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服部真澄 「天の方舟」

「龍の契り」「鷲の驕り」などで知られる服部真澄さんの最新刊、「天の方舟」を読みました。社会派エンターテイメントと思って読み始めたら、企業サスペンス、はたまたホラー? 

最後の方は少々失速気味でしたが、途上国開発援助という美名のもとに行われている不正や不当なお金の流れについて、どこまでほんとうかはともかく、意識を向けることができて興味深かったです。

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学生時代からお金に執着のあった黒谷七波は、国際支援の世界では水面下で億という多額の援助金(ODA)が動くということを知り、途上国開発支援プロジェクトを企画する、大手開発コンサルティング会社に就職します。

提携する建設会社のキーパーソン宮里に接近した七波は、宮里の口利きで徐々に大きな仕事を任されるようになり、裏金のしくみについても精通していきます。上司や建設会社から信頼を得た七波は、ついには新しく開設するベトナム駐在所の所長に抜擢されます。

しかし、ベトナムのインフラを整える大プロジェクトに携わり、それに関わる富を得る高揚感に酔うもつかの間、手がけている橋が崩落し、多くの現地作業員が死亡するという大惨事が起こります…。

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政官財、それに相手国政府や現地業者もからんでの賄賂やリベートについてのからくりが、スピード感あふれる軽いタッチで書かれていて、ぽんぽんと読み進めることができました。

あくまでフィクションなので、多分に脚色されていると思いますし、実際には真摯な思いで地道に途上国援助に携わっている方たちもおおぜいいらっしゃると思いますが、こういう一面がある… と知り得たことは勉強になりました。

七波が入社して初めて携わったタンザニアのプロジェクトは、乾燥した地域に現地の人が望まない水田を作るというもの。援助の内容は現地の希望を無視して、国家間の都合や利権だけで決められるという現実に、国際貢献に夢を描いて入社した仲間たちは挫折し、辞めていきます。

現地の人が望まないプロジェクトであれば心が痛むけれど、ベトナムのプロジェクトのように、現地の期待を一身に背負っていて、しかも、お金を自由に使い、動かすことができる立場にいたら、その一部を自分のものにすることに、さほどの罪の意識は働かないのかもしれません。

私は最初から最後まで、主人公の七波に共感することはできませんでしたが、賄賂やリベートがあたりまえの世界では、”話がわかる人”でないと大きな仕事に携わることができず、いつの間にか善悪の感覚が麻痺していくのでは…と、恐ろしくなりました。

日本のODAが関わったベトナムの橋梁崩落事故は、2007年に実際に起こった事故ですが、日本ではほとんど報道されなかったそうです。リベートを捻出するために橋の安全性や、現場で働く作業員たちの命が軽視されたのであれば… 問題は根深いと思いました。

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コメント

一つの事業を成し遂げるため、広い意味で予算をどう分配するか。。。
という事はどの事業仕分けでもあり
その結果、現場に関わる部分の予算を削り大事故につながる。。。
ありそうなお話ですね。
でも人命に関わる様な事故はあってはならない事です。が。。。
満更嘘でも無さそうなのが怖いですね。

投稿: イザワ | 2012年2月24日 (金) 15時27分

☆ イザワさま ☆
おはようございます。
この本の中では、プロジェクトに携わる日本の建設会社が
現地で作業を行う海外の下請け会社にリベートを要求し、
その下請け会社がコストを下げるために、安全面をないがしろに
したらしい…という設定になっていました。
原因究明はせず、日本側が遺族に(日本にとっては微々たる額の)
補償金を出す、ということで決着していました。

賄賂を取り締まる国際法も徐々に整備されてきてはいるようですが
こうした事例、まだまだほかにもあるのかな…
と思うと恐くなってきました。

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2012年2月25日 (土) 09時36分

今晩は。

昨夜遅くまで起きていたうえに、私、低気圧に弱いもので、今日は一日無駄にゴロゴロと過ごし、今頃PC開いたりゴソゴソと活動開始です。(笑)happy01pc

この作家さん、知りませんでしたが、ストーリーを読ませていただくと、山崎豊子さんみたいな社会派小説でしょうか?
私たちが知らないだけで、こういった問題はあちらこちらにたくさんあるのでしょうね。

賄賂やリベート・・・、これは戦争と同じくらい、人間が存在する限りなくなる事はないでしょうね・・。think

記事の感想を読ませていただくだけでも、あれこれと考えさせられますね。

投稿: ごみつ | 2012年2月25日 (土) 17時54分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
昨日は朝から雨が降っていたので、なんとなく出遅れて
私もゆっくりすごしていました。

服部真澄さんは、国際社会を舞台にしたスケールの大きなサスペンス
を書かれていて、「龍の契り」「鷲の驕り」の頃はすごい新人が出た
と話題になっていましたが、最近はちょっと見ないな… 
と思っていました。
気になっていた作家さんですが、私も読むのは今回が初めてです。
テーマは興味深く、軽めの文章で読みやすかったです。
最後の方は、あれこれ凝りすぎて、収拾がつかなくなっている?
印象がありましたが…。(笑)

賄賂やリベートは、ある程度までは人間関係を円滑にする
必要悪の部分があるのでしょうが、あまりにゆきすぎると
どこかにひずみが出てくるのでしょうね。
悪事に手を染めなければ前に進まない…という状況は
私はやっぱり抵抗を感じてしまいます。

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2012年2月26日 (日) 11時21分

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