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三島由紀夫 「春の雪」

11月に鎌倉文学館(旧前田侯爵別邸)を訪れた時に、ここが三島由紀夫氏の小説「春の雪」に登場すると知って、読んでみたくなりました。「春の雪」は、三島氏が最後に書かれた作品、「豊饒の海」4部作の第1巻にあたるものです。

軽い気持ちで読み始めましたが、これはすごい…。衝撃に打たれました。華族社会を舞台にした禁断の恋愛小説ですが、結末に向かって加速し、破滅へと突き進んでいく狂おしいほどの熱情に圧倒されました。三島氏の流麗な文章、日本語の美しさに酔いしれました。

  Haru_no_yuki   春の雪

侯爵家の若殿 松枝清顕と、伯爵家の姫 綾倉聡子。幼なじみの二人は、互いに惹かれ合いながらも、未熟さゆえに自分の気持ちに気付かず、また表現できずにいました。そんな折、聡子に宮家との縁談が持ち上がりますが、矜り高い清顕は素直になれず、自分から聡子を遠ざけてしまいます。

いよいよ勅許がおりて聡子の結婚が決定的となった時、初めて取り返しのつかない自分の気持ちに気づいた清顕は、聡子の心を取り戻そうとし、聡子もまたその愛に応えます。しかしそれは決して許されない天子への反逆行為でした…。

清顕が少年特有の背伸びから、年上の聡子に宛てたウソの手紙。そのウソを知った聡子は、清顕への思いが晴れ、全身に喜びに表して恋心を伝えようとします。しかし、ウソが知れたとわかった清顕は、逆に自尊心を傷つけられた恥ずかしさにふるえ、聡子を拒絶するのです。

きっかけはほんの小さなできごと。清顕のつまらない虚栄心が、思いもよらない力でその後の二人の運命を狂わせ、後戻りできない道へと追い詰めていきます。それまで何事にも情熱を注ぐことのなかった清顕を迷わせ、狂わせたものはいったい何だったのだろう… そこに恋の魔力を見た思いがしました。

清顕が聡子に思いをぶつけてから結末に向けてのたたみかけるような展開は緊張感がみなぎり、物語の世界に一気に引き寄せられました。そして、聡子が自らに科した潔い行いに息をのみました。

この作品は、これだけで完結した物語となっていますが、最後まで読むと続きが気になります。今は第2巻の「奔馬」を読んでいますが、清顕の親友 本多が、滝の下である若者に出会う場面には鳥肌が立ちました。この4部作が最後にはどこに行き着くのか、この先の展開が楽しみです。

Kamakura_bungakukan 041_convert_20120113015949

(左)こちらが先日訪れた鎌倉文学館。「春の雪」では、松枝家の別邸という設定で、清顕が親友の本多やシャムの王子たちとともに、夏休みをすごす場面で登場します。

(右)文学館のバラ園に咲いていた「春の雪」というバラ。小説にちなんで名付けられたそうです。さわると溶けてしまいそうに繊細で、小さくて可憐な花でした。

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コメント

セレンさんこんにちは^^
セレンさんの読解は私にとって無駄がなくそれでいて自分が読んだかのように情景が浮かんできます。三島由紀夫氏は最近は全く読んでいなかったでのですが、とても読んでみたくなりました。
鎌倉文学館、バラ園といい建物といい都内にある旧古河庭園とそっくりですね。

投稿: アサ | 2012年1月13日 (金) 16時20分

今晩は。

私は未読なのですが、「豊饒の海」シリーズは、三島由紀夫の代表作ですよね。book

私もかなり以前、「仮面の告白」を読んで衝撃を受け、その後、何冊か読んだり、三島の生涯を追ったりしてた事があるのですが、パタっと途切れてしまってました。

セレンディピティさんの感想を読ませていただくと、素晴らしい文章なんだろうな・・と、情景までが目に浮かんでくる様です。

時間がゆっくりとれる時にでも、私も是非読んでみたいです。happy01

投稿: ごみつ | 2012年1月14日 (土) 00時40分

☆ アサさま ☆
アサさん、こんにちは。
そんな風に言っていただくと恐縮してしまいます。
私もひょんなことから、久しぶりに三島作品を読みましたが
絵巻物を見るような美しい日本語表現に感動しました。
鎌倉文学館、鎌倉の豊かなの自然の中にあって
落ち着いた雰囲気のすてきな洋館でした。
建物から見る海の風景が、すばらしかったです。

投稿: ☆ アサさま ☆ | 2012年1月14日 (土) 16時53分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは♪
「豊饒の海」は三島氏が最後に書かれた作品で
第4部を書き終わって、自決に向かわれたのですよね…。
そう思うせいか、文章にも気迫が漲っているように感じられました。
ごみつさんは、三島ブームだったことがあるのですね♪
三島作品は、私も軽めの作品をいくつか読んだことがあって
それはそれで、どれも気に入っていましたが
この作品では特に流麗な日本語の美しさを再発見しました。
これを機会に、もっといろいろ読んでみたいです☆

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2012年1月14日 (土) 17時09分

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