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2012年5月

オスカー・ワイルド 「サロメ」

作家の平野啓一郎さんの新訳で、オスカー・ワイルドの戯曲、「サロメ」を読みました。5月31日から公演の、宮本亜門さん演出の「サロメ」の舞台の原作となるものですが、今までと全く違うサロメ像が描かれているというのと、平野さんの初めての翻訳ということで、読むのを楽しみにしていました。

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光文社古典新訳文庫 ワイルド著 平野啓一郎訳 「サロメ」

フランス語の原作から翻訳されたという本文は80ページほどと短く、今のことばで書かれているのでさらりと読めますが、その後に註、訳者あとがき、ワイルドがご専門の田中裕介先生の解説、宮本亜門さんのメッセージ… と続き、読み応えのある内容でした。

プレーンなセリフのひとつひとつにも、聖書の引用や、舞台となるパレスチナ地方の地理的・歴史的背景、さらにはワイルドのパーソナリティが関わっているので、解説を読むことは、作品を理解するうえで大いに助けになりました。

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私のサロメとの出会いは、若い頃に画集で見た、ギュスターヴ・モローの「出現」という作品です。

Salome_gustave_moreau ギュスターヴ・モロー 「出現」

作品の背景はよくわからなかったものの、退廃的で官能的、おどろおどろしい雰囲気にただ圧倒され、強烈な印象を残しました。これがサロメのイメージとして、私の中に長く定着することとなりました。

ですので、今回の舞台でサロメを多部未華子さんが演じると知った時には、なんとなく違和感を覚えたものです。多部さんの演技はこれまで見たことがなかったものの、その清楚なイメージがサロメの対極にあるように思えたからです。

Salome_beardsley_4 ビアズリーの挿絵

実際、これまで「サロメ」は世界各国で何度も舞台化、映画化されていますが、その多くは、モローが描くサロメや、ワイルドの原作に描かれているビアズリーの挿絵のイメージそのものの、”妖艶なるサロメ”として表現されてきたそうです。

宮本亜門さんは今回の舞台化に際して、これまでの既成概念を取り去って、改めて原作や文献的事実に立ち帰り、作り直そうと考えられたとのこと。それを理解された平野さんが、”生身の役者のことば”として表現されたのが、今回の翻訳だそうです。

新しい翻訳では、サロメは、純粋であるがゆえに無邪気な残酷さをもった少女として描かれています。セリフは子どもらしい無邪気さにあふれていて、文学作品という目で見ると、その軽さに少々面食らいますが、舞台になると、セリフのひとつひとつに命が吹き込まれて生き生きと輝くのだろうな、と思いました。

今のところ観に行く予定はないのですが、どんな舞台になるのか楽しみですね。

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「きみに読む物語」「ラースと、その彼女」「ラブ・アゲイン」

最近、「ドライヴ」「スーパー・チューズデー ~正義を売った日~」と続けて主演作を見てから、ライアン・ゴズリングが気になって、過去の作品を追いかけて、いくつか見てみました。作品によってカメレオンのように変貌するライアンに翻弄?されつつ、映画はそれぞれ魅力的で、どれも楽しめました。

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きみに読む物語 (The Notebook)

ニコラス・スパークスの同名のベストセラー小説を映画化した、2004年のヒット作。とってもスイートなラブストーリーです。最近はなかなかロマンティックな恋愛映画に出会えなかったのですが、この作品には満足。久しぶりに心地よく泣けました。^^

入院中の認知症の婦人のもとに通う男性が、彼女に話して聞かせる物語。それは1940年代、アメリカ南部の小さな町を舞台にした、良家の令嬢アリー(レイチェル・マクアダムス)と製材所で働く青年ノア(ライアン・ゴズリング)のラブストーリーでした…。

身分の違い、戦争、そしてライバルの出現… と二人の間に次々と立ちはだかる壁。ありがちな設定ながら、老婦人同様、先が気になってお話に引き込まれました。数々のロマンティックなシチュエーションも印象的で、この物語が今につながっていると知った時には、うれしい衝撃に打たれました。

みずみずしく、清潔感あふれる若い二人がなんとも魅力的。古風で奥ゆかしい恋が、なおのこと切なく、心に響きました。「ひとりの女性を愛し続けたことを誇りに思う。」という男性の冒頭のことばが、最後に改めて温かい余韻を残しました。

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ラースと、その彼女 (Lars and the Real Girl)

2007年に公開されたハートフルな人間ドラマです。小さな田舎町に住むラース(ライアン・ゴズリング)は、内気で純粋な心を持つ青年。ある日、隣家に住む兄夫婦に、ガールフレンドとして紹介したのは、ビアンカという名の等身大の人形でした…。かなり風変わりな設定ですが、私はこの作品、とっても気に入りました。

セラピストのアドバイスで、兄夫婦や町の人々は皆、ラースに話を合わせ、ビアンカに人間の女性として接します。最初は滑稽とも思えるのですが、誰ひとりとしてラースを傷つけない、小さな田舎町の、教会を中心とした善意あふれるコミュニティが心地よく、理想郷のように感じられました。

ビアンカが少しずつ町の人たちになじむにつれて、ラースの内面にやがて変化が訪れます。ビアンカはラースの心が作り出した、現実からの避難場所。ラースがその殻を破った時に、初めて大人としての一歩を踏み出すことができたのだと思います。さわやかなラストも印象的でした。

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ラブ・アゲイン (Crazy, Stupid, Love.)

