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最近読んだ本から (2013.03)

ジャンルがばらばらですが、最近読んだ本からおもしろかったものをまとめてご紹介させていただきますね。

Book_1_2

平野啓一郎 「私とは何か 『個人』から『分人』へ」
作家 平野啓一郎さんによる人間関係論。タイトルは哲学的ですが、さらりと読める楽しい本です。平野さんの小説への道案内にもなっています。

著者は、個人(individual)とはこれ以上分けられないという意味で、一神教であるキリスト教における、人と神との一対一の関係から来ている思想だといいます。それに対して、人はdividual(分割可能)な存在であるという、「分人」という考え方を提言しています。

仕事仲間、家族、友人…人は相手との関係においてそれぞれ違う顔を持っていますが、それらはどれもほんとうの自分であり、いくつもの分人によって”私”という個性が構成されているのだということ。日頃私たちが無意識に感じていることですが、理論として示されることで、頭の中がすっきり整理された気がしました。

そして、私たちを取り巻く人間関係の問題(いじめ、自傷行為、ストーカーなど)さらには恋愛や死までもが、分人思想によってみごとに説明がつくのが鮮やかでした。自ら各分人の割合や深さをマネージすることで、人間関係のリスクを回避し、生きやすくなる… そんな可能性を感じました。

Book_2

中島京子 「小さいおうち」
昭和初期、東京郊外の小高い丘にある赤い屋根の洋館で女中奉公していたタキが、書き残しておきたかった思い出と告白。2010年上期の直木賞受賞作。山田洋次監督による映画化決定。

物語は、現在のタキが過去を振り返りながら手記を書いていく、という構成になっています。タキは、再婚する時子奥様について、いっしょに平井家に入った女中さん。昭和初期の東京の家庭の何気ない日常が、時代背景の移り変わりとともにていねいにつづられます。

最初はあまり変化がないのですが、秘密の匂いを感じてからは、どきどきしながら引き込まれました。控えめで奥ゆかしい描写が美しく、昔の少女小説のようなちょっぴりレトロな味わいです。タキの手記をのぞき見てはツッコミを入れる、又甥の健史がいい味を出してます。

Book_3

湯浅誠 「ヒーローを待っていても世界は変わらない」
貧困問題に取り組む社会運動家 湯浅誠さんによる民主主義論。独裁型のヒーローに政治を丸投げしたのでは民主主義が成り立たない、という危機を説きます。

強いリーダーがいて、世の中を自分の思い通りに仕切ってくれたら、どんなにラクでしょう。しかし、今の私たちを取り巻くさまざまな問題は、どれをとっても100人の立場から100通りの意見があり、ひとつの結論を導くことは難しい。ひとつの問題には表裏一体の側面があるのです。

民主主義というのは実はとても疲れる、面倒くさいシステムであり、意見を調整するのにはものすごい時間とエネルギーがいります。だからといって、「なんでもいいから決めてくれ」とリーダーにゆだねるのでは、何も変わらない。ひとりひとりが考え、行動を起こし、決めていくことが大切なのだと書かれています。

では具体的に、どうすればいいのか? それについても身近な例を挙げられ、気づかされる思いでした。ご自身の経験をもとに書かれた内容には説得力があり、誠実な信念が伝わってきました。

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コメント

私は読んでない本については特にコメントしませんが、最後の湯浅氏の書は、ちょっと興味があります。
ただ、私は民主主義というシステムはかなり特異な政治形態だと考えています。おそらく人類の歴史のなかでは特定の時期、一定の地域でしか成立しえないとさえ考えています。敢えて断じてしまうのなら、19世紀後半から西欧で200年ほど流行った政治形態と、未来の史家は論じるであろうと予想しています。
民主主義という奴は、一定の共通基盤がないと機能しずらいもので、それは今日のように人が多数異動する社会では、機能不全に陥りやすい代物だと思います。日本人はちょっと民主主義を持ち上げ過ぎなんだと感じています。まァ、私は民主主義の水を飲んで育っていますから、それなりに大事にしたいとも考えていますがね。

投稿: ヌマンタ | 2013年3月29日 (金) 17時23分

☆ ヌマンタさま ☆
こんにちは。
この本、ちょうど橋本大阪市長が注目された時期に
そうした社会現象に危機感を覚えられ、書かれたようです。
湯浅さんの本、平易なことばで語られていますが
ひとつひとつの話に信念の重みが感じられ、読み応えがありました。

民主主義…本来は民意を反映する理想的なシステムだったのでしょうが
これだけ世の中が複雑になり、人が増え、価値観が多様化されてくると
単純に多数決、数の論理だけではうまく立ち行かないのかもしれませんね。
私たちが主権であるという意識を持ち、責任を自覚してこそ
成り立つシステムであり、私たちにも努力が必要なのだと思います。
民主主義が至上だなんて軽々しく言ってはいけないのかもしれません。

投稿: ☆ ヌマンタさま ☆ | 2013年3月31日 (日) 12時42分

こんにちは!

色々なジャンルの本を読まれてますね!
私はここ1ケ月ほど同じ本(歴史)を悪戦苦闘しながら(笑)読んでます。(ノ;´Д`)ノbook

平野さんの本、面白そうですね。individualの語源も興味深いですが、それに対応したdividualっていう考え方を展開させてる・・っていうのが興味をひきます。

「民主主義」と言うと、チャーチルの「民主主義は最悪。ただ今のところこれ以上のシステムはない」って語った演説が有名ですけど、また社会が進歩したら、もっと理想に近いシステムが登場するかもしれませんね。社会はそうやって進歩してきたのでしょうし・・。

私なんかには、とても思いつかないけれど、人間社会の理想形態ってどんなものなのでしょうね。

投稿: ごみつ | 2013年4月 1日 (月) 17時07分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
少し前に読んだ本ですが、まとめてアップしました。

平野さんの本、おもしろかったです。
ちょっと私の書き方がわかりにくかったですが
individualの意味は平野さんの私見です。
dividualの思想は私たちがふだん感じていることを
うまく説明しているな、と思いました。
人格のリスク分散によって生きやすくなるという発想は
ある種の救いになるかもしれませんね。

一応お断りしておくと、湯浅さんの本は民主主義を否定しているものでは
ありません。日頃、異なる意見の調整などで、民主主義のたいへんさを
身にしみて感じていらっしゃる著者が、私たちがそのたいへんさを
自覚しつつ参加することの大切さを説いていらっしゃいます。

社会って長い目で見て流動的なものなので、今のシステムがどうしても
その時代に合わなくなれば、その時代に合ったシステムに修正する
必要が出てくるのでしょうね。

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2013年4月 2日 (火) 08時21分

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