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「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」

リュック・ベッソン監督、ミシェル・ヨー主演の映画、「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」(The Lady)を見ました。ビルマの非暴力民主化運動のリーダーとして軍事政権と闘い、”鋼鉄の蘭”とよばれるアウンサンスーチーの激動の半生を描いた作品です。

アクション映画の印象が強いミシェル・ヨーとリュック・ベッソン監督の作品というのが意外で、楽しみにしていました。脚本に惚れこんだミシェルが、是非演じたい!とベッソン監督に働きかけ、映画化が実現したそうです。アウンサンスーチーの不屈の魂がそのまま宿ったような、ミシェルの迫真の演技に圧倒されました。

アウンサンスーチーが命をかけて取り組むビルマの民主化運動が中心に描かれますが、遠くイギリスから彼女を献身的に支えてきた夫マイケル(デヴィッド・シューリス)との愛の物語が、作品をよりドラマティックにしていました。

The_lady

1988年。イギリス人の夫マイケルと2人の息子とともに英オックスフォードで幸せに暮らしていたアウンサンスーチーは、病気の母を見舞うために祖国ビルマを訪れます。しかしその時、軍事政権が学生たちの反政府運動を武力で制圧するさまを目のあたりにし、衝撃を受けます。

民主主義運動家たちは、「ビルマ建国の父」として亡き今も国民から敬愛されているアウンサン将軍の娘スーチーに、民主化運動のリーダーになってほしいと懇願します。政治経験のないスーチーでしたが、夫の励ましに背中を押され、選挙に出馬することを決意します。

しかしそれは軍事政権との長い闘いの始まりでした。辺境に点在する少数民族のもとにも隈なく足を運び、民主化運動を推し進めるスーチーは国民の圧倒的支持を集めますが、それを敵視する軍事政権は運動家たちを投獄し、スーチーには外界と接触できないよう自宅軟禁を言い渡します…。

The_lady_1

とにかく、のべ15年という長きにわたる自宅軟禁にも揺るがない、アウンサンスーチーの強靭な精神力に圧倒されました。海外生活が長く、すでにイギリス人と結婚していたスーチーを民主化運動という茨の道へと導いたのは、祖国愛ということばでは表しきれないスーチーの強い使命感なのだと思います。

軟禁中はイギリスに住む家族と電話で話すこともままならず、家族がビルマに入国することも許されません。軍はそうした圧力をかけることで、スーチーにイギリスに帰国させようとしますが、そうすれば二度とビルマに入国できないことがわかっているので、自宅に留まります。

夫のマイケルは、スーチーの身の安全を守るため、そして彼女の運動が広く国際社会で理解されることを願い、ノーベル平和賞受賞に向け準備を進めます。スーチーが軟禁中の自宅で、長男による受賞スピーチを小さなラジオで聞く場面は感動的で、家族の絆に心を揺さぶられました。

軍からのどのような圧力にも屈しないスーチーでしたが、夫が癌に侵され余命わずかと知った時はどれほど苦しかったことでしょう。しかし今会いに行けば、これまで二人でがんばってきたことがすべて無になってしまうと、身を引き裂かれるような思いの中で別れを告げたのでした…。

The_lady_4

映画の制作が進む2010年、国際社会からの支援によって、ようやく軟禁を解かれたアウンサンスーチー。ビルマの民主化に向け、その一歩が今踏み出されたところです。

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コメント

今晩は!cherry

この映画知らなかった。
リュック・ベッソンでこのテーマならもっと話題になって良いのに・・。

スーチーさんはご本人も美人ですが、ミッシェル・ヨーがどう演じてるのかとても気になります。
スチールを見ると、本人そのものみたいですね。

存命の政治家を映画化するのは本当に難しいだろうと思うけど、政治的なテーマよりも、アウンサンスーチーという一人の女性の生き方をドラマ化したかったのでしょうか?
よくこの難しいテーマに取り組んだな~って思います。movie

投稿: ごみつ | 2012年7月26日 (木) 20時11分

映画を製作中に軟禁を解かれるということは
偶然なのか、それともひょっとしたらそういった映画が
作られているのを知った当時の政府が国際世論、流れを
察知してのことなのか・・・
そんなことは、ないかもしれませんが、ちょっと
想像を膨らませてしまいました。
そういった、映画を含めたジャーナリズムの影響力は
良くも悪しくも大きいですからね^^

投稿: イザワ | 2012年7月27日 (金) 10時06分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは♪
そうなんですよ~。
リュック・ベッソンもアウンサンスーチーも日本では著名なので
もう少し大きく取り上げられてもいいように思いますが
小さな劇場でひっそりと上映されています。
やはり政治がテーマだとなかなか集客は難しいのかな…?
でも(不謹慎かもしれませんが)恋愛映画として見ても
ドラマティックな作品でしたよ。