2011年公開のロマンティック・コメディです。倦怠期を迎え、離婚の危機にあるキャル(スティーヴ・カレル)とエミリー(ジュリアン・ムーア)。気がつけばすっかりオヤジ化していたキャルを、バーで知り合った遊び人のジェイコブ(ライアン・ゴズリング)が、魅力的な男性へと改造します…。

オールスターキャストによる、楽しいラブストーリー。さえないキャルに思いをよせるベビーシッター、そのベビーシッターに恋するキャルの息子、プレイボーイのジェイコブが唯一口説き落とせないハンナ(エマ・ストーン)… 片思いの連鎖が、最後にはみんなハッピーにつながります。

ジュリアン・ムーアとマリサ・トメイ、大人の女性のかわいらしさが印象的でした。

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和素材で作る 焼菓子いろいろ

稲田多佳子さんのこの本を見つけてから、あんや抹茶、きび砂糖や黒砂糖など、和の素材を使った焼菓子を作るのが、私の中でちょっとしたブームになっています。

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やさしい気持ちでつくりたい ちょっと和風の焼き菓子レシピ

バターケーキやクッキー、タルトといった焼菓子から、ロールケーキやひんやりデザートまでと幅広く、レシピの数が多いので、必ずお気に入りが見つかる本です。こしあんとチョコ、抹茶とチョコなど、意外な素材の組み合わせもあって、興味がむくむくわいてきました。作った中から、いくつかご紹介させていただきますね。

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こしあんマーブルのスクエアケーキ
生地の一部を取り分けてこしあんを混ぜ、2つの生地をラフに混ぜて焼いて、マーブル模様に仕上げます。生地には卵白とアーモンドパウダーが入るので、フィナンシェのようなしっとりコクのある食感です。

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レモンと白あんのバターケーキ
生地にレモンの皮のすりおろしをたっぷり入れて、白あんを混ぜますが、いただくと白あんの味はほとんどわからず、しっとりした食感だけが残っていました。無印のフラワー型で焼いて、ハートに切り分けました。

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抹茶とチョコレートのマーブルスクエアケーキ
こしあんマーブルのスクエアケーキを、抹茶ととかしたチョコレートでアレンジしています。抹茶のおだやかな風合いに、チョコレートのビビッドな味がアクセントとなりました。色のコントラストも個性的で、とっても気に入りました。

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黒糖のスフレチーズケーキ
黒砂糖を使って作るチーズケーキは、太陽の恵みを感じる素朴な風合いが魅力。卵白をメレンゲに泡立てて加えるので、ふわふわスフレのような軽い食感です。

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こしあんとチョコレートのしっとりケーキ
小麦粉がほとんど入らない、しっとりふわふわなケーキ。私はスクエア型で焼きましたが、ココットで焼いてスプーンで取り分けてもいいですね。こしあんが入りますが、こちらもほとんど味はわからず、しっとりした食感だけが残りました。

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きび砂糖と黒糖のバターケーキ
オリジナルレシピではきび砂糖だけで作っていますが、量が足りなかったので黒糖を混ぜて二糖流?で作りました。これが大正解。2種類のお砂糖の、素朴なハーモニーが楽しめました。

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「ファミリー・ツリー」

ジョージ・クルーニー主演のハワイを舞台にしたハートフルな人間ドラマ、「ファミリー・ツリー」(The Descendants)を見ました。不慮のできごとをきっかけに、ばらばらになっていた家族が再び絆を取り戻すまでの物語。ハワイのおおらかな自然と音楽に包まれて、温かい気持ちになれるすてきな作品でした。

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ハワイ・オアフ島で生まれ育ったマット・キング(ジョージ・クルーニー)は、カウアイ島に先祖から受け継ぐ広大な原野を所有するも、自身は弁護士として堅実に暮らし、妻と2人の娘に囲まれて幸せな日々を送っている、と信じていました。

しかし妻がボート事故で意識不明の植物状態となったことで、状況は一変します。次女は情緒不安定となり、また寄宿学校から呼び寄せた長女からは妻が浮気をしていたという衝撃の事実を聞き、そのことで長女と妻の間が気まずくなっていたことを知ります。

一方、一族ではカウアイ島の土地の売却をめぐる話し合いが進んでいて、マットは決断を迫られていました。妻の浮気相手の行方を追って、家族とともにカウアイ島を訪れたマットは、売却予定の原野の風景を目に納め、ある決心を固めます…。

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家族のために仕事一筋にがんばってきたつもりが、気がつくと妻は自分との離婚を考えていて、家族はバラバラになっていた…。不測の事態に否応なしに家族と向き合うことになって右往左往する、そんな冴えないお父さんを演じるジョージ・クルーニーが新鮮で、ほほえましかったです。

マットをめぐる状況はどうみても深刻なのですが、ハワイの穏やかな風景と音楽に包まれると、なんとかなるような気がしてくるから不思議です。これまできちんと話をしてこなかったマットと長女が、いっしょに妻の浮気相手を探していくうちに、少しずつ距離を縮めていくところがすてきでした。

