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「ベニスに死す」

最近ニュープリント版が公開されて話題となっていた、ルキーノ・ヴィスコンティ監督の名作 「ベニスに死す」(Death in Venice)。予告を見て気になっていたのですが、劇場で見る機会を逸してしまったのでDVDで見ました。

  Death_in_venice

舞台は、1911年のベニス。リド島で休暇を過ごすために訪れた老作曲家アシェンバッハは、滞在先のホテルで見かけた、ギリシャ彫刻のように美しいポーランド人の少年タジオに心を奪われます。

折りしも熱風が吹き、コレラが流行しはじめたベニスで、やがて訪れる死の恐怖に怯えながら、アシェンバッハの眼差しは、ただひたすらにタジオの姿を追い求めます…。

自然の作り出す美しさを前に抱く畏れにも似た気持ち、恋した時の狂おしくも切ない気持ち、自分の老いや衰えにふと気づいた時の衝撃的な気持ち、そしていつかやってくる死を意識して漠然と恐れる気持ち。

ヴィスコンティ監督がこの作品で描いた究極の美の世界が、見る人の心をとらえてやまないのは、それが決して特別なものでなく、私たちひとりひとりの中にある物語に通じるからかもしれません。

この作品を最大限に魅力的にしているのは、なんといってもタジオを演じるビョルン・アンドレセンの圧倒的な美しさと、全編を通して流れるマーラーの交響曲第5番の第4楽章アダージェットの甘美な調べです。

映像の中のタジオがあまりにも美しく、そしてマーラーのアダージェットが、あまりに甘く、切なく、心を震わせるので、これまで芸術家として美を追求してきたアシェンバッハが、理想の美を備えた少年を前に、魔法をかけられたように打ちのめされてしまうことが、ごく自然なこととして胸にせまりました。

髪を染め、化粧を施し、せいいっぱいに若々しさを装うアシェンバッハ。最後にはその化粧も剥げ落ちて、冒頭で見たあのりっぱな紳士が、見るも無残な姿になっています。それでも人生最後に最高の美に出会えた彼は、きっと幸せに旅立っていったのだろうなと思います。

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映画」カテゴリの記事

コメント

この映画、ずーっと前に見たことがあります。長くて、今観たらきっと早送りの世界かもしれません(汗)ヴィスコンティの作品は、出演者はもちろん、衣装からお天気まで、妥協を知らない芸術作品が多くて、軽い気持ちで観ると飽きてしまう(?)時があります。劇場でしっかり心して鑑賞したいです(笑)

東京の紅葉は遅いんですね~。まだ日本に居たときは、日比谷、上野の森、砧、戸田公園などはよく足を運びました。日比谷のこの噴水、懐かしいです。

前回の由比ヶ浜にコメントを残したのですが、ケイタイから入力したせいか、残っていませんでした…。オットがウインドサーファーだったので、ここへはよくいきました。私と子供はもっぱら浜で水/砂遊びでしたが、その砂が黒かったのを覚えています(苦笑)

あぁ、セレンディピティさんの観るもの/行かれるところ、とっても懐かしいです。次は何を観て、どこへ行かれるのかとっても楽しみです♪

あ、そろそろジンジャーブレッドですね。ウチもぼちぼち始めます(笑)

投稿: schatzi | 2011年12月 4日 (日) 02時47分

今晩は!

あ~、私もスクリーンで是非観たい!と思ってたのですが、結局行けなかったんですよね~、これ。(泣)

DVDでご覧になったんですね。私、この作品は、ビスコンティの映画の中で一番好きです。shine

アッシェンバッハのあのみじめなラストシーン、セレンディピティさんもおっしゃてる様に、あれは彼にとって恍惚たる至福の中での死です。
美をこれほどまでに追い求める人間がいる事、美こそがすべての幸福なのであるという感情、芸術家が求め続けて自らが手にすることのできなかった、完全な美を発見した哀しみと喜び。

見事な作品ですよね~。

私もかなり前に記事にした事があるのでTBさせていただきました。これ原作も良いですよ!機会ありましたら是非!bookhappy01

投稿: ごみつ | 2011年12月 4日 (日) 22時02分

☆ schatziさま ☆
schatziさんも「ベニスに死す」ご覧になったのですね。
ただひたすらに、タジオくんを追っている作品ですが(笑)
私もアシェンバッハのように、あまりの美しさに見入ってしまい
不思議と飽きずに見られました。
マーラーの音楽もすばらしかったですね。
こだわりのヴィスコンティ監督の作品なので
きっと細部にわたって、伏線や意味があったのだろうな、と思うと
もう一度見てみたくなります。

東京の紅葉、そちらに比べると1ヶ月くらい遅いですね。
今がちょうど見ごろで、公園や並木道など、どこも美しいです。
12月に入って、こちらもすっかりクリスマスモードですが
もう少し秋をゆっくり楽しんでいたい気分です。

由比ヶ浜も、schatziさんには思い出の場所だったのですね。
(コメント、消えてしまったようで失礼しました。)
なんと夫君はウィンドサーファーでしたか。
この日もこの寒い中、たくさんのウィンドサーファーがいましたよ。
波が高かったので、絶好のサーフィン日和だったのかもしれません。
そうそう、砂浜は黒くてあまり美しくないんですよね~。
沖縄くらいまで行くと、砂浜も白くてきれいですが…。

ジンジャーブレッド! 昨日ちょうど生地を作って
今、冷蔵庫でねかしているところですよ。
今年はちょっと地味路線で作ろうかな??なんて思ってます。(笑)

投稿: ☆ schatziさま ☆ | 2011年12月 5日 (月) 11時20分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
ごみつさんは、ご覧になっているかな…?と思っていました。
TB、ありがとうございました。

ヴィスコンティ監督が描く、壮麗な美の世界に圧倒されました。
タジオくんや、マーラーの音楽もさることながら…
リドのホテルでの華やいだ雰囲気や、登場人物の衣装など
クラシックでエレガントな世界にうっとりしました。

アシェンバッハ、たしかにみじめで滑稽なのだけれど
その気持ちもまた、痛いほどによくわかるのですよね…。
ごみつさんもお書きになっていた、荷物の手違いで
リドにもどることになって、むふふと笑うシーン、私も好きです。(笑)

原作では主人公は作家なのですよね。
(一説では、モデルはトーマス・マンご自身だとか…)
こちらも読んでみたいです。

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2011年12月 5日 (月) 11時54分

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La Morte A Venezia 1971年/イタリア (監)ルキノ・ビスコンティ (演)ダーク・ボガード ビョルン・アンドレセン シルバーナ・マンガーノ ☆☆☆☆ トーマス・マンの小説をほぼ忠実に映画化したルキノ・ビスコンティの名作。 原作では小説家の主人公グスタフ・アッシェンバッハを、マンがマーラーをイメージして描いた事から、映画では音楽家に変更している。 主人公の心象風景を表現する様に全篇にわたってマーラーの音楽が流れる。 [画像] 初老の高名な音楽家アッシェンバッハは、芸術とは理性... [続きを読む]

受信: 2011年12月 4日 (日) 21時55分

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