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タチアナ・ド・ロネ 「サラの鍵」

パリ在住の作家タチアナ・ド・ロネのベストセラー、「サラの鍵」(原題:Sarah's Key)を読みました。映画化されたこともあって(日本での公開は12月)気になっていた作品です。

  Sarahs_key

1942年7月16日、フランス警察によってユダヤ人一斉検挙が行われました。フランスで生まれ育った13000人以上のユダヤ人が、ヴェルディヴという屋内競輪場に押し込められ、その後、男、女、子どもと別々にアウシュヴィッツに送られたのです。

フランス政府はこの事実を50年以上封印してきて、1995年シラク大統領の演説でようやく初めて明らかになりました。そのため、フランス人でもこの”ヴェルディヴ事件”を知っている人は少ないそうです。

私自身、ナチスによるホロコーストについては、今までに何度となく小説や映画で読んだ/見たことがありましたが、フランス政府が加担していたことは、少し前に公開された「黄色い星の子供たち」(未見)という映画で初めて知ったばかりでした。

前半では、今を生きるフランス在住のアメリカ人ジャーナリストのジュリアと、1942年に生きるサラというユダヤ人の女の子の話が交互に進行します。雑誌の特集のために、ヴェルディヴについて調べ始めるジュリア。一斉検挙の朝に納戸に隠してきた弟の元にもどるため、収容所を脱走するサラ。

二人の人生が、時代を越えて交差するまでの展開は、サスペンスのような緊張感があって引き込まれました。サラのたどった道のりは、あまりに過酷で胸がしめつけられますが、一方、そのような時代にも、危険を冒し命がけでサラを守ろうとした尊い人たちがいたことに心を打たれました。

二つの物語はひとつに交わり、サラの存在を知ったジュリアは、彼女を探す旅に出ます。ヴェルディヴ事件という不幸な過去を覚え、忘れないこと、いつまでも語り継ぐことはとても大切だと思います。

ただ、サラがずっと心に秘めていたことに、他人であるジュリアが踏み込んでよいものか、ふと考えさせられました。真実を知ることが必ずしも正しいとは限らない。そこには触れられたくない傷もあるはずだから…。

「サラの鍵」というタイトルには、サラが弟を隠した納戸の鍵という意味のほかに、サラの心の扉の鍵という意味も込められている、と思いました。ジュリアが開いたサラの心が、残された人たちにとって新しい一歩を踏み出す力となると信じたいです。

Cover_picture_2

表紙は、デンマークのヴィルヘルム・ハンマースホイという画家の「白い扉、あるいは開いた扉」という作品。独特の透明感、無を表しているような静かな風景が印象的です。

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コメント

今晩は!

「サラの鍵」先日、映画の予告編を見て、見に行きたいな~なんて思ってた作品です。key

小説はちょっと前からポツポツと売れてたのですが、ストーリーを今回はじめて知りました。
やっぱりこういう作品は小説で読む方がベターかしら・・とセレンディピティさんの記事を読みながら思っているところです。book

弟がどうなったのかがとっても気になってます・・。

投稿: ごみつ | 2011年11月14日 (月) 22時24分

戦後10数年後に生まれ、今だ、戦争を経験していない
幸せを感じます。
とても内容の深い考えさせられるような本のようですね。
フランスでもこのような事実があったと最近、わかった・・・
ということにも驚かされますが・・・

投稿: イザワ | 2011年11月15日 (火) 01時51分

☆ ごみつさま ☆
おはようございます♪
ごみつさん、映画の予告をご覧になったのですね。
この作品、テーマは重いですが
今を生きるジュリアが探し求めていく…という展開になっているので
比較的気持ちが入りやすかったです。
当事者であるフランス人ではなく、アメリカ人の目で描かれている
ということも大きいかもしれません。

映画もなかなか評判がいいので気になっています。
ちょっと辛そうなので、DVDになるかもしれませんが
是非見てみたいです。

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2011年11月15日 (火) 10時01分

☆ イザワさま ☆
一応、曲がりなりにも人権についての意識が高まっている
今の時代となっては、ほんの半世紀前にこのようなことがあった
というのが信じられない思いがします。

フランスでのシラク大統領の演説を受けて、
ここのところヴェルディヴをテーマにした映画や小説が
次々と発表されているようです。
封印されていた負の歴史を知るのは大切なことですね。

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2011年11月15日 (火) 10時10分

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