デリケートな一面をもつ長女(シャイリーン・ウッドリー)、おしゃまな次女(アマラ・ミラー)、そしていつの間にかすっかり家族の一員のようになっている長女のボーイフレンド(ニック・クラウス)もいい味を出していて、それぞれのキャラクターが魅力的でした。

そして、妻の浮気問題と土地の売却問題、一見関係のない2つのラインがひとつに交わる展開にうならされました。それが結果的に背中を押すこととなって、マットは大切なことに気づくのですから…。マットが浮気相手にする、小さな復讐も心憎かったです。^^ 

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ラストシーンで、マットたち3人がソファでくつろぎながら見ていたのは、なんと私の大好きなドキュメンタリー映画のMarch of the Penguins(皇帝ペンギン)! そしてこの黄色いハワイアンキルトは、お母さんが病室で使っていたもの。こういう何気ない描写に心がなごみました。

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池井戸潤 「下町ロケット」

今朝、日本各地で見られた日食、皆さんはご覧になりましたか? 東京は朝から曇りがちのお天気でかなりやきもきしましたが、金環日食の時間が近づくにつれてうす曇りになり、7時32分頃、一瞬でしたが、金色に輝くリングを見ることができました。すてきな一日のスタートとなりました。

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さて… 池井戸潤さんのベストセラー小説、「下町ロケット」を読みました。東京・大田区で小さな精密機械製造業を営む主人公が、所有しているロケットエンジンの技術特許を武器に大企業に挑み、ロケット打ち上げの夢を果たすまでの物語。昨年の直木賞受賞作です。

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かつて研究者としてロケット開発に携わっていた佃は、打ち上げ失敗の責任を取って辞職し、今は実家を継いで大田区にある従業員200人の佃製作所を経営しています。しかし、不況下で突然取引を停止されたり、いわれなき特許侵害訴訟を起こされたりと災難が続き、会社は厳しい経営状況にありました。

一方、大型ロケットの開発を進めていた帝国重工は、新型エンジンを開発するも、その最新技術の特許を既に佃製作所が取得していることを知ります。担当部長の財前は、佃製作所の窮状を知って、特許を買い取る申し出をしますが、佃はこれを断り、エンジンという形で供給したいと答えます。

なんとしてもロケットの全部品を自社で開発製造したい帝国重工は、企業調査を行った上で決めると佃に主張。厳しい評定でなんとか特許使用契約に持ち込みたい帝国重工に対し、佃製作所は最高の技術・製造水準を持つ中小企業のプライドで、この調査を受けて立ちます。

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もともと「プロジェクトX」のような、ものづくりにまつわるドラマが好きな私には、とても楽しめました。タイトルから、もっと泥くさい、小さな町工場の奮闘物語を想像していましたが、意外にも先端技術の知的財産(特許)をめぐる駆け引きに、スリリングな興奮を味わいました。

特許申請に不備があると、そこを衝いて難癖をつけられるケースがありますが、佃に知財に強い弁護士との出会いがあり、整備を進めておくことができた、という伏線があったことで、その後の展開にリアリティを感じました。

私が好きなのは、帝国重工の財前部長が契約を有利に進めるために、佃の工場を訪れ見学する場面。佃の申し出を断るつもりで出向いたのに、最先端の設備、研究開発部門の自由な雰囲気、ものづくりのたしかさ、チャレンジ精神にすっかり魅了され、帰る時には真剣に検討しようと決断します。

佃が特許使用契約ではなく、製品の形で提供する、と言い出した時には、他の社員同様、どうしてわざわざリスクを負って、そんなめんどうなことをするのか、と思いましたが、アイデアの切り売りではなく、製品としての品質にこだわることが、これまでの日本を支えてきたのだな…と気づかされました。

佃製作所も最初から社員が一丸となっていたわけではなく、理想を追い求める研究開発部門と、営業など実利を重視する部門との確執が、きちんと描けていてよかったです。技術力だけではロケットは飛ばせず… 結局は人と人との信頼関係が、プロジェクトを成功に導くのだろうな、と実感しました。

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「モナリザ・スマイル」

DVDで、ジュリア・ロバーツ主演のアメリカ東部の名門女子大を舞台にした青春ドラマ、「モナリザ・スマイル」(Mona Lisa Smile)を見ました。先日ジャクソン・ポロック展を見た後、この映画にポロックの作品が登場すると知って借りたのですが、見たら私好みのとてもすてきな作品でした。

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↑ 彼女たちの視線の先に、ポロックの作品があります。

1953年秋。西海岸から東部の名門ウェルズリー大学に赴任することになり、期待に胸おどらせる美術講師のキャサリン(ジュリア・ロバーツ)。しかしそこは旧態依然とした伝統の残る保守的な大学で、学生たちは結婚して家庭を守ることこそが一番の幸せと信じていました。

学生たちは優秀なだけに新任講師に手厳しく、キャサリンは完璧に予習をしてくる学生たちに、初日から徹底的に言い負かされてしまいます。しかし後にキャサリンは、教科書に載っていない現代美術を取り上げることで、学生たちに伝統にしばられず、自分で考え行動することの大切さを教えていきます…。

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西海岸から東部の伝統校に乗り込んでくる進歩的な講師という役どころに、ジュリア・ロバーツがぴったりはまっていました。そして、彼女と向き合う学生たちを若手女優たちがみずみずしく演じ、魅力的なハーモニーを奏でます。