ミシェル・ヨー、ご本人にそっくりですよね。
この映画のために体重を落として
難しいビルマ語での演説をマスターされたそうです。

スーチーさんは政治活動に入られてすぐに軟禁されてしまったので
実績という部分で映画化するのは難しかったのかもしれません。
民主化運動に関しては、名前を明かせない多くの人の証言によって
映画化された、と最後のクレジットで書かれていました。
見応えのある作品でした。

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2012年7月27日 (金) 12時06分

☆ イザワさま ☆
以前、イギリスからオーストラリアへの強制児童移民の問題を描いた
「オレンジと太陽」という作品を見た時にも、
やはり映画製作中に、イギリス政府とオーストラリア政府が
正式に謝罪した…ということがありました。

どちらも、タイミングがちょうど合ったのかもしれませんが
映画が発端となって世論を動かした、ということも
多分にあるかもしれませんね。
ジャーナリズムの影響力は大きいですね。

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2012年7月27日 (金) 12時15分

欧米の民主主義絶対史観からの偏見ある視点から作られた映画だと私は考えています。観てもいない映画を批判するのは、良くないと分かっているのですが、観る前から批判的に構えずにはいられません。
民主主義は万能薬ではありません。アフリカでも中東でもアジアでも、むしろ上手くいってないのが実情でしょう。アジアにはアジアのやり方があると思います。
ましてビルマ王国を分裂させて、民族間の争いを利用して植民地として支配したイギリスなんざ、多数のビルマ族にとっては憎しみの対象でしかないでしょう。
実際、イギリスがビルマ王国の行政を破壊してしまったので、軍以外にビルマを統治できる組織がなかったのが実情です。ただ、軍の統治が長すぎて、むしろ弊害が出てきた。だからこそ、スー・チー女史を担ぎ上げて、新たな政体作りに活用したいのがビルマ国民の本音でしょうね。
彼らが目指すのは欧米型の民主主義ではなく、アジアの開発独裁からの民政移管に成功したシンガポールや台湾、韓国であり、最終的には日本のような先進国を目指しています。
偏見ある欧米の意向に沿うものではないでしょうが、ミャンマーの人たちの本音は、もっぱらアジア志向なのが本当だと思います。

投稿: ヌマンタ | 2012年7月27日 (金) 14時46分

☆ ヌマンタさま ☆
この映画を作ったのがフランスの監督さんですから
映画として、欧米的な価値観から見たものになるのは
しかたがないでしょうね。

各国独自の事情があるので、欧米的な民主主義がそのまま
その国の政治に適用できるわけではないでしょうが
スーチーさんが各少数民族をも尊重し、国民ひとりひとりの民意に
沿ったものをめざしていることは、映画からも伝わってきました。
何分にもスーチーさん自身には政治経験はほとんどないので
実際には、周囲の同じ志をもつ民主活動家たちが、
腕をふるうことになるのでしょうね。
スーチーさんは(自身は偶像となることを望んでいませんが)
強靭な意志をもつビルマ民主化のシンボルであり
欧米はじめ他国との架け橋となりうる貴重な存在だと思います。

投稿: ☆ ヌマンタさま ☆ | 2012年7月29日 (日) 10時00分

こんばんは。いつもありがとうございます。

この映画は楽しみにしていた一作です。軍事政権に抵抗しての長い間の自宅軟禁、そしてノーベル平和賞。スゴい!としか言いようのないガッツあふれる、世界的に有名なる女性です。
今回映画を通じてアウンサンスーチーの生い立ちや、家族の様子を知ることが出来ました。今まで以上に惹かれました彼女に...。

愛する夫が亡くなったことを知った時“マイキー!マイキー!”と床にうずくまり、静かにも慟哭の叫びをあげるスー(確かマイキーは妻をこう呼んでいました)の姿が目に焼き付いています。
ミッシェル・ヨーはアウンサンスーチーになりきってましたね。

投稿: margot2005 | 2012年8月15日 (水) 23時32分

☆ margot2005さま ☆
こんにちは。コメント&TB、ありがとうございます。

アウンサンスーチーさんの活動に興味があったので
私もこの作品を見るのを楽しみにしていました。
自宅軟禁やノーベル平和賞受賞のことはニュースの範囲で
知っていましたが、彼女の背景やご家族のことを
映画を通じて知ることができてよかったです。
清らかで美しく、そしてほんとうの強さをもった
すばらしい女性ですね。

マイケルとの別れの場面は、見ている方も辛かったです…。
ミシェルの迫真の演技に圧倒されました。

投稿: ☆ margot2005さま ☆ | 2012年8月16日 (木) 01時47分

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