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シネマ歌舞伎 「高野聖」

シネマ歌舞伎の「高野聖」(こうやひじり)を見に行きました。坂東玉三郎さんが演出する泉鏡花原作のシリーズ第3弾です。中村獅童さんが出演されるということもあり、楽しみにしていました。

シネマ歌舞伎は、歌舞伎の舞台公演をスクリーン上映したものですが、この「高野聖」はシネマ歌舞伎用に新たに舞台を撮りおろし、それに屋外でのロケーション映像を融合させています。舞台と映像がみごとに調和した、新しいタイプのエンターテイメントを楽しみました。

  Koyahijiri

若き修行僧の宗朝(中村獅童)は、飛騨から信濃への旅の途中、山中の狐家(ひとつや)にたどり着き、一夜の宿を頼みます。この家の女(坂東玉三郎)に案内され、宗朝が谷川で旅の汚れを落としていると、女が川に入ってきて背中を流し始めますが、宗朝はそれを振り切り慌てて川から上がります。

家につながれている馬をはじめ、猿、こうもり、蟇(ひき)…と女にまとわりつく、さまざまな獣たち。川からもどった宗朝に、「もとの体で帰らっしゃった」と驚く、家の親仁(中村歌六)。

翌朝、女に送り出されてからも、その寂しげな姿が心から離れない宗朝が、道端に腰をおろしてしばらく思い惑っていると、馬を売りに行った帰りの親仁が通りかかります。親仁の口から聞いたのは、女の悲しい過去と恐ろしい秘密でした…。

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妖艶怪奇な恐ろしい物語ですが、女の妖しい美しさと哀しい運命が、切々と心に響く作品でした。宗朝と女が沐浴する場面では、玉三郎さんの匂いたつような色香にたじたじにになるほど。美しくも官能的なシーンにどきどきしました。

宗朝に嬢様とよばれ、白桃の花に例えられた女は、「あなたの叔母さんくらいの年ですよ」と、少女のように羞じらいながら、微笑みます。わけあって男を獣に変え、またそうすることでしか生きてこれなかった女は、宗朝の曇りのないことばが、どんなにうれしかったことでしょう。

そのひとことを支えに、これから先いつまでも幸せに生きていくことができる… 同じ女性として身につまされる思いもあり、その気持ちにそっと寄り添い涙しました。そして、獅童さんが演じる宗朝の、仏の道をまっすぐに求める純粋さ、女をいたわる優しさが心に沁みました。

女のことが気がかりで、足を止めてしまう場面は、宗朝の人間らしさが感じられて好きです。その後、親仁の話を聞いて宗朝はようやく目が覚め、新しい一歩を踏み出すことができますが、親仁を演じる歌六さんの長い語りが味わい深く、聞きほれました。

  Koyahijiri_book  「高野聖・眉かくしの霊

泉鏡花の原作は80ページほどの短編なので、予習をかねて読んでおきました。古風な文章に最初はなかなかなじめませんでしたが、音読するような気持ちで読み進めると、リズムにのってすうっと入ってきました。

この幻想怪奇な世界をどのように表現するのだろう…と期待がふくらみましたが、シネマ歌舞伎はまさにうってつうけの手段だったと思います。玉三郎さんが演出する泉鏡花の世界は、「天守物語」「海神別荘」が近く再上映されるので、こちらも時間があれば見てみたいです。

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コメント

今晩は。

歌舞伎、引き続き楽しまれてるみたいですね!
舞台を撮影したシネマ歌舞伎の存在は知ってましたが、これはシネマ歌舞伎用に撮影された作品なんだ~。
舞台だけよりも、映像で楽しむ工夫がされている様で、面白いアイデアですね。

本当の舞台になかなか足を運べない方にとっても、歌舞伎との良い出会いになりそうです。shine

「高野聖」は私も読んだ事ないのですが、泉鏡花作品は、以前「婦系図」よ読もうとして挫折しているので、読みつらさがわかります!coldsweats01そうか~、音読してみると良いのかな~。

投稿: ごみつ | 2012年4月11日 (水) 02時28分

歌舞伎は観たことがありませんが、伝統の中にあって新しいことに
チャレンジしていく姿勢は見習うべきだと感じます。
お話を拝読していて面白くまとまった歌舞伎という感じがしました。

投稿: イザワ | 2012年4月11日 (水) 02時29分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは♪
最近は、オペラやミュージカルのライブ・ビューイングもあって
いろいろな楽しみ方ができるようになってきましたね。
シネマ歌舞伎も基本的にはライブ・ビューイングのようですが
高野聖は、舞台と映画を融合させた特殊な映像になっていました。

おっしゃるように、舞台と違って気軽に足を運べるのがいいですね。
演目がひとつで時間的にも短いので、思い立った時に
ふら~っと見れそうです。

泉鏡花は古典的で、ちょっと読みにくいですが
文章がリズミカルなので、講談師になったつもりで読むと
(声は出しませんが^^)入りやすかったです。是非お試しを。(笑)

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2012年4月11日 (水) 13時41分

☆ イザワさま ☆
歌舞伎というとちょっと敷居が高いイメージがありますが
イヤホンガイド(日・英とある)で解説が聞けたり
子ども向けの歌舞伎教室を開いたり、斬新な演目を演じたり
間口広く、また次の世代に向けて、すごく努力しているなあと感じます。
シネマ歌舞伎もその一環なのでしょうね。
華のある俳優さんたちによるすばらしいお芝居を拝見して
楽しい時間がすごせました。

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2012年4月11日 (水) 13時53分

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