母親が同窓会長で伝統を何より重んじるリーダーのベティ(キルスティン・ダンスト)、結婚とロースクール進学との狭間で悩むジョーン(ジュリア・スタイルズ)、恋愛に奔放なジゼル(マギー・ギレンホール)、容姿に自信がもてない内気なコニー(ジニファー・グッドウィン)。

最初は皆、リーダーのベティに逆らえずキャサリンに反抗的でしたが、キャサリンと接していくうちに、徐々に彼女の考え方に共感を覚え惹かれていきます。学生たちが自分の生き方を模索し、悩みながらも、最後にはそれぞれ”自分の意志”で進む道を決めていく姿に、すがすがしい感動を覚えました。

また、学生たちとの関わりの中で、キャサリン自身も自分を見つめ直します。型破りな授業が大学から問題視され、大学に残りたいならカリキュラムを守るようにと宣告されたキャサリンは、ある決断をします…。

ウェルズリー大学は、ヒラリー・クリントンの母校でもあります。進歩的で聡明、行動力のある女性ですが、元クリントン大統領のスキャンダルの時に見せた賢いふるまいには、ウェルズリーの教育が生きていたのだなと実感しました。

50年代の女性たちのクラシックなファッションや音楽、ローラ・アシュレイ風のインテリア、美しいニューイングランド地方の風景と伝統校のキャンパスなど、どれも魅力的でした。

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「モナリザ・スマイル」に先立って、「ポロック 2人だけのアトリエ」(Pollock)も見ました。こちらはエド・ハリスが監督、主演を務める、ポロックの半生を描いた作品。ポロック展を見たすぐ後だったので、ポロックのプライベートな横顔に触れることができて興味深かったです。

ポロックの恋人を演じたマーシャ・ゲイ・ハーデンはこの作品でアカデミー助演女優賞を受賞していますが、「モナリザ・スマイル」ではキャサリンの同僚役で出演しています。「モナリザ・スマイル」にポロック作品が登場するのは、そういうつながりもあったのかな?とふと思いました。

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五月花形歌舞伎 「西郷と豚姫」「紅葉狩」「女殺油地獄」

新橋演舞場で、五月花形歌舞伎 昼の部を観劇しました。演目は、「西郷と豚姫」「紅葉狩」「女殺油地獄」の3作です。

実は高校時代に学校の芸術鑑賞で初めて歌舞伎を見たのが、近松門左衛門の代表作「女殺油地獄」でした。当時は伝統芸能への敬意はあったものの”楽しむ”とまでは至らず… 時を経て、もう一度見直してみたくなりました。

今回は比較的、初級者向けの演目がそろっていたようで、この日も女子高生の団体が観に来ていて、華やいだ雰囲気でした。私にとっても、楽しめる舞台でした。

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西郷と豚姫
幕末の京都。そのふくよかな外見から豚姫とよばれ皆に慕われている揚屋の仲居お玉(中村翫雀)と、薩摩藩の重役 西郷吉之助(中村獅童)の切ない恋物語です。

翫雀さん演じるお玉さんの女性としてのかわいらしさ、いじらしさ、西郷を一心に思いながらもすっと身を引くかいがいしさが心に響きました。獅童さんはたっぷり綿を着こみ、まゆを太く描き込んで西郷を熱演していましたが、個人的には、シャープで粋な役の方が好きです。^^

新歌舞伎十八番の内 紅葉狩
余吾将軍平維茂(獅童)が戸隠山に紅葉狩りに訪れると、先に酒宴を催していた更科姫(中村福助)に招かれますが、実は姫の正体は鬼女。山神(片岡愛之助)からそれを告げられた維茂は、正体を顕した鬼女に立ち向かい、退治します。

幕が上がると一面の美しい紅葉! 正直、季節外れ感は否めませんでしたが、舞踏を中心とした華やかな舞台は私好みでした。維茂、更科姫の従者、侍女がひとりずつ次々と踊りを披露する場面は、バレエの舞台のよう。維茂の従者2人のコミカルな踊りが楽しかったです。

そしてなんといっても、福助さんの清楚な更科姫から、髪を振り乱して踊る鬼女へのすさまじい変貌ぶりが見応えがありました。姫の時から、踊りを見ながらうつらうつらする維茂の様子をじっと伺う、一瞬の魔の表情がおかしかったです。

女殺油地獄
河内屋の放蕩息子 与兵衛(愛之助)はトラブルを起こし、とうとう勘当されてしまいます。金の工面に困った与兵衛はなじみの油屋の女房 お吉(福助)のもとを訪れますが…。

勘当しながらも、与兵衛がお吉を頼って訪れるとわかっていて、こっそりお金を届けにくる母と継父の愛が心に沁みました。それなのに、人間の欲には限りがなく、追い詰められてお吉に衝動的な殺意を抱いてしまう与兵衛。人間の弱さを描いたドラマに引き込まれました。

見所はなんといっても与兵衛とお吉が油にまみれてもみ合うクライマックス。迫力ある舞台に息を止めて見入ってしまいました。油は、水にしては粘性があると思ったら、ふのりを使っているそうです。せっかくの衣装が油と血(を模したもの)でべたべたになってたいへん、と余計な心配をしてしまいました。^^;

