「だれもがクジラを愛してる。」
ドリュー・バリモア主演の映画、「だれもがクジラを愛してる。」(Big Miracle)を見ました。1988年10月、アラスカ沖で氷に閉じ込められてしまったクジラの家族の救出劇を、この時取材に関わったジャーナリストの著作をもとに映画化したヒューマンドラマです。
発端は、アラスカのローカルTVで放送された小さなニュースでした。
群れからはぐれたクジラの親子3頭が北極海を覆った厚い氷に閉じ込められ、出られなくなってしまったのです。クジラはわずかに開いた氷の穴から時折顔を出しては呼吸しますが、この寒さでは氷がふさがるのは時間の問題。肺呼吸のクジラは氷の下を何キロも泳いで脱出することはできません。
原住民のイヌピアトに言わせれば、食べてしまうのが一番手っ取り早い。しかしグリーンピースの活動家レイチェル(ドリュー・バリモア)がメディアで騒ぎ始めたことで、彼らは食べるに食べられない状況となり、世論を配慮して救出に協力することを決めます。
レイチェルの「クジラを救いたい」という狂信的で独善ともいえる思いは、やがて関係者の「これを利用して、自然保護というイメージアップを図りたい」という思惑とぶつかり、現地の石油採掘会社や知事、さらには大統領まで動かし、最終的には当時冷戦関係にあったソ連に救出用の砕氷船を要請する話にまで発展します…。
野生生物が大好きな私ですが、グリーンピースの活動については、ヒステリックで独善的と思うこともしばしばです。ただ、目の前に困っているクジラを見てしまった以上、助けないわけにはいかない、という気持ちもよくわかります。
きっかけは打算や目論見であっても、そしてクジラを3頭助けることが即自然保護につながるわけではなくても、動物の小さな命に人々の心や国さえもひとつにする力を持っていること、そして国が乗り出さなくては太刀打ちできないほどの極寒の自然の驚異も感じ取ることができました。
戦争するのに理由がいくらでも作れるように、仲直りだってほんの小さな理由やきっかけがあればできるのかもしれない… そんなことをふと思える場面もありました。(だからこそ、オリンピックといったスポーツの世界大会があるのでしょうね。)
↑ クジラが息継ぎしながら移動できるよう、穴の架け橋を掘り続ける人たち
極寒の小さな田舎町に、世界中から取材陣がやってきて、てんやわんやのお祭り騒ぎに。クジラは無事に脱出し、宴の後、地元イヌピアトの少年はちょっぴり寂しそうでしたが、彼にとってこの救出劇は、いつまでも心に残るすてきな思い出になることでしょう。
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(2017.01.12)
- My Favorite Movies & Books in 2016(2017.01.06)
- クリスマスの食卓 2016(2016.12.25)
- ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅(2016.11.28)
- ジャック・リーチャー NEVER GO BACK(2016.11.21)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
今晩は。
あ、"Big Miracle"って原作本があるのですが、こういうお話だったんですね。
なるほど、これは普通の感動ものとは、ちょっとひとひねりあるドラマみたいで面白そうですね。
クジラにしてみれば、人間の思惑はどうあれ、助かってハッピーな事だけれど・・。
環境保護とか動物愛護とか、最近大騒ぎになっている原発の事にしても、こういう運動って本当に難しいものがありますね。必ず狂信的な人間が出てきたりして。
映画を見てないから感じた事だけですが、ここでの本当の正解は、原住民の人たちの「食べてしまおう」でしょうね・・。それが最も自然だと思う。(ノ_-。)
投稿: ごみつ | 2012年7月18日 (水) 22時31分
☆ ごみつさま ☆
こんにちは♪
原作は、ジャーナリストのTom Roseという人が書いた
"Freeing the Whales"とありましたが、
映画にあわせてタイトルが"Big Miracle"に
替わったのかもしれませんね。
翻訳版も、映画の邦題と同じタイトルで出ているようです。
単なる美談ではなく、大人の事情が描かれていて
シニカルな視点が感じられるところが、おもしろかったです。
私もイヌピアトと同じく、「感謝していただく」というのが
自然で一番いい方法だと思いました。
あれよあれよという間に、とてつもなく大きな話になってしまいました。
投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2012年7月19日 (木) 11時40分