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三島由紀夫 「奔馬」

三島由紀夫氏の小説『豊饒の海』4部作の第1巻、「春の雪」がとても気に入ったので、第2巻「奔馬」(ほんば)も読んでみたくなりました。「春の海」は絢爛たる美しさに彩られた悲劇的な恋愛物語でしたが、「奔馬」はがらりと変わり、右翼の青年テロリストを主人公とした硬派で男くさい物語です。

とても私には共感できそうもないな… と思いながら読み始めましたが、読み終わったときには主人公の純粋な精神、自分が信じる理想に向かってまっすぐに突き進む情熱に、すっかり魅了されていました。数百ページの間に、私の心を180度変えてしまった三島氏の筆力に改めて感服しました。

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『豊饒の海』は輪廻転生をテーマとした4部作。「春の雪」で20歳の生涯を閉じた松枝清顕の生まれ変わりとして、「奔馬」では凛々しく麗しい少年剣士 飯沼勲が、颯爽と登場します。

皇国思想に心酔している勲は、腐敗した政治、疲弊した社会を自らの手によって改革しようと、信頼できる同士を集め、諸悪のもととなる要人たちの暗殺を計画します。

それは、暗殺後自らの命を絶ち、魂の叫びを天に届けることで成し遂げられる、という神聖なものでしたが、直前になって計画が警察の知るところとなり、未遂に潰えてしまいます…。

思想的には私とは相容れないもので、全く共感できないのにもかかわらず、読み進むうちに、勲にどうしようもなく惹かれていく自分がいました。それは石鹸の香りがするような若々しい理想、一点の曇りなく晴れ渡った青空のように清く高らかな精神が、私にとって尊く、まぶしく映ったからかもしれません。

そしてそれは私だけでなく、勲の周囲の大人たちにとっても同じことでした。勲を愛するがゆえに、彼を失いたくないがために、周囲の大人たちは”大人のやり方によって”彼を救います。しかしそれは、彼の純粋たる精神を、抹殺することに他ならないものでした。

私は死をもって美とする考え方はよしとしませんが、勲が求めた道は、三島氏にとって理想とする生き方だったのかもしれない… とふと思いました。

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コメント

こんばんは。cherry

2作目も面白そうですね!
私はこの作品のストーリーはたぶんかなり好みです。

この作品の主人公は三島由紀夫自身の姿なのでしょうね。書かれてるストーリー通りの行動を彼自身がおこし、自害して果てた事を思うと、三島由紀夫という作家の異常なまでの純粋性を感じます。

高度経済成長下の日本で、三島は、切腹をし介錯までさせた。

セレンディピティさんが記事の中でも書かれている
> それは石鹸の香りがするような若々しい理想、一点の曇りなく晴れ渡った青空のように清く高らかな精神

こういう志を愛した三島の最期は、私にはやっぱり哀しい。でも絶対に滑稽ではないと思う。

投稿: ごみつ | 2012年2月 7日 (火) 01時44分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは♪ 「奔馬」、よかったですよ!
自分でも意外でしたが、「春の雪」以上に心に響きました。
きっとごみつさんも気に入られると思います。

私もこの本を読んで、これが三島の理想だったのだろうな…
と思いました。
ほんの少し、三島の心の一端に近づけた気がしましたよ。
ただ私は、こうした純粋な精神を理解し、惹かれながらも
だからこそ生きて欲しかった…と思ってしまうのです。

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2012年2月 7日 (火) 11時20分

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