« 劇団四季 「美女と野獣」 | トップページ | 和紙のブックカバー »

アーナルデュル・インドリダソン 「湿地」

書評を見ておもしろそうだったので、アーナルデュル・インドリダソンの「湿地」(Mýrin / Tainted Blood / Jar City)を読んでみました。ここ数年、S・ラーソンの「ミレニアム」をはじめ北欧ミステリーが注目されていますが、この作品はアイスランド発の警察小説。世界40ヶ国で出版されているベストセラーです。

Myrin

アイスランドときいて思い出すのは、80年代に聴いたメゾフォルテというフュージョンバンド。映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」に主演した歌姫ビョーク。それから映画「プロメテウス」の冒頭に登場したヨーロッパの最大瀑布、デティフォスという滝…。

数年前に金融危機で銀行が破綻したことや、火山が噴火して欧州航空線が大混乱したこと…。思いつくままに書いてみましたが、それでも極北にある小さな火山島は、私にとってはイメージしにくい遠い国。どんなお話か興味がありました。

事件は、首都レイキャヴィクのノルデュルミリ(北の湿地)という地区にある古いアパートで起こりました。年老いた男性が灰皿で殴り殺され、犯人は何も取らずに、ドアを開け放したまま逃げ去ったのです。

最初は場当たり的な犯罪と思われましたが、部屋には3語の謎のメッセージが残されており、後の捜査で部屋の中から4歳で亡くなった女の子の墓の写真が見つかります。ベテラン捜査官のエーレンデュルは、これは普通の犯罪ではないと確信し、殺された男の過去を調べていきますが…。

一見ありがちな登場人物のキャラクター設定とストーリーと思いきや、読んでいくうちにアイスランドという国の特殊な事情が少しずつ見えてきて、興味深かったです。

まずは、アイスランドが最果てにある人口30万人ほどの単一民族の孤島であるということ。人の出入は少なく、遡ればどこかで誰かと血のつながりがあるのだとか。国民全員が家族のようなもので、苗字はなく、ファーストネームで呼び合う、というのも納得です。

また、それゆえに、アイスランドではDNAや遺伝に関する研究が盛んなのだそうです。小説では、国の研究所で国民全員のDNA情報が管理されている、という設定になっていました…。

それから、雨が多いということも初めて知りました。全編にわたって降り続く雨や、湿地に建てられた古い家が長い年月をかけて沈みゆく描写からは、常に厚い雲が垂れ込めているような、なんとも陰鬱な情景が浮かびあがってきます。

ベテラン捜査官エーレンデュルの抱える家族の問題は深刻ですし、事件の展開もなかなかにどろどろしています。にもかかわらずそれほど重苦しくなく、意外と読みやすく感じたのは、遠い国に対する好奇心のなせるわざかもしれません。

本国アイスランドで映画化され、米ルイジアナを舞台にリメイクも予定されているそうですが… リメイク版は原作とはかなりイメージが違ったものになりそうな気がします。^^

|

« 劇団四季 「美女と野獣」 | トップページ | 和紙のブックカバー »

」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。

あ、この本、友人がブログでもつい最近記事にしていた気になっていました。英語版のペーパーバックもこの作家さんの作品、けっこう売れてますよ。

最近は北欧や、北ヨーロッパの作品が注目されてますね。snow

アイスランドなんて、それこそ、私にもセレンディピティさんが記事であげられてた情報くらいしかないので、社会の様子だとか、人情の在り方だとか、とても気になります。

いずれ是非読んでみたいです。book

投稿: ごみつ | 2012年10月20日 (土) 00時44分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
この作家さんの英語版、人気があるのですね。
日本語版はこの「湿地」が初めてのようですが、
売り上げ次第では続編も出版されるのかな…?

「その国のことを知りたければミステリーを読めばいい」
と誰か言ったそうですが、読んでいくうちにアイスランドという
国の様子が少しずつわかってきて興味深かったです。
沼田まほかるさん風に少しどろどろしていて
決して好みというわけではないのですが、楽しめました。^^

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2012年10月20日 (土) 17時25分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1151970/47495161

この記事へのトラックバック一覧です: アーナルデュル・インドリダソン 「湿地」:

« 劇団四季 「美女と野獣」 | トップページ | 和紙のブックカバー »