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「ピアノマニア」

世界の名だたるピアニストたちの演奏を影から支える、”調律師”という仕事にスポットを当てたドキュメンタリー映画、「ピアノマニア」(Pianomania)を見に行きました。

主人公は、ピアノの老舗ブランド スタインウェイのドイツ人調律師、シュテファン・クニュップファー。世界の名ピアニストたちから絶大な信頼を得ている彼が、バッハの「フーガの技法」を録音するフランスのピアニスト ピエール=ロラン・エマールのために、最高の音を作り上げるまでの一年間が描かれます。

  Pianomania

ピアノの音色やタッチはどれひとつとして同じではない。それは素人の私も感じていました。発表会で初めて触れるピアノのキーの重さや柔らかさ、音の響き、椅子の座り心地、ペダルがどのくらい影響するか… それらが事前にわからず、子どもなりにナーバスになったことを、ふと思い出しました。

プロは演奏前に、十分に指慣らししておくのだろうな…とは思っていましたが、ピアノ選びに始まり最終的な音の微調整まで、一年もかけて、究極の音作りのために準備するとは、さすがに驚きました。(もっともエマールは、特に音に厳しい調律師泣かせのピアニストのようですが。)

この映画に登場するシュテファンの調律師としての仕事は、単に音程の狂いを直すのではなく、ピアニストが求める微妙な感覚を理解して、それを職人的な技によってピアノの音に反映させていくものです。ピアニストと何度もミーティングを行って調整し、最終的に理想とする音色や響きに仕上げていきます。

ピアニストにとって、演奏会は「一度かぎりの音」、そして録音は「永遠に残る音」。どちらも芸術家として妥協を許さない真剣勝負の場ですが、影で支える調律師もまた同じ覚悟で臨んでいる同志なのだ、とシュテファンとエマール、二人の熱いやり取りの中から伝わってきました。

シュテファンの音作りは、ある意味ユニーク。曲に合わせて、部分的にフェルトを使ったり、時にはハンマーを全部取り替えたり。オルガンのような音を表現するために、ピアノの上部に特製の共鳴板を取り付けることもあります。また偶然紛れ込んだほこりが、よい音を作りだすこともあるのだそうです。

シュテファンのそうした型にはまらない柔軟性とアイデアを生み出す想像力、フットワークの軽さは、いわゆる”気難しい職人”のイメージとは違っていました。素顔のシュテファンは気さくで明るく、コミュニケーションとチームワークを大切にする陽気な仕事人でもありました。

録音では一曲ごとにその曲に合わせて調音するのにも驚きましたが、コンサートの時はそういうわけにはいかないので、どの曲にも対応できるよう調整するのだとか。ホールの音響はもちろん、あらゆる要素を考慮した極限なまでの音作りへのこだわり。”ピアノマニア”の徹底した仕事ぶりに、ただただ圧倒されました。

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コメント

今晩は。

調律師さんのドキュメンタリー!
これは珍しいですね。
でも、ピアノが好きな方ならとっても楽しめそうな作品ですね。note

セレンディピティさんもピアノやってらした事があるんですね!
羨ましいな~。
私は笛しかふいた事がありません。リコーダーとか。(笑)

調律師さんて、絶対音感がないとダメなんでしたよね?確か。

プロフェッショナル中のプロフェッショナルなんだろうな~。
( ゚д゚)・゜☆

投稿: ごみつ | 2012年3月 2日 (金) 23時17分

ピアノといえば、以前、辻井さんを撮影させていただいた
ことがありますが、インタビューの話を聞いていて、
ピアノも技術だけでなく、その人の根本にある、生き方
考え方が音にも反映しているんだな・・・と感じました。
若いのに、とてもしっかりした考え方を持った素晴らしい
方でした。

投稿: イザワ | 2012年3月 3日 (土) 02時19分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは♪
「ピアノマニア」、CDやコンサートではあまり意識することのない
調律師の知られざる世界に触れることができて
とても楽しく見ました。
ピアニストの難しい、時にアンビバレントな要求に対しても
決してあきらめることなく理想の音を作り出していく
シュテファンのプロ根性に感動しました。

シュテファンはあまりに音に敏感なので
ラジオなどから流れてくる音が美しくないと
耐えられずに消してしまうそうです。><

私は大人になるまでずっとピアノを続けていたのですが
最近はたまに弾く程度で、指もすっかり硬くなってしまいました。
リコーダーも好きです。^^
先日息子の学校でリコーダーアンサンブルを聴いたのですが
柔らかさと繊細さのある表情豊かな音楽に感激しました☆

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2012年3月 3日 (土) 14時58分

☆ イザワさま ☆
イザワさんは辻井伸行さんを撮影されたことがあるのですね。
貴重なお話がうかがえたことと思います。

先日、辻井さんが映画「ハヤブサ」の音楽を作曲されるまでを
追ったドキュメンタリー番組を見ましたが
音楽やお仕事に対して真摯に取り組む姿勢や
誠実なお人柄に魅了されました。
辻井さんが表現される、伸びやかで透明感のある音楽にも
ご自身の生き方や考え方、個性が表れているのでしょうね。

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2012年3月 3日 (土) 15時13分

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