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「天使の分け前」

ケン・ローチ監督のイギリス・スコットランドを舞台にしたコメディドラマ、「天使の分け前」(The Angel's Share)を見ました。生まれ育った環境からトラブルばかり起こしていた若者が、かけがえのない出会いによって新しい人生を切り開いていく物語。監督の温かいまなざしが心に響くすてきな作品でした。

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スコットランド・グラスゴー。育った環境からトラブルばかり起こしているロビー(ポール・ブラニガン)は、親の代からの因縁の相手と暴力沙汰を起こしますが、恋人レオニーとの間に近々子供が生まれることが考慮され、刑務所に入る代わりに300時間の社会奉仕活動を命じられます。

そこで出会った指導者ハリー(ジョン・ヘンショー)は熱烈なウィスキー愛好家。ハリーはロビーにウィスキーの奥深さを教えていくうち、彼に類まれなテイスティングの才能があることに気づき、蒸溜所で行われるテイスティング講座に誘います。

オークションに幻のウィスキーが出品され、ひと樽100万ポンドの値がつくことを知ったロビーは、仲間たちと共謀してそのウィスキーをこっそりいただこうと、とんでもない計画を思いつきますが…。

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5月末で閉館する銀座テアトルシネマのクロージング作品。ケン・ローチ監督の最新作というだけで、内容も知らずに見に行きましたが、愛とユーモアあふれる痛快な作品で、私はとっても気に入りました。ラストには心憎いサプライズが用意されていて、温かい気持ちでいっぱいになりました。

冒頭では、ロビーが生きる環境の過酷さがさりげなく描かれます。恋人と平和な家庭を作り穏やかな生活を送りたいと思っても、悪い連中が常に彼を痛めつけようと狙い、それに応酬してつい暴力沙汰を起こしてしまう。誰からも信用されず、顔の傷のせいで職にもありつけないという現実。

ロビーといっしょに勤労奉仕をする若者たちも、皆それぞれに問題を抱えたひとクセもふたクセもある面々。でも、そんな彼らを色眼鏡で見たりせず、ひとりの人間として尊重して接するハリーの姿が、私にはケン・ローチ監督と重なって見えました。

ロビーを演じる新人のポール・ブラニガンは、ジェイミー・ベルにちょっぴり雰囲気の似た魅力的な俳優さん。子供が生まれたばかりというのに失業したところをケン・ローチ監督にスカウトされたそうで、そんな経緯も映画のロビーとハリーの関係に似ているな~となんだかうれしくなりました。

映画を通じてスコットランド人のウィスキーにかける並々ならぬ情熱を知り、ウィスキーの奥深い世界を垣間見ることができて興味深かったです。私は以前、サントリーの白州蒸溜所を見学した時のことを思い出しましたが、映画に登場するスコットランドの蒸溜所はそれぞれに味わいがあって魅力的でした。

最近は日本でも、日本人のデリケートな味覚と最高の品質を求めるあくなき探究によって、世界グランプリを受賞するほどのウィスキーが生まれていますが、こういう映画を見ると、ウィスキーにまつわる歴史と文化の深さに関しては、日本はとてもかなわないな…と思いました。

オークションで、スコッチの味もろくにわからないアメリカ人がしてやられる…という展開は痛快でしたが、いかにもケン・ローチ監督らしい皮肉が感じられて苦笑いしました。アルコールが得意でない私も、スコットランドの蒸溜所をめぐりながら、おいしいウィスキーを飲んでみたくなりました。

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コメント

アルコールに弱いので、あまり呑みませんが、飲むのなら蒸留酒が好きです。高校生の頃から酎ハイを愛飲してましたが、ウィスキーもけっこう好きです。なぜって甘いもの、特にチョコと合うから。バーボンもいいのですが、やはり洋菓子ならばスコッチがいいです。
出来たら水割りではなく、ストレートが一番味わえると思いますよ。ロックでもいいのですが、薫りが立つのはストレートだと思います。
ちなみにワイン、分かりません。ちんぷんかんぷんです。

投稿: ヌマンタ | 2013年5月 1日 (水) 12時29分

こんばんは。cherry

ケン・ローチ監督のこの映画、気になってました。
面白そうですね!
ケン・ローチ監督の気持ちが、伝わってきそうな作品です。

私、昔はウイスキー嫌いだったのですが、最近は大好きでよく飲んでます。ニッカのシングルモルト「余市」っていうのが安いわりに美味しいです。ウイスキー苦手でもハイボールにすると美味しく飲めますよ。

知り合いの業者さんが脱サラして、スコッチのバーをはじめたのですが、本場のスコッチはものすごく美味しいです!え、これがお酒の究極の姿?みたいな(笑)高いからなかなか飲めないんですけどね・・。

日本の高級ウィスキーも、「山崎」とか「白州」とかホントに美味しくなったけど、なかなか本場にはかないませんよね~。

映画よりお酒の話ばっかでごめんね。coldsweats01

投稿: ごみつ | 2013年5月 1日 (水) 23時30分

人は生まれた環境でその後の人生に色々な面で影響を
受けるのは仕方ない事かもしれませんが、そこを自分の
力で乗り越えていかなければなりませんね。
人の幸せの形はお金だけではないことは明らかで、
充実した人生を送りたいものです。
お金、欲しいですけどね(笑
私は、ビール党ですが、美味しいウィスキーは好きです(笑
旅行先で、お酒の工場があると良く見学させて頂きます。
あの雰囲気、好きです^^

