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オスカー・ワイルド 「サロメ」

作家の平野啓一郎さんの新訳で、オスカー・ワイルドの戯曲、「サロメ」を読みました。5月31日から公演の、宮本亜門さん演出の「サロメ」の舞台の原作となるものですが、今までと全く違うサロメ像が描かれているというのと、平野さんの初めての翻訳ということで、読むのを楽しみにしていました。

Salome

光文社古典新訳文庫 ワイルド著 平野啓一郎訳 「サロメ」

フランス語の原作から翻訳されたという本文は80ページほどと短く、今のことばで書かれているのでさらりと読めますが、その後に註、訳者あとがき、ワイルドがご専門の田中裕介先生の解説、宮本亜門さんのメッセージ… と続き、読み応えのある内容でした。

プレーンなセリフのひとつひとつにも、聖書の引用や、舞台となるパレスチナ地方の地理的・歴史的背景、さらにはワイルドのパーソナリティが関わっているので、解説を読むことは、作品を理解するうえで大いに助けになりました。

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私のサロメとの出会いは、若い頃に画集で見た、ギュスターヴ・モローの「出現」という作品です。

Salome_gustave_moreau ギュスターヴ・モロー 「出現」

作品の背景はよくわからなかったものの、退廃的で官能的、おどろおどろしい雰囲気にただ圧倒され、強烈な印象を残しました。これがサロメのイメージとして、私の中に長く定着することとなりました。

ですので、今回の舞台でサロメを多部未華子さんが演じると知った時には、なんとなく違和感を覚えたものです。多部さんの演技はこれまで見たことがなかったものの、その清楚なイメージがサロメの対極にあるように思えたからです。

Salome_beardsley_4 ビアズリーの挿絵

実際、これまで「サロメ」は世界各国で何度も舞台化、映画化されていますが、その多くは、モローが描くサロメや、ワイルドの原作に描かれているビアズリーの挿絵のイメージそのものの、”妖艶なるサロメ”として表現されてきたそうです。

宮本亜門さんは今回の舞台化に際して、これまでの既成概念を取り去って、改めて原作や文献的事実に立ち帰り、作り直そうと考えられたとのこと。それを理解された平野さんが、”生身の役者のことば”として表現されたのが、今回の翻訳だそうです。

新しい翻訳では、サロメは、純粋であるがゆえに無邪気な残酷さをもった少女として描かれています。セリフは子どもらしい無邪気さにあふれていて、文学作品という目で見ると、その軽さに少々面食らいますが、舞台になると、セリフのひとつひとつに命が吹き込まれて生き生きと輝くのだろうな、と思いました。

今のところ観に行く予定はないのですが、どんな舞台になるのか楽しみですね。

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コメント

サロメですか・・・たしか中学の時に読んで、こんな女性が身近にいたら困るなァと思ったことしか思い出せません。もう一度読み返してみたいですね。
ちなみに今朝のNHKの番組のなかで、その多部とかいう女優さんがサロメの舞台を演じると紹介されていましたね。朝食をとりながらの、流し観でしたが清楚そうな感じで妖艶さには届かないように思え、本当にサロメを演じられるのか、ちょっと疑問に思いました。でも、女の子って変わりますからねぇ・・・うかつなことは言えませんね。

投稿: ヌマンタ | 2012年5月30日 (水) 17時40分

多部未華子さんのイメージとのギャップを敢えて、狙ったのかも
しれませんね。
多部未華子さん、以前撮影のチャンスがあったのですが、
実現しなかった女優さんです。
それ以来、注目している女優さんの一人です^^
(勝手にですが(笑))

投稿: イザワ | 2012年5月31日 (木) 01時06分

☆ ヌマンタさま ☆
ヌマンタさんもサロメを読まれたのですね。
おそらく岩波版でしょうか。
少女の清らかさと、内面の残酷さ。そのギャップが
本人も意識しないままに、男性を惑わせてしまう?のでしょうね。
たしかにこういう女性が身近にいたら恐いですね。^^

そして多部未華子さん、朝のTVで紹介されていたのですね。
清潔感のあるかわいらしい女優さんで、私も好感を持っていましたが
どんなサロメを演じられるのか、気になります。
彼女にとってもきっと大きなチャレンジなのでしょうね。

投稿: ☆ ヌマンタさま ☆ | 2012年5月31日 (木) 17時49分

☆ イザワさま ☆
多部未華子さん、私も最初にお話をうかがった時は意外に思いましたが
宮本亜門さんのメッセージを拝読して、彼女が起用された理由が
納得できました。どんな風に演じられるのか、気になりますね。
イザワさんは、以前撮影のお話があったのですね。
清潔感のある、かわいらしい女優さんですね。

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2012年5月31日 (木) 17時54分

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