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カズオ・イシグロ 「日の名残り」

アンソニー・ホプキンス主演の映画、「日の名残り」(The Remains of the Day)がとても心に残ったので、原作も読んでみたくなりました。日系イギリス人作家、カズオ・イシグロのブッカー賞受賞作です。

The_remains_of_the_day  日の名残り (The Remains of the Day)

内容が重複しないよう、映画の感想をこちらにリンクしておきますね。

movie 日の名残り (映画)

今ふりかえると、映画は原作の世界をみごとに映像表現したすばらしい作品だったのだなあ、と改めて感動が蘇ってきました。特に執事のスティーブンスを演じたアンソニー・ホプキンスと女中頭のミス・ケントンを演じたエマ・トンプソンのやり取りは、原作を読むとそのまま情景が浮かんでくるようでした。

原作は、何十年という執事人生で初めて休暇をとったスティーブンスが、ミス・ケントンを訪ねて西方の港町へと旅する、いわばロードムービーとなっています。旅の描写とともに、戦前隆盛を誇っていた頃のダーリントン・ホールでの思い出が、スティーブンスによって語られます。

私もかつて、コッツウォルズからウェールズへと気ままなドライブ旅行をしたことがあり、しかも初日はスティーブンスと同じくソールスベリーに泊まったので、行く先々の宝石のような美しい村々や絵のような田園風景、素朴な村の暮らしを懐かしく思い出しながら読み進めました。

そして私は、映画では自分が勘違いをしていたらしいことに気づきました。私は、スティーブンスはケントンの気持ちに気づきながら、職務を全うするために気づかないいふりをしていたのだとばかり思っていましたが、原作を読むと、どうやらスティーブンスはケントンの気持ちに全く気づいていなかったようです。

再会の場で、ケントンから「もしかしたら、私には別の人生…あなたといっしょに生きる人生もあったかもしれない」という控えめな告白を受けて、スティーブンスはようやくケントンのほんとうの気持ちを知り、胸が張り裂けんばかりの痛みに打ちひしがれるのです。(スティーブンスの大ばか者!)

旅の初日に、スティーブンスが小高い丘の上に登ってみごとな田園風景を眺め、そこにイギリスの真の品格を見出す場面も印象的でした。映画にはない場面ですが、代わりにラストシーンでカメラがズームアウトして映し出した、ダーリントンホールとそのまわりに連なる絵のように美しい森の風景を思い出しました。

私は、日本生まれのカズオ・イシグロが、どのようにして、生粋のイギリス人らしいメンタリティでこの小説を書くことができたのか、不思議に思っていましたが、小説の中に、スティーブンスが古典的な恋愛小説を読んで、客人との会話の勉強をする、という描写があり、そこにヒントを見つけたような気がしました。

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コメント

今晩は!

「日の名残り」は映画も本当に素晴らしいですが、原作を読むとまたさらに深い世界を味わえるんですよね。shine

最初に読むと、どうして日系人にこの作品が書けるの!?とびっくりしちゃいます。ただ、イシグロ氏は子供の時に渡英しているので、メンタルな面も含めて、ほぼイギリス人なのでしょうね。

かなり前に記事にしたドキュメンタリー「カズオ・イシグロを探して」では、さらに深く彼の背景を知る事ができたので、この番組、また再放送すると良いですね~。happy01

投稿: ごみつ | 2011年12月 7日 (水) 20時21分

☆ ごみつさま ☆
「日の名残り」とてもよかったです!
映画のイメージがあまりに鮮烈だったので、本を読んでいる時も、アンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンの会話になってしまって困りました。sweat01 (なぜか脳内では、二人とも日本語を話しています。(笑))
今度は「わたしを離さないで」を読んでみたいです。

やはり小さい時に渡英して、イギリスで教育を受けられたことが、人格形成に大きな影響を与えられたのでしょうね…。それに加えて、ご自身も小さい頃から古今の英文学に触れてこられたのではないかな…と想像しました。ごみつさんがご紹介されたドキュメンタリー、機会があれば是非見てみたいです。

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2011年12月 8日 (木) 12時04分

カズオ・イシグロ氏の「わたしを離さないで」をずっと読みたいと思っているのに
未だに読めていません。
映画も観たいけれど、原作を読んでから観るのが好きなので
ぐっと我慢…
以前NHKでイシグロ氏の特集をやっていたんです。
かれは本当に幼少の頃に渡英しているので
日本語も話せないですし、国籍も彼だけイギリスだったようです。
なので、感性は殆ど英国人だったのかもしれませんね。
でも、やはり自分の根本的なもの。
「ルーツ」を探りたいという願望はずっとあるようです。
あぁ、早く読まなきゃ!
読みたい本が多くて困ります。笑

投稿: ミイサ | 2011年12月 9日 (金) 07時39分

☆ ミイサさま ☆
こちらにも、コメントありがとうございます♪
ミイサさんも、カズオ・イシグロさんに
興味を持っていらっしゃるのですね!
「わたしを離さないで」私は映画を先に見たのですが
本は今、手元にあるので、近いうちに読んでみようと思います。
パラパラ…とめくったら、主役の女の子の雰囲気が
映画とはちょっと違うように感じたので、こちらも楽しみにしています。

そしてミイサさんは、NHKのカズオ・イシグロ特集を
ご覧になったのですね!
私は見損ねてしまったので、とても残念です。><
イシグロ氏は幼少期からずっとイギリスでイギリス人として
過ごされてきたのでしょうね。
やはりDNAよりも、環境、特に教育の影響は大きいですよね。
でもその一方で、ご自身のルーツも気になる…というのは
わかるような気がします。
またおもしろい本を見つけたら、是非ご紹介くださいね!

投稿: ☆ ミイサさま ☆ | 2011年12月 9日 (金) 10時06分

映画『日の名残り』を調べていてこちらにたどりつきました。とても感動した作品の一つです。これといった大きな事件が起こるわけではありませんが、映画が進むにつれて、じわじわと心に染み入るような作品でした。

>私もかつて、コッツウォルズからウェールズへと気ままなドライブ旅行をしたことがあり、しかも初日はスティーブンスと同じくソールスベリーに泊まったので、

素敵な経験ですね。ぼくも一度旅をして見たいです。


小説も是非読んでみたいと思いました。ご紹介に感謝です。

投稿: ETCマンツーマン英会話 | 2013年10月 8日 (火) 14時07分

☆ ETCマンツーマン英会話さま ☆
こんにちは。
コメント、どうもありがとうございます。

「日の名残り」、アンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンの名演もあって
控えめながらすばらしい作品でしたね。
ETCさまからコメントをいただいて、私も久しぶりに
あの作品に描かれていた世界が、記憶によみがえってきました。

スティーブンスが「品格」と表現したイギリスの田園風景も
心に深く刻み込まれています。
私もいつかまた訪れてみたい場所のひとつです。

小説もすばらしかったです。
よかったら是非、お読みになってみてください☆

投稿: ☆ ETCマンツーマン英会話さま ☆ | 2013年10月 9日 (水) 09時31分

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