« 「アーティスト」 | トップページ | 「ルート・アイリッシュ」 »

赤瀬川原平 「個人美術館の愉しみ」

赤瀬川原平さんの新刊、「個人美術館の愉しみ」を読みました。

  Kojin_bijutsukan

前衛芸術家で芥川賞作家でもある赤瀬川さんですが、失礼ながら私の中では”超芸術トマソン”や”路上観察”でおなじみの、ちょっととぼけたおもしろいおじさん、という印象が強いです。赤瀬川さんの力の抜けたゆるい語り口が大好きで、この本も楽しみにしていました。

ここには、赤瀬川さんが実際に足を運ばれた、全国45の個人美術館が紹介されています。私には初めて知る美術館も多かったですが、赤瀬川さんの飄々とした、それでいてプロとしての要所を押さえた解説に、その美術館の魅力が鮮やかに浮かび上がってきました。

個人美術館には、一人の作家だけの美術館と、一人のコレクターによる美術館という、2つの意味があります。前者は自治体、後者は個人によって運営されることが多いですが、どの美術館にも(特に後者には)、その成り立ちにドラマティックなエピソードがあり、引き込まれました。

展示作品だけでなく、建築物としての美術館や庭園、周囲の環境など、プラスアルファの部分も楽しめました。新書ながらカラー写真が豊富で、その美術館のイメージがよりいっそうふくらみました。登場する美術館はどれも魅力的ですが、気になったところを、いくつかピックアップしてみますね。

足立美術館(島根県安来市)
事業家の足立全康さんが作られたという美術館。アメリカ専門誌の日本庭園ランキングで、桂離宮を抑えて8年連続1位に輝いたという日本庭園がすばらしい。庭と調和する横山大観の作品も見てみたいです。

浜松市秋野不矩美術館(静岡県浜松市)
6人のお子さんを育てながら創作活動を続け、のちにインドに渡って日本画の先生となったという、秋野不矩さんの強烈な生き方に惹かれました。ヨーロッパのプチシャトーのようなシックで美しい建物も魅力的です。

笠間日動美術館(茨城県笠間市)
銀座の日動画廊が運営する美術館で、広大な敷地が芸術保護区となっています。荒れ果てていたのを移築したという、北大路廬山人の自邸も見てみたいです。

アサヒビール大山崎山荘美術館(京都府大山崎町)
イギリス山荘風の重厚な木造の洋館がすばらしい。所有者の縁が縁につながり、今の美術館に落ち着いたそうで、運命の不思議を思いました。まずは建物を、それから新館にあるモネの睡蓮のコレクションをじっくり味わいたい。

どれも旅行の計画に組み込んで、わざわざ訪れてみたくなる、すてきな美術館ばかりでした。本書は、東海道新幹線のグリーン車にある「ひととき」という雑誌に連載していたそうで、旅に出たくなるのもなるほどとうなづけました。

|

« 「アーティスト」 | トップページ | 「ルート・アイリッシュ」 »

」カテゴリの記事

コメント

今晩は。cherry

赤瀬川さんの著作は私も大好きでけっこう読んでます。特に「超芸術トマソン」は昔大爆笑して読みました。ああいう路上観察って、今ではたくさんの人がやってるけど、赤瀬川さんが元祖ですよね。

美術に関する著作も面白いですよね。この本は未読ですが、なかなか興味深い内容ですね!
旅行に組み込んで訪れるのも楽しそう。次回の旅行の場所を選ぶ時の参考にもなりそうで、確かに「旅」と「アート」好きの人たちのための1冊ですね。trainart

投稿: ごみつ | 2012年4月23日 (月) 21時25分

個人が趣味で収集したコレクションを個人美術館のかたちで公開することは素晴らしいことです。ただし、本当に公開されているのなら・・・です。
なぜかというと、資産家が相続税逃れのため、美術館などの財団を設立しての節税手段としているケースが、実際に何件もあったのです。
今でも完全に公開されていない不透明な博物館、美術館はあるようで、税務当局とにらみ合いをしているようです。微妙な問題でもあるので、マスコミもまともに報道することを避けているようですが、土地成金の某企業の創業者とか、けっこう怪しいです。

投稿: ヌマンタ | 2012年4月24日 (火) 12時55分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは♪
以前、赤瀬川さんの本のことを書いたときに
ごみつさんもお好きだとおっしゃってましたね。
ほんとうに楽しい方ですよね。

この本も、いつもののらりくらりとした語り口ながら
ぴたりと来る表現に、思わず笑ったり、感心したり…楽しかったです。
アートに関する知識と鑑賞眼はさすが、と思いました。

雑誌の性格上、東海道新幹線を経由して行く美術館ばかりでしたが
(北海道、東北、北陸、九州はなかった)
旅行の機会には、是非心に留めておこうと思いました。
とりあえずは、東京、関東近郊の美術館から…かな?

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2012年4月24日 (火) 16時41分

☆ ヌマンタさま ☆
この本に紹介されている美術館は、
もちろん公開されているものばかりですが
ヌマンタさんがおっしゃるようなケースもあるのでしょうね。
美術館を運営するとなると、それなりに大変だと思いますが
アートが心の潤いではなく、投機や節税の対象になってしまったら
残念です。

投稿: ☆ ヌマンタさま ☆ | 2012年4月24日 (火) 16時49分

セレンさんこんにちは〜^^
ご無沙汰していました。
ちょうど今こういうのが欲しいなぁと思っていたような本です♡
関東近郊の美術館もそうですが、今年は東京以外の個人美術館に行ってみたいなと思っていました。GW前に是非購入して、この本を読んでふらっと行ってみたいなぁと思いました♪

投稿: アサ | 2012年4月25日 (水) 14時51分

☆ アサさま ☆
アサさん、こんにちは☆
コメントありがとうございます。

この本、読み物としてもおもしろく、充実した内容でした。
関東の美術館もたくさん紹介されているので
私もお休みの日にでも、ふら~っと日帰りで行ってみたいな
と思いました。
よかったら本屋さんでご覧になってみてください☆

投稿: ☆ アサさま ☆ | 2012年4月25日 (水) 18時26分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1151970/44993078

この記事へのトラックバック一覧です: 赤瀬川原平 「個人美術館の愉しみ」:

« 「アーティスト」 | トップページ | 「ルート・アイリッシュ」 »