F・スコット・フィッツジェラルド 「グレート・ギャッツビー」
F・スコット・フィッツジェラルドの代表作、「グレート・ギャッツビー」(原題:The Great Gatsby)を読みました。村上春樹さんや、「ライ麦畑~」の野崎孝さんなど、数多くの和訳が出ていますが、今回、光文社古典新訳文庫の小川高義さんの訳で読んでみました。
20世紀を代表するアメリカ文学の傑作といわれているこの作品。物語の舞台となるニューヨーク郊外のロングアイランドに住んでいたこともあって、以前から読みたいと思っていましたが、今度レオナルド・ディカプリオ主演で映画化されると聞いて、背中を押されました。
若き日に出会った美しい富豪の娘デイジーのことが忘れられず、既に結婚している彼女の心を取り戻すために、後ろ暗い仕事に手を染めて巨万の富を築いたギャッツビー。彼は、デイジーが夫トムと暮らす家の対岸に大きな邸宅を構え、デイジーと再会する日を夢見て、夜な夜なパーティを開きますが…。
ギャッツビーの一途すぎる思いは痛々しいほどで、決して報われないその思いが招いた悲しい結末に、たまらない気持ちでいっぱいになりました。デイジーの家の突堤に点滅する緑の灯は、ギャッツビーにとって夜空に輝く星のような存在なのかもしれません。美しいけれど、決して手の届かない遠い天体。
ふわふわと捉えどころのないデイジーを、かけがえのない女性と信じて追い求めるギャッツビー。しかし、デイジーにとってギャッツビーは取り巻きのひとりにすぎなかったのです。
あれほど交友関係が華やかだったのに、結局は一人ぼっちだった、というギャッツビーの空っぽの人生。そして、自分たちのために悲劇が起きようと、何事もなかったかのように平然と前に向かって歩いていけるデイジー夫婦に、後味の悪い虚しい思いが残りました。
物語は、ギャッツビーの隣人で、デイジーの親戚、トムとは大学の同窓生、というニックによって語られます。ひとクセもふたクセもある登場人物たちの中で、唯一まっとうな存在?で、私の感覚に一番近かったです。
本を読んだ後に、1974年にロバート・レッドフォード主演で映画化された、「華麗なるギャツビー」を見ました。セリフを含め、原作にかなり忠実に映画化されていたので、小説の世界を映像でもう一度楽しむことができました。
ギャッツビーのピンクのスーツに黄色い車、女性たちのファッションなど、小説ではなかなか想像しきれなかった部分が具体的に映像で見ることができてよかったです。現在撮影中のディカプリオ版「グレート・ギャツビー」(詳細はコチラ)も楽しみです。
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コメント
中学生の頃に読んだ時は、デイジーの身勝手さ、トムの傲慢な無神経さに、暴れたくなるような苛立ちを覚えたものです。当時は荒らぶる感情に振り回されて、フィッツジュラルドの繊細な感性すら不快に感じたものでした。
40代も半ばを過ぎて再読してみると、その壊れそうな繊細な感性による文章を貴重なものに思えるから不思議です。
なお、現在世界を席巻している99%が攻撃する1%の超富裕層こそ、トムのような連中なのだと思います。
投稿: ヌマンタ | 2011年10月24日 (月) 17時33分
今晩は!
え~、ディカプリオ、「グレートギャッツビー」に出るの!?知りませんでした。今、ちょっと調べたらバズ・ラーマン監督ですね。
私レオ主演、バズ監督の「ロミオとジュリエット」が大好きなので、これ期待出来そう~~。情報有難うございます!
「グレート・ギャッツビー」は、原作も、レッドフォードの映画も見たのがかなり前で、むほとんど覚えてません。
たぶんね、あんまり心に残らなかったんですよね。共感できる部分があまりに少なかったんだと思います。
今読んだら違うかもしれませんね。私も春樹訳で読んでみようかな~。
投稿: ごみつ | 2011年10月25日 (火) 00時37分
☆ ヌマンタさま ☆
ヌマンタさんが書かれた記事を、探して拝読しました。
読んだばかりの時は、なんだか哀しくて、後味が悪くて…
ギャッツビーの痛々しさ、トムの傲慢さばかりが印象に残って、
フィッツジェラルドの文章の流麗さ、感性の繊細さを
堪能するとまではいかなかったのですが
後になってから、ふと思い返してしまう不思議な小説ですね。
また時間をおいて、読み返してみようと思います。
恐縮ですが、TBさせていただきますね。
投稿: ☆ ヌマンタさま ☆ | 2011年10月25日 (火) 11時06分
☆ ごみつさま ☆
こんにちは。 そうなんですよ~。
ディカプリオ版はデイジーをキャリーマリガン、
ニックをトビー・マクガイアが演じるそうで
こちらもとっても楽しみです。
でも、3Dにする必要性があるのか疑問ですが…。
またいつか読み返してみたくなる、不思議な小説でした。
実はずっと前に買った原文も持っているので
今度はそちらにチャレンジしてみようかな…。
はたして、フィッツジェラルドの繊細な感性を
感じ取ることができるかどうか??
投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2011年10月25日 (火) 11時38分
この作品、私もレオの映画が公開される前に…と、読んで/観てとおさらいしておきましたが、セレンディピティさんはロングアイランドに住んでいらしたから、さぞかし感慨深いでしょうね。
アメリカに来て、この独特な『アメリカ人の優越感』というのを肌で感じ、アメリカ文学がやっと解釈できるようになってきました。受け入れられるかは別ですが(笑)、欧州とはちょっと違った優越感のニュアンスは興味深いです。男爵と伯爵の違い…とでもいいましょうか(苦笑)
私はレオのギャッツビーより、キャリー・マリガンのデイジーに興味が有ります。楽しみですね
投稿: schatzi | 2011年10月27日 (木) 23時51分
☆ schatziさま ☆
schatziさんも、以前に映画/本をご覧になっていましたね。
私もようやく今になって読みました/見ました。
映画は、ロングアイランドの風景を懐かしく思い出しました。
といっても、私が住んでいたのは普通の住宅街ですが(笑)
(映画でいう)イーストエッグの近くに、比較的大きな日本人コミュニティ
があって日本の食材店によく買出しに行ってました。
私の中では、ヨーロッパと比べて歴史の浅いアメリカは
自由の国というイメージがあったので、こういう特権意識がある
というのは、住んでみて初めて肌で感じた気がします。
特に東部はその傾向が強いかもしれませんね。
キャリー・マリガン、デイジーに適役ですよね!
きっとふわふわしたかわいいデイジーになるんだろうなあ
とっても楽しみです。
投稿: ☆ schatziさま ☆ | 2011年10月28日 (金) 08時25分