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歌舞伎の雰囲気にも少しずつ慣れてきて、安いお席で気楽に楽しめるようになりました。来月は亀治郎さん、香川照之さんと息子の政明くんの襲名披露があるとのことで、しばらく(チケットが取れなくて)足を運ぶのは難しそうですが、これからますます歌舞伎の世界が活気づくのが楽しみです。

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天王洲 「T.Y. HARBOR BREWERY」

天王洲の運河沿いにあるアメリカン・レストラン、「T.Y. HARBOR BREWERY RESTAURANT & BAR」(ティー・ワイ・ハーバー ブルワリー)で休日のランチを楽しみました。古い倉庫を改装して作ったこのレストランは高い天井と水辺に面したテラスが魅力。地ビール工場も併設されています。

思い立ってふらりとでかけたら、この日は予約でいっぱいとのことでしたが、次の予約がある1時間20分までなら、ということで運よく入ることができました。運河の見える外のテラスで食事を楽しみました。

私たちは名物のハンバーガーをいただきました。ハンバーガーはパテの大きさが2種類あり、さらに好みで具を追加できます。地ビールのお店ですが、私はスパークリングウォーターとともにいただきました。この日は汗ばむくほどの陽気で、しゅわしゅわの冷たい水が気持ちよかったです。ハンバーガーによく合いました。

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私はレギュラーバーガーのSサイズのパテに、アボカドを追加しました。トマトと赤たまねぎ、レタスをはさみ、特製ソースをかけ、ほおばっていただきます。ケチャップをディップしながらつまむ、揚げたてのフレンチフライもおいしい。隣のベーカリーで焼いているバンは、少し甘めのブリオッシュ生地でした。

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こちらはMサイズのパテに、ベーコンとペッパージャック(チーズ)を追加。すごいボリュームです。@@

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(左) オープンエアでいただくハンバーガーは最高においしかったですが、何といっても水辺の風景が気持ちよかったです。運河では屋形船やボート、ジェットスキーが行き来し、自家用クルーザーを横付けにして、食事に来る方もいらっしゃいました。

(右) 隣のbreadworks(ブレッドワークス)という系列のベーカリーカフェで、パンを買っていきました。左奥のビール酵母を使ったというカンパーニュ風のパンが特に気に入りました。

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おなかがいっぱいになった後は、天王洲の運河沿いをぶらぶらとお散歩しました。(左)お店の前から橋を渡って… (右)対岸から見るお店の全景です。右側の倉庫がレストラン、左の小さな倉庫がベーカリーカフェ、手前に水上ラウンジが見えます。

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(左)天王洲のビル群 (右)ボードウォーク

運河沿いには他にもいくつかレストランがあり、ウェディングパーティをしているところもありました。天王洲というとビジネス街のイメージですが、近くには集合住宅も多く、お休みの日とあって、小さいお子さんのいるファミリーをたくさん見かけました。雲ひとつないいいお天気で、気持ちのよい散策となりました。

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「バトルシップ」

アメリカの大手玩具メーカー ハスブロー(Hasbro)が、「トランスフォーマー」シリーズに続いておくるSFアクション大作、「バトルシップ」(Battleship)を見ました。ユニバーサル映画100周年記念作品。ハワイを舞台に繰り広げられるエイリアンとのバトル、迫力ある海戦シーンを楽しみました。

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原案となったのがHasbroのボードゲームBATTLESHIPと知って、楽しみにしていた作品。これはアメリカに昔からあるポピュラーなゲームで、日本ではタカラから「レーダー作戦ゲーム」という名前で販売されています。我が家にもあって、10年くらい前はよく遊んでいました。

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↑はオールドスタイルバージョンですが、HasbroのHPを見ると、今はもっとかっこいいリアルなデザインになっていて、ビデオゲームも出ているようです。論理ゲームの一種で、ゲーム盤がなくても紙と鉛筆さえあれば自分で桝目を書いてできるので、私も小学生の頃よく遊んだ記憶があります。

さて、映画の方はといえば、ハワイ沖で各国の連合艦隊が大規模な軍事演習を行っていた時に、突如として正体不明のエイリアンの母船が出現し、攻撃をしかけてくる…というお話。米海軍の新人将校アレックス(テイラー・キッチュ)と、日本の海上自衛隊の指揮官ナガタ(浅野忠信)が団結して、エイリアンと戦います。

予告を見た時から荒唐無稽な設定というのは承知の上でしたし、冒頭のチキンブリトーにまつわる展開からB級感いっぱいでしたが…^^ 中盤、対エイリアンの海戦バトルが始まると、臨場感あふれる迫力ある映像でとっても楽しめました。

レーダーの効かないエイリアンとのバトルはまさに手探り。ターゲットの位置を”津波警告ブイ”によって設定していたり、攻撃するか否かを赤と緑のランプの点滅によって判断していたり… ボードゲームをものすごい拡大解釈してバーチャルに表現しているところに、思わずにやりとしてしまいました。

そして全ての船が破壊されて万事休す… というところで、なんとパールハーバーに停泊している戦艦ミズーリが登場。今どきこんなアナログな船は操縦できない、という若者たちに代わって、退役軍人のおじいちゃんたちが大活躍します。こういう展開も、アメリカらしくて泣かせます…。

