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池井戸潤 「下町ロケット」

今朝、日本各地で見られた日食、皆さんはご覧になりましたか? 東京は朝から曇りがちのお天気でかなりやきもきしましたが、金環日食の時間が近づくにつれてうす曇りになり、7時32分頃、一瞬でしたが、金色に輝くリングを見ることができました。すてきな一日のスタートとなりました。

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さて… 池井戸潤さんのベストセラー小説、「下町ロケット」を読みました。東京・大田区で小さな精密機械製造業を営む主人公が、所有しているロケットエンジンの技術特許を武器に大企業に挑み、ロケット打ち上げの夢を果たすまでの物語。昨年の直木賞受賞作です。

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かつて研究者としてロケット開発に携わっていた佃は、打ち上げ失敗の責任を取って辞職し、今は実家を継いで大田区にある従業員200人の佃製作所を経営しています。しかし、不況下で突然取引を停止されたり、いわれなき特許侵害訴訟を起こされたりと災難が続き、会社は厳しい経営状況にありました。

一方、大型ロケットの開発を進めていた帝国重工は、新型エンジンを開発するも、その最新技術の特許を既に佃製作所が取得していることを知ります。担当部長の財前は、佃製作所の窮状を知って、特許を買い取る申し出をしますが、佃はこれを断り、エンジンという形で供給したいと答えます。

なんとしてもロケットの全部品を自社で開発製造したい帝国重工は、企業調査を行った上で決めると佃に主張。厳しい評定でなんとか特許使用契約に持ち込みたい帝国重工に対し、佃製作所は最高の技術・製造水準を持つ中小企業のプライドで、この調査を受けて立ちます。

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もともと「プロジェクトX」のような、ものづくりにまつわるドラマが好きな私には、とても楽しめました。タイトルから、もっと泥くさい、小さな町工場の奮闘物語を想像していましたが、意外にも先端技術の知的財産(特許)をめぐる駆け引きに、スリリングな興奮を味わいました。

特許申請に不備があると、そこを衝いて難癖をつけられるケースがありますが、佃に知財に強い弁護士との出会いがあり、整備を進めておくことができた、という伏線があったことで、その後の展開にリアリティを感じました。

私が好きなのは、帝国重工の財前部長が契約を有利に進めるために、佃の工場を訪れ見学する場面。佃の申し出を断るつもりで出向いたのに、最先端の設備、研究開発部門の自由な雰囲気、ものづくりのたしかさ、チャレンジ精神にすっかり魅了され、帰る時には真剣に検討しようと決断します。

佃が特許使用契約ではなく、製品の形で提供する、と言い出した時には、他の社員同様、どうしてわざわざリスクを負って、そんなめんどうなことをするのか、と思いましたが、アイデアの切り売りではなく、製品としての品質にこだわることが、これまでの日本を支えてきたのだな…と気づかされました。

佃製作所も最初から社員が一丸となっていたわけではなく、理想を追い求める研究開発部門と、営業など実利を重視する部門との確執が、きちんと描けていてよかったです。技術力だけではロケットは飛ばせず… 結局は人と人との信頼関係が、プロジェクトを成功に導くのだろうな、と実感しました。

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コメント

私事ですが、うちの事務所には大田区から川崎にかけての工業地帯にある町工場を十数件クライアントとしてきました。ですが、今では片手で数えて指があまり惨状です。
町工場をつぶしたのは銀行です。利益が出ていようといまいと、町工場をつぶして、そこのマンションを建てる。それが銀行の方針であったようです。
金融庁の指導とか言って逃げ口上を打っていましたが、工場の現場をみたこともなく、その技術が日本の製造業を支えてきた事実も知ろうとせず、ただ帳面の帳尻だけを見て、町工場をつぶしてきたのが日本の銀行です。
国際競争力がまったくない、お公家育ちの銀行をつぶさず、優れた技術で日本の製造業を支えてきた町工場をつぶしたツケは、いずれ強烈に跳ね返ってくると思います。

投稿: ヌマンタ | 2012年5月21日 (月) 13時01分

今晩は!

金環食はね~、私は見れませんでした。
朝、早いので、基本的にパスモードだったのですが、やっぱり見れば良かったな~って後悔しています。あと300年も生きられないし。
セレンさん宅では見られて良かったですね。happy01

「下町ロケット」はベストセラーになりましたよね。私も「プロジェクトX」っぽいお話は大好きなのでこの本も楽しめそうです。文庫になったら読んでみようかな!book

投稿: ごみつ | 2012年5月22日 (火) 00時09分

セレンさんこんにちは^^
昨日の金環日食は私も自宅のベランダから観察する事ができました。
大分前から楽しみにしていたので、かけ始めの6時30分ころから外に出ては入ってのくり返しをしてしまいました。
金環の瞬間は本当に神秘的で幻想的でしたね。
今日は分厚い雲と冷たい雨ですが、昨日はかろうじて持ちこたえてくれて本当に良かったです。

下町ロケット、読みたい読みたいと思っていて後回しにしているうちに忘れてしまっていました。面白そうな話のようですね♪私も今度手にとってみようと思います。

投稿: アサ | 2012年5月22日 (火) 10時47分

☆ ヌマンタさま ☆
こんにちは。
ヌマンタさんは、工場地帯の会社とお仕事のつながりがあるのですね。

この本の作者、池井戸潤さんはもとは銀行員だった方で、この作品にも
中小企業が訴訟騒ぎに巻き込まれて一番お金が必要なときに融資を渋り
訴訟が和解(実質的には勝訴)になるとまた近づいてくる
銀行の身勝手な姿が描かれています。
実際、特許や技術の可能性を専門的な立場から評価できる銀行は
ほとんどないそうで、表面的な帳簿の部分しか見ずに
リスクを回避することしか考えていないのでしょうね。
銀行業務にも、より専門性が必要なのでは、と思いました。
小説では、ベンチャーの投資家が登場し、会社は無事
融資が受けられますが、こういう正当な評価ができるところが
もっとたくさん出てくるといいですね。

投稿: ☆ ヌマンタさま ☆ | 2012年5月22日 (火) 17時33分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
ごみつさんは金冠日食、ご覧にならなかったのですね。
朝早かったですし、曇りの予報で見れるかどうかも
わからなかったですしね…。
私は朝起きたときには半ばあきらめモードだっただけに
直前になってうす曇りになった時には感激しました。
一瞬でしたが貴重な体験をしましたよ。

「下町ロケット」エンターテイメント性もあって、おもしろかったです。
中小企業がよくて大企業が悪者、という単純な図式でなく
それぞれのいいところがちゃんと描けていたのがよかったです。
やっぱり結局は「人」が財産だな…とも思いました。
機会がありましたら、読んでみてください☆

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2012年5月22日 (火) 17時46分

☆ アサさま ☆
こんにちは♪
アサさんも昨日は金冠日食をご覧になったのですね。
私も今日になって、ほんとうに昨日でよかった!と思いました。
朝から曇りがちで、かなりやきもきしましたが
その分スリリング?で感激もひとしおだったかもしれません。^^
金冠は私は一瞬しか見れなかったのですが
太陽が刻々と変わっていく姿が神秘的でした。

「下町ロケット」は軽く楽しめて、とてもおもしろかったです。
読後感がさわやかで、すがすがしい気持ちになりました。
よかったら是非、お読みになってみてください☆

投稿: ☆ アサさま ☆ | 2012年5月22日 (火) 18時00分

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