投稿: イザワ | 2013年5月 2日 (木) 08時48分

☆ ヌマンタさま ☆
こんにちは。
私もお酒は嫌いではないですし、興味もあるのですが
弱くて、あまり量が飲めないのが残念です。
食事の時にはワインがおいしいですが
酔うとお料理のお味がわからなくなってしまうので…
一日の終わりにウィスキーをいただくのもいいですね。
シングルモルトのおいしいウィスキーは、
水割りやソーダ割りではなく、ストレートかロックで
少量をじっくり味わいたいです。

投稿: ☆ ヌマンタさま ☆ | 2013年5月 3日 (金) 00時07分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
この作品、私はとっても気に入りました♪
ケン・ローチ監督らしい社会風刺を織り込みつつも
全体的に明るいタッチで、温かさが感じられるのがよかったです。

私は若い頃に増して、お酒が弱くなったので
ますます量よりおいしいお酒を少量…と思うようになりました。
とはいえ、ほとんど飲む機会はないんですけれどね。(^^;;
趣味が高じて?スコッチバーを開かれるなんてすごいですね。
究極のスコッチをいつかいただいてみたいものです。

以前、白州蒸溜所で試飲させていただいた時に
日本のウィスキーってこんなにおいしいんだと感激しました。
その時は氷にもこだわっていましたし、やはり蒸溜所の雰囲気も
気分を高めてくれたのかもしれません。

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2013年5月 3日 (金) 00時25分

☆ イザワさま ☆
こんにちは。
日本でも最近、若い方たちがなかなか就職できなくて
経験が積めない、という話をきくことがあるので
環境は違っても、他人事ではないな…と思いました。

イザワさんはビール党ですよね。^^
これから暖かくなってくると、キリッと冷えた
ビールの一杯がおいしいですね☆
私もアルコールは弱いのに、旅先で
ワイナリーやお酒の工場を訪れるの好きです。
その土地のお酒ってまた格別のものがありますね。

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2013年5月 3日 (金) 00時42分

映画をさっそく観てみました。訛がすごくて、すべて理解できたのか、できなかったのか(笑)20年ほど前、エディンバラ付近の醸造所めぐりをしたことを思い出しました。あまりにも屋外が寒くて、冬のスコットランドっていったらそれしかおもいあたらないっていう(苦笑)

友達がまさしくエディンバラ出身なのですが、彼は『俺の体にはウィスキーが流れている』って自負するひとですが、去年彼の家でテイスティングがありました。しかし、これはジェントルマン限定だったんです、初めは。本来ウィスキーは男性のものなのかもしれません。しばらくしたら私やほかのウィスキー好きな女性も輪に入れてくれましたが、アメリカ人はがぶ飲みするからあげたくないって、あとで言ってました(爆)

この映画、クライマックスのところでハラハラしました~。なんとなく,景色が映画 The Full Montyに似ていました。主役の彼、どことなく哀愁があって良いですね。それにしても、セレンディピティさんの映画評論はすばらしいです。観てみたい!って思いました。

投稿: schatzi | 2013年5月 3日 (金) 12時42分

☆ Schatziさま ☆
こんにちは。映画、早速見てくださったのですね。
たしかに訛りは強烈でしたが^^なかなか素敵な作品でしたよね。
同じイギリスでも、スコットランドとイングランドでは
別の国っていうくらい、個性が違うのでしょうね。
Schatziさんは、エジンバラで蒸溜所巡りを
されたことがあるのですね。いいな〜☆
映画の蒸溜所の雰囲気も、周りの風景もとっても素敵でした。

そして、スコットランドの人は、ご自宅でもテイスティング
パーティをされるのですね@@ ウィスキーは彼らにとって
文化ということばでは言い尽くせない、特別な存在なのでしょうね。

フルモンティ、私も見てみたいです。
主役の彼、私はジェイミー・ベルにちょっと似ているな〜
と思いました。
私もこうしていろいろお話できて、うれしいです☆

投稿: ☆ Schatziさま ☆ | 2013年5月 4日 (土) 22時46分

こんばんは。
いつもTBありがとうございます。
ケン・ローチの映画は大好きです!!
本作も又また素敵なヒューマン・ドラマでしたね。
前作の「ルート・アイリッシュ」のようなドラマより、少々コメディが入った作品が好きです。「エリックを探して」も素晴らしかったですが、こちらもとても素晴らしい!ケン・ローチ映画でした。
ほんとシングルモルト飲みたくなります!

投稿: margot2005 | 2013年5月29日 (水) 23時36分

☆ margot2005さま ☆
こんにちは。
ケン・ローチ監督、私も好きです♪
厳しい現実を描いた骨太の社会派作品というイメージがありましたが
こういうコミカルな作品もいいですね。
ちょっぴり社会風刺を織り込みながらも
ユーモアがあって、ほろりとさせて…
監督の温かさがにじみ出ていました。
映画を見たら、おいしいシングルモルトのウィスキーが飲みたくなりますね。

投稿: ☆ margot2005さま ☆ | 2013年5月30日 (木) 09時25分

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