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そして今回うれしかったのは、浅野忠信さんが主演のテイラー・キッシュと同じく、ほぼ主役級で活躍していたこと。アメリカに先駆けて日本で公開されたり、と多少商業的な戦略は見え隠れするものの^^ 素直にスカッと楽しめる作品でした。

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麻布十番 「EDOYA」の洋食 &おいしいおみやげ

麻布十番の老舗の洋食屋さん、「EDOYA」(エドヤ)でお昼をいただきました。定番のハンバーグと、私の好きなロールキャベツ、そしてごはんの代わりにオムライス、という洋食屋さんならではの裏技?を使い、シェアしていただきました。

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オムライスは、ラグビーボール形にまとめたケチャップライスにとろとろオムレツ、上にデミグラスソースがかかっています。ぎりぎり形をとどめている、といった感じのふわとろオムレツがおいしかったです。

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ロールキャベツが好きなので、勉強のため?ついオーダーしたくなります。お店によって、コンソメ味、クリーム味…といろいろありますが、こちらのお店のはトマト味のブイヨンで、私が作るのと似ています。大きくてボリュームたっぷりでした。

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デミグラスソースで軽く煮込んだハンバーグには、目玉焼きがのっています。全く焦げ目のついていないパーフェクトな目玉焼きが美しい。付け合せはにんじんのグラッセといんげんのソテー。和がらしを添えていただくのが、洋食屋さんならではの味わいです。

ロールキャベツとハンバーグが似ているので、かにクリームコロッケかポークジンジャーにしてもよかったかな…と後から思いましたが、どれも懐かしいお味でおいしくいただきました。

この後、麻布十番商店街でおいしいおみやげを買いました。

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大豆ペーストを使ったヘルシーな「nicoドーナツ」のドーナツです。素朴でナチュラルな雰囲気のドーナツはどれもおいしそうでしたが、迷いに迷って、抹茶チョコレート、メイプルバター、ごまミルクの3つを買いました。

細かく切って、3種類全部!少しずついただきましたが、どれも優しいお味がしておいしかったです。私は特にローストしたアーモンドをまぶした、メイプルバターが気に入りました。

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nicoドーナツのすぐお隣、「麻布かりんと」のかりんとうです。こちらもさんざん迷って、結局白胡麻かりんとと、野菜ミックスかりんとにしました。和テイストの袋がかわいいですが、中がジッパーバッグというのがうれしい心遣い。どちらも穏やかな甘さと香ばしさが楽しめました。

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横浜山手 洋館めぐり

横浜元町から小高い丘を登ったところにある山手地区は、明治の開港以来、外国人居住地となっていた場所。今も洋館や教会、学校、外国人墓地が点在する、異国情緒あふれるエリアとなっています。春の一日、このあたりを散策しながら洋館めぐりを楽しみました。

まずはJR石川町駅元町口からすぐ横の坂道を上って、イタリア山庭園にある2つの洋館を訪ね、その後山手本通りを外国人墓地の方に向かって歩きました。(山手西洋館HP

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ブラフ18番館
大正末期に建てられた外国人住宅で、その後カトリック山手教会の司祭館として使われました。内装は白壁にミントグリーンの窓枠がさわやかな雰囲気。当時の横浜家具が復元展示されています。

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外交官の家
明治の外交官 内田定槌氏の邸宅を、渋谷の南平台からこの地に移築復元したもの。設計者はJ.M.ガーデナー。建物は塔屋のあるアメリカ・ヴィクトリアン様式で、白壁に温かみのあるダークウッドの内装が落ち着いた雰囲気でした。

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ベーリック・ホール
貿易商B.R.ベリック氏の邸宅として、J.H.モーガンが設計しました。スパニッシュ様式の建物は、随所に取り入れられた幾何学模様の装飾が特徴的。広大なお屋敷は、一時期インターナショナルスクールの学生寮として使われていました。

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(左) エリスマン邸
現代建築の父とよばれるアントニン・レーモンドが設計した、貿易商エリスマン氏の邸宅。随所に取り入れられた直線的でモダンなデザイン、シンプルな美しさが目を惹きました。

(右) ティールームの「えの木てい」でひと休みしました。ショコラ・フランボアーズといちじくのタルト、どちらもおいしかったです。^^

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山手234番館
朝香吉蔵の設計による、外国人向け集合住宅です。中央の玄関ポーチに4つのドアがあり、かつては上下左右と同一形式の4戸に分かれていました。今はギャラリーや会議室として使われています。

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(左)山手資料館。この日はお休みでした。(右)カフェとレストランの山手十番館。

この先にもいくつか洋館がありますが、そろそろ疲れてきたので外国人墓地の横を通って丘を下り、中華街でお昼を食べて帰りました。ロマンティック気分いっぱいの、楽しい散策となりました。

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「別離」

「彼女が消えた浜辺」のアスガー・ファルハディ監督によるイラン映画、「別離」(Nader and Simin, A Separation)を見ました。今年のアカデミー賞とゴールデングローブ賞で外国語映画賞を受賞、ベルリン国際映画祭で主要3部門を独占受賞した話題作です。

「彼女が消えた~」と同様、イランの今を生きる人々の姿を通して、この国の社会背景や宗教(イスラム)との関わりを見ることができて、興味深かったです。離婚、教育、介護、格差といった万国共通の問題をからめつつ、サスペンスフルに展開していく人間ドラマに、最後までぐいぐいと引き込まれました。

