根津美術館 「KORIN展」
青山の根津美術館で開催中の「KORIN展 国宝「燕子花図」とメトロポリタン美術館所蔵「八橋図」」(~5月20日まで)を見に行きました。昨年、震災の影響で延期となり、一年遅れで開催の運びとなった特別展です。
根津美術館が所蔵する国宝「燕子花図屏風」は、例年カキツバタの季節に合わせて公開されますが、今回はニューヨークのメトロポリタン美術館所蔵の「八橋図屏風」が来日し、併せて公開されるというので楽しみにしていました。尾形光琳の2つのカキツバタが一堂に展示されるのは100年ぶりとのことです。
尾形光琳が「燕子花図屏風」を描いたのは40代半ば、その10年後に同じテーマで伊勢物語に登場する橋を加え、「八橋図屏風」を描いたとされています。どちらも美術の教科書?などでおなじみの光琳の代表作品ですが、実際に目にすると、ほんもののもつ輝きに圧倒される思いがしました。
燕子花図屏風(右隻)
「燕子花図屏風」に使われている色は、金地に群青と緑青のみ。絵の具がぼってりと乗り、輪郭は描かれていませんが、花びらの一枚一枚、葉の一枚一枚が、みごとに浮かび上がって見えました。離れて見ると、奥行きも感じられます。
目を凝らしても下絵の線はないようだけど、迷いなく描かれているのがすごい、と思いましたら、後から、型紙を使って描かれていると知りました。図案化されたシンプルなカキツバタは、連続することで軽快なリズムを作り出しています。今みても新鮮な、洗練されたデザインだと思いました。
八橋図屏風(右隻)
今回来日した「八橋図屏風」は、構図は「燕子花図屏風」と似ていますが、輪郭の線や花びらのグラデーションなど、花のひとつひとつが、より繊細に描かれていました。そして、右上から左下にかけて大胆に横断する八橋が、稲妻のような鮮烈な印象を与えていました。
屏風なのでパタパタと交互に折れて展示されていますが、右側から見ると橋の横のラインだけが、左側から見ると橋の斜めのラインだけが見えるのが、遊び心が感じられておもしろかったです。
このほか、「夏草図屏風」「四季草花図屏風」は、今でいうところのボタニカルアートでしょうか。季節の植物が写実的に細密に描かれていて、見入ってしまいました。また、酒井抱一が光琳の原画を元に描いたという「青楓朱楓図屏風」の大胆な構図、春秋の楓が競演する美しさに息を呑みました。
KORIN展ほか展示室を見た後は、外に出てお庭を散策しました。
4つのお茶室を有する広大な日本庭園は、折りしも今が新緑の季節。迷路のように入り組んだ散歩道を気の向くままに歩き進むと、きらきら輝く緑が目に鮮やかでした。つつじや藤も、今がちょうど見ごろです。
そして池には、今見た屏風から飛び出したかのような、みごとなカキツバタが咲いていて、絵を見た感動が、再びよみがえりました。まだまだつぼみがたくさんあったので、会期中はセットで楽しめそうですね。
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コメント
デザイン的にも優れているという点が興味深く、
海外でも注目されるのが分かる優れた絵画ですね。
北斎も印象派のルノワール、モネやゴッホ等に
影響を与えたといわれていますが、こちらも
デザイン的な感じがしています。
日本人の感覚って素晴らしいですね^^v
投稿: イザワ | 2012年5月 7日 (月) 01時06分
こんばんは!
尾形光琳、見にいかれたんですね!
この季節にはぴったりの展示ですね。琳派って、もともととても人気が高いですが、最近また注目されてて、本もたくさん出版されてます。
有名な作品を実際に目の前にすると、不思議な感動がありますよね。カキツバタ、本当にきれい。
お庭の本物のお花もきれいだな~。お庭、風情がありますね。ステキ。
私は今日、新国立美術館のセザンヌに行ってきました。明日から連勤が続くのですが、時間を見て記事にしてみたいと思ってます。
投稿: ごみつ | 2012年5月 7日 (月) 01時07分
セレンさん、
こんにちは。
屏風とお庭のコラボがとても素敵ですねー♪
私は昨夜は隅田川に『東京ホタル』を見に行って来ましたよ。
といっても本物のホタルではなく、水に触れるとひかるというLEDの特殊なライトを流すイベントでしたが。昼間も夜も、散歩しながら自然を愛でる季節になってきましたね。
投稿: アサ | 2012年5月 7日 (月) 10時04分
☆ イザワさま ☆
無駄を削ぎ落とした、大胆でシンプルな表現の中に
伝統に裏打ちされた技と美しさが伝わってきました。
やはりほんとうにいいものは、時代や国境を越えて
人の心に訴える力を持っているのでしょうね。
こういうすばらしい作品に出会うと、
日本人として誇らしくなります。
投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2012年5月 7日 (月) 18時23分
☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
カキツバタの今の季節にぴったりのすてきな企画展でした。
尾形光琳、今、人気があるのですね。
日本画は私はあまりなじみがないのですが
大胆にてシンプルな美しさは、茶の湯や石庭にも通じる
潔さが感じられて、心に響きました。
それぞれの作品ともすばらしいですが
2つ並ぶと、10年の年月の差を見ることができて興味深かったです。
新緑の中、お庭の散策も気持ちよかったですよ。
ごみつさんは、セザンヌ展に行かれたのですね~☆
私も時間を作って見に行きたいなあ、と思っています。
ご報告、楽しみにしていますね。
投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2012年5月 7日 (月) 18時34分
☆ アサさま ☆
こんにちは。
屏風とお庭と、どちらのカキツバタもとても美しかったです。
アサさんは、東京ホタルを見に行かれたのですね~☆
私は新聞で見ましたが、大規模なライトアップで
きっと幻想的できれいだったでしょうね。
すてきな時間をすごされましたね☆
これから暖かくなると、屋外のイベントも楽しみですね。
投稿: ☆ アサさま ☆ | 2012年5月 7日 (月) 18時45分
先日、NHKの「日曜美術館」で紹介されているのを見ました。
お庭も素敵ですねぇ。
やっぱり、東京はいいなぁ~。
投稿: ryoko | 2012年5月 8日 (火) 23時05分
☆ ryokoさま ☆
KORIN展、日曜美術館で紹介されていたのですね~☆
見損ねてしまって残念です。
事前に解説を聞いておいたら、もっといろいろな視点で
見ることができたかもしれませんが…。
根津美術館、膨大なコレクションの中から
季節に合わせて展示を変えているので
お庭とともに、四季折々で楽しめるのがすてきですね。
風情ある美しいお庭は広々として、都心にいることを
忘れてしまいそうでした。
投稿: ☆ ryokoさま ☆ | 2012年5月 9日 (水) 08時27分