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フェルディナント・フォン・シーラッハ 「罪悪」

ドイツの作家、フェルディナント・フォン・シーラッハの第2作、「罪悪」(Schuld)を読みました。デビュー作の「犯罪」(感想はコチラ)がおもしろかったので、今回も読むのを楽しみにしていました。15編からなる短編集です。

Schuld

表紙が前作に似ていますが、内容やスタイルも同様で、前作の続編といった感じでした。すなわち弁護士でもある筆者がおそらく関わったのであろう奇怪な事件の数々が、ひやりとした客観的な筆致で、淡々と描かれています。

前作「犯罪」の印象があまりに鮮烈だったので、それに比べると(免疫があったので)衝撃はやや薄れましたが、シーラッハ独特の語り口は健在で、不思議な磁力があってぐいぐい引き込まれました。

個人的には前作に比べて、後味が悪い作品が多かったように思いました。ひょっとして、前作は読者の様子をうかがいながら書かれたのに対し、今回は読者を気にせず、自由に書かれたのかもしれないな… なんて思いながら読みました。

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法律というのは社会の秩序を守るために人間が便宜上に作ったもので、解釈によって如何様にもぶれるもの。いい方向にぶれれば、人情味のある大岡裁きにもなりますが、今回は法の隙間をついたケースや、法の限界を示した作品が多かったように感じました。

例えば、冒頭の「ふるさと祭り」。これは祭りの日に起こった、若い女性に対する集団暴行事件を題材にした作品ですが、作者は弁護士になって初めての仕事でこの事件を担当し、明らかに加害者とわかっている男たちの弁護団に加わり、無罪を勝ち取ります。

この時、自分はもはや罪なき身ではなくなった、と告白する作者のことばに、弁護士というしごとの業、そしてそれを受け入れることを決意した若き日の作者の覚悟が静かに伝わってきました。作者にとって、小説を書くということがこうした苦しみの告白になっているのかもしれないな… と思いました。

それから「清算」という作品。これは”罪が裁かれない”ことにやぶさかではないけれど、後味の悪さを残しました。長い間夫の暴力に耐え続けてきた女性が、最後に夫を殺してしまいます。彼女の立場には大いに同情するものの、証拠を見てみぬふりをして正当防衛と認める裁決はいかがなものか。

最後の最後に大どんでんがえしがあったために、なおさらこの裁判長の判断に複雑な思いを抱いてしまいました。お話としてはおもしろかったですが…。

シーラッハの作品は、冷酷な犯罪や凄惨な事件も登場しますが、鋭利な刃物で綴られたような独特の筆致に魅力があって好きです。次なる作品は初めての長編小説だそうで、こちらも今から楽しみです。

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コメント

読んだことはありませんが、ただの裁判ものという側面だけでなく
主人公の弁護士自身の葛藤も描かれているという点が
人間ドラマとして面白いのかもしれませんね。
興味ある一冊です^^

投稿: イザワ | 2012年9月15日 (土) 00時25分

☆ イザワさま ☆
こんにちは。
半年ほど前に出た本ですが、デビュー作がおもしろかったので
こちらも読んでみました。
この作家さん、ほとんどご自身の感情を交えずに書かれるのですが
写実的に書かれた文章の中に、内面がにじみ出ていて
そこが魅力的です。
次回作も楽しみです。

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2012年9月15日 (土) 17時04分

今晩は。

先日の「犯罪」の記事を読ませていただいた時にも、「絶対に読む!」と思いつつ、まだ未読です。
この2作目も本当に面白そうですね。

絶対に私好みな予感がします。

2作とも是非読みたいです~。happy02book

投稿: ごみつ | 2012年9月15日 (土) 23時32分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは♪
シーラッハのデビュー作「犯罪」でノックアウトされましたが
今回の「罪悪」もおもしろかったです。

もし読まれるのでしたら、「犯罪」の方を
先に読むことをお勧めします♪
「犯罪」の方がよく練られていると感じました。^^

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2012年9月16日 (日) 11時11分

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受信: 2013年10月 5日 (土) 21時29分

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