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テヘランで教師として働くシミンは、11歳になる娘の将来を考え、国外へ移住する準備を進めていましたが、夫のナデルは、認知症の父を置いては行けないと反対。二人の離婚協議が進む中、シミンは家族を残して実家に帰ってしまいます。ナデルは父の介護のため、ラジエーという女性を雇います。

しかし、ある日ナデルが帰宅するとラジエーはいなく、父はベッドから落ちて気を失っていました。ナデルはもどったラジエーを厳しく問い詰め、乱暴に家から追い出しますが、その際に階段で転倒したのが原因で流産したと、後日ラジエー夫妻から訴えられます…。

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離婚協議のシーンから始まるこの作品、イスラムの慣習でスカーフをかぶってはいるものの、女性のシミンがナデルと同等に、自分の言い分を激しく主張しているのが、私の目には新鮮に映りました。イランの中間層では女性も教育を受けて社会進出し、男女間の格差はほとんどないと見受けられました。

実際、シミンやナデルを見ていると、子どもの教育に熱心で親の介護に悩む、私たち日本人と何ら変わらない夫婦の姿がありました。しかしある日、ナデルの生活にラジエーが入ってきたことで、私は異文化の世界に引き込まれた気がしました。

貧困層にいるラジエーは、失業している夫に代わって働くため、何時間もかけてナデルのもとに通ってきます。敬虔なイスラム教徒である彼女にとって、男性の介護をすることは体に触れることであり、教義に反すること。それは彼女を苦しめ、夫に打ち明けることもできません。生活を守るため、彼女は秘密を持ち続けます。

一方、ナデルも嘘をつきます。ラジエー夫妻から訴えられた時、彼は彼女が妊婦とは知らなかった、と主張します。もし知っていたとしたら、彼は(胎児を死なせた)殺人罪に問われてしまうからです。そしてナデルを守るため、娘のテルメーも嘘の証言をします。

ナデルやテルメーの嘘はわかるのですが、ラジエーがつく嘘の数々は、はてな?と首をかしげたくなることもしばしばでした。この違和感は、「彼女が消えた浜辺」を見た時にも感じたものですが、それは私たちがイスラムの教えになじみがない、ということから来ているように思いました。

最終的にはシミンがラジエー夫妻に示談金を払うことで話をつけ、これで一件落着… と思いきや、ここでも信仰という大きな壁が立ちふさがり、大どんでんがえしが起こります。

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脚本のみごとさにうなりながら、神なる存在を心から求める人たちを、がんじがらめにしてしまう信仰の重さをふと考えてしまいました。

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根津美術館 「KORIN展」

青山の根津美術館で開催中の「KORIN展 国宝「燕子花図」とメトロポリタン美術館所蔵「八橋図」」(~5月20日まで)を見に行きました。昨年、震災の影響で延期となり、一年遅れで開催の運びとなった特別展です。

根津美術館が所蔵する国宝「燕子花図屏風」は、例年カキツバタの季節に合わせて公開されますが、今回はニューヨークのメトロポリタン美術館所蔵の「八橋図屏風」が来日し、併せて公開されるというので楽しみにしていました。尾形光琳の2つのカキツバタが一堂に展示されるのは100年ぶりとのことです。

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尾形光琳が「燕子花図屏風」を描いたのは40代半ば、その10年後に同じテーマで伊勢物語に登場する橋を加え、「八橋図屏風」を描いたとされています。どちらも美術の教科書?などでおなじみの光琳の代表作品ですが、実際に目にすると、ほんもののもつ輝きに圧倒される思いがしました。

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燕子花図屏風(右隻)

「燕子花図屏風」に使われている色は、金地に群青と緑青のみ。絵の具がぼってりと乗り、輪郭は描かれていませんが、花びらの一枚一枚、葉の一枚一枚が、みごとに浮かび上がって見えました。離れて見ると、奥行きも感じられます。

目を凝らしても下絵の線はないようだけど、迷いなく描かれているのがすごい、と思いましたら、後から、型紙を使って描かれていると知りました。図案化されたシンプルなカキツバタは、連続することで軽快なリズムを作り出しています。今みても新鮮な、洗練されたデザインだと思いました。

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八橋図屏風(右隻)

今回来日した「八橋図屏風」は、構図は「燕子花図屏風」と似ていますが、輪郭の線や花びらのグラデーションなど、花のひとつひとつが、より繊細に描かれていました。そして、右上から左下にかけて大胆に横断する八橋が、稲妻のような鮮烈な印象を与えていました。

屏風なのでパタパタと交互に折れて展示されていますが、右側から見ると橋の横のラインだけが、左側から見ると橋の斜めのラインだけが見えるのが、遊び心が感じられておもしろかったです。

このほか、「夏草図屏風」「四季草花図屏風」は、今でいうところのボタニカルアートでしょうか。季節の植物が写実的に細密に描かれていて、見入ってしまいました。また、酒井抱一が光琳の原画を元に描いたという「青楓朱楓図屏風」の大胆な構図、春秋の楓が競演する美しさに息を呑みました。

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KORIN展ほか展示室を見た後は、外に出てお庭を散策しました。

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4つのお茶室を有する広大な日本庭園は、折りしも今が新緑の季節。迷路のように入り組んだ散歩道を気の向くままに歩き進むと、きらきら輝く緑が目に鮮やかでした。つつじや藤も、今がちょうど見ごろです。

