ちがそのまま書かれていると思いました。若い日には失敗を繰り返して、時に傷つきながら成長していくものですが、川本氏の場合、その代償はあまりに大きかった… もっともそのご経験が、今に生きているのだと思いますが。

  Five_easy_pieces

本書に登場する、ジャック・ニコルソン主演の映画「ファイブ・イージー・ピーセズ」が見たくなって借りてみました。アメリカン・ニューシネマの代表作ですが、主人公が抱える虚無感など、この時代の空気がものすごくよく伝わってきて、なるほど~と納得しました。

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コメント

今晩は。cherry

「マイバックページ」て川本三郎氏の著作が原作だったんだ~。知りませんでした。これは小説のかたちをとってるのかしら、それとも純粋な回顧録ですか?

セレンディピティさんの記事を読ませていただいて作品に興味が湧いてきました。映画はDVDになったら見てみたいです。

「ファイブ・イージー・ピーセズ」も見てない!J・ニコルスンの演技、良かったんじゃない?、もしかして。若い頃の彼は好き嫌いはあるにせよ、演技力は凄いですよね。私も是非見てみたいです。flair

投稿: ごみつ | 2011年9月10日 (土) 00時51分

☆ ごみつさま ☆
おはようございます♪
私もちょうど映画が公開された頃、新聞に川本氏へのインタヴュー記事が
載っていて、この本が原作だということを知りました。
これは小説ではなく、回顧録です。
(つまり、川本氏が事件の当事者です。)
私、川本氏のほかの著作を読んだことがないので
これを機会に少し読んでみたいな、と思いました。
映画関連の評論も、いろいろ出されているようですね。

妻夫木くんの映画の方は、実際とは名前を少し変えているようです。
こちらもなかなか評判がいいので
(川本氏は試写会で号泣してしまったらしい)
私も見てみたいな~と思いました。

J.ニコルソン演じる主人公は、ほんとうにいや~なヤツなのですが
なんとなく共感もできるのですよね…。
味わい深い映画でした。

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2011年9月10日 (土) 07時40分

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