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そして池には、今見た屏風から飛び出したかのような、みごとなカキツバタが咲いていて、絵を見た感動が、再びよみがえりました。まだまだつぼみがたくさんあったので、会期中はセットで楽しめそうですね。

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青山 「カフェ ラントマン」

青山通りのAo(紀ノ国屋の入っているビル)4階にあるオーストリア料理のお店、「カフェ ラントマン」(CAFE LANDTMANN)でお昼をいただきました。ウィーンに本店のある老舗カフェの雰囲気と街の眺望、おいしいお料理を楽しみました。

私たちは、週末のスープランチとスパゲティランチをそれぞれいただきました。

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スープランチには、こんなすてきな前菜の盛り合わせがついていました。ハムをくるんとまいた中にはダイスに切った野菜をマヨネーズであえたサラダ。このほか、スモークサーモンとホースラディッシュ、グリーンサラダ、ゆでたポテトのバルサミコがけ。いろいろなお味が楽しめました。

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こちらはスパゲティランチについていたスープです。かぼちゃのポタージュは濃厚でなめらかな優しいお味。ほんの少したらしたバルサミコの黒とわずかな酸味が、いいアクセントになっていました。

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パンはカイザーでした。日本向けにアレンジされているのか?ふかふかと柔らかかったですが、ほのかに温かくおいしかったです。

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スープランチは4種類の中から選びます。私は定番のグーラッシュをいただきました。パプリカを効かせた、ほんのりスパイシーな牛肉のスープ。小さくカットされた牛肉はほろほろに柔らかく、じっくり煮込んだスープのしみじみとした味わいが体に染み入るようでした。

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スパゲティランチは、ベーコンとキャベツのスパゲティ。キャベツと豚肉の煮込みは私も作りますが、それをパスタにあわせるというアイデアが新鮮でした。キャベツが煮くずれるほどに柔らかく、パスタによくからみます。バターの濃厚な風味がどっしりとした味わい。イタリアンのパスタとは一味違うおいしさでした。

食後のコーヒーも深煎りでおいしく、大満足のランチとなりました。

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「オレンジと太陽」

先日見た「ルート・アイリッシュ」のケン・ローチ監督の息子、ジム・ローチ監督による初の長編映画、「オレンジと太陽」(Oranges and Sunshine)を見ました。

原作は、マーガレット・ハンフリーズ著の「からのゆりかご 大英帝国の迷い子たち」(Empty Cradles)。イギリス政府が1970年代まで密かに行っていたオーストラリアへの強制児童移民の実態を、彼らの家族を探す活動を続けてきたソーシャルワーカー、マーガレットの姿を通して描いた、実話に基づく作品です。

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ソーシャルワーカーのマーガレット(エミリー・ワトソン)は、ある女性から「私が誰か調べて欲しい」と依頼されます。彼女は家族と離れて養護施設に預けられた後、子どもばかり大きな船に乗せられて、”オレンジと太陽の国”オーストラリアに送られた、というのです。

最初は半信半疑だったマーガレットは、偶然同じ話を他の施設出身者からも聞き、独自に調査を始めます。そこで明らかになったのは、イギリス政府が福祉の名のもとに、13万人もの施設の子どもたちをオーストラリアに強制移民させていたという事実。子どもたちを待っていたのは過酷な労働や虐待でした。

調査のためオーストラリアに渡ったマーガレットは、自分が何者か知りたい、家族と会いたいと願うかつての孤児たちの声に耳を傾け、イギリスとオーストラリアを往復し、時に国家権力や宗教団体の妨害を受けながら、幾千もの家族を結びつけるため奮闘します…。

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イギリスの強制児童移民のことは、この映画を通じて初めて知りました。1986年にマーガレットが動き始め、その後メディアに注目されるようになるまで、この国家的犯罪は英豪両政府によって封印されていたのです。

なぜ児童移民が行われたのか、理由は明らかにされていませんが、植民地における人口政策など、そこには両政府の思惑があったようです。この映画の制作が進む中、2009年にオーストラリア首相が、2010年にイギリス首相がようやく事実を認め、正式に謝罪しました。

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マーガレットを訪れる元孤児たちの告白はどれも衝撃的でした。悲愴な体験もさることながら、自分が何者かわからない、というのがどれほど不安なことか、とても想像ができません。大の男が子どものように「お母さんに会いたい」と泣きじゃくる姿に、胸がつぶれる思いがしました。

そして、家族の理解を得て、身の危険に脅かされながらも、元孤児たちの記録を丹念にたどって家族を見つけ出す、マーガレットの粘り強い仕事ぶりと勇気ある行動に心を打たれました。マーガレットの真摯な働きに、元孤児たちは全幅の信頼を寄せるようになります。

マーガレットと元孤児であるレンが、かつて神父たちによる虐待が日常的に行われていた、人里離れた荒野の教会を訪れる場面には緊張が走りました。本来は心のよりどころとなるべき信仰の場で、秘密裡に行われていた悪魔の所業。声にならない怒りに震えました。

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今も児童移民の家族を探す活動を続けているというマーガレット。作品のテーマは重いですが、見終わった後には不思議と気持ちは晴れ晴れとし、深い感動に包まれました。

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