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「ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの」

佐々木芽生(めぐみ)監督によるドキュメンタリー映画、「ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの」(Herb & Dorothy 50x50)を見ました。ニューヨーク在住の現代アートコレクター ハーブ&ドロシー・ヴォーゲル夫妻に密着した前作、「ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人」の完結編です。

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前作で、ハーブ&ドロシー夫妻は、つましい生活の中で40年以上かけて、大好きな現代アートを収集。小さなアパートの部屋いっぱいになった4000点以上の作品全てを、ナショナルギャラリーに寄贈することを決意しました。詳細はこちらの記事をご参照いただけたら幸いです。

art 「ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人」(Herb & Dotothy)

しかし、ナショナルギャラリーで収容できるのは1000点が限界とわかり、残りの作品は全米50州の美術館に50点ずつ寄贈することになりました。 本作では、この「50×50」プロジェクトを追いかけ、全国各地の美術館の反応や、2人の人生のその後を描いています。

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どの美術館にどの作品を寄贈するか。それらの選定は、夫妻が中心になって行いました。2人にとっては大切な娘を嫁に出すようなもの。ドロシーは毎日のようにPCでコレクションを贈った先の美術館のサイトを見て、「写真が載っていない」「まだ公開されていない」と細かくチェックし、要望を伝えます。

各美術館は夫妻のコレクションを歓迎しますが、中には現代アートにあまりなじみのない地域もあります。来館者の中には「うちの孫の方が上手に描くよ」「難しくてよくわからない」という声も。しかし、わからなくても触れることで現代アートを身近に感じることが大切、と学芸員の方はおっしゃいます。

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これはリチャード・タトルの作品ですが、ルーズリーフに水彩絵の具でささっといたずら描きしたみたい。こうした作品もていねいにガラスケースに入れて展示していて、おかしかったです。^^ 「アートの見方に正解はない」というある学芸員の方のことばも、心に残りました。

プロジェクトは順風満帆だったわけではありません。ラスベガスの美術館では経営不振のため閉館を余儀なくされてしまいます。夫妻はショックを受けますが、その後50点まとめて引き取ってくれる美術館を見つけます。プロジェクトを通じて、現代アートをめぐるさまざまな問題も見えてきます。

一方、微笑ましく思ったのは、ヴォーゲルコレクションのコーナーに、2脚の椅子とテーブル、猫のぬいぐるみを飾り、まるで2人がそこに座っているようなすてきなディスプレイをしている美術館がいくつもあったこと。訪れた人は、コレクションとともにお二人を身近に感じることができるでしょうね。

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ハーブとドロシーはプロジェクトのために、各地の美術館を訪れ、現地のアーティストとも積極的に交流をはかります。ハーブは足を弱めて車椅子生活となり、口数もすっかり減ってしまいましたが、その分元気なドロシーが小さな体でぐいぐい車椅子を押し、どこに行くにもハーブを引っ張っていきます。

アーティストの中には、コレクションが分割されることに賛成する人もいれば反対していた人も。夫妻に見出されながら、その後芽の出なかったアーティストもいますが、ドロシーの「あなたの作品、私は好きよ」ということばに、アートに対する純粋な思いが伝わってきました。

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2012年7月にハーブは静かに息を引き取られ、ドロシーはコレクションを終了することを決意します。2人はアートの作品だけでなく、カタログや新聞の切り抜きなどの膨大な資料も集めていて、それらは公文書館に引き取られました。

あんなにアートにあふれていたアパートの部屋がすっかりからっぽになりましたが、最後に1枚だけ残されたのが、ハーブが描いたドロシーの肖像画…というのに涙。ドロシーはこれからもハーブとともに、そして2人の大切なコレクションとともに、新しい人生を歩んでいくのでしょうね。

なお、2人のヴォーゲルコレクションは、こちらのサイトで見ることができます。私もいつかどこかの地で、2人のコレクションを見てみたいです。
art Vogel 50x50

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コメント

まだ、観れていませんが、この映画は思い出深い映画です。
皆さんからの資金の応援で公開にたどり着いた映画ですよね。
あるアート展示会社の引っ越し終了イベント(笑)で、
であった広告会社の方が、まさしく、この映画の担当をされていて
そこでお話をお聞きして、ブログでも紹介させて頂きました。
観なくっちゃ^^

投稿: イザワ | 2013年5月 8日 (水) 03時02分

☆ イザワさま ☆
こんにちは。
イザワさんは、この作品のクラウドファンディングについて
以前ブログでご紹介されていましたね。
よく覚えています♪

できれば前作からご覧になることをお勧めしますが
もしお時間がありましたら。

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2013年5月 8日 (水) 09時01分

こんばんは。cherry

今日の記事見て最初に「あれ、またハーブ&ドロシー?」と思ったら、続編が公開になったんですね。
前の記事もよく覚えているので、その後の作品の行方なんかのお話、興味深く読ませていただきました。

それにしても美術館でもなかなかひきうけらきれないほどの作品をコレクションされた、アートへの情熱と愛が凄いですね。
グッゲンハイムみたいな資産家でもないのに、本当に凄いと思います。

大切なコレクションが、美術館にひきとられて、たくさんの方の目を楽しませる事になるのですから、美術愛好家としては幸せですね。shine

機会があったらこの2作、是非見てみようと思います。

投稿: ごみつ | 2013年5月 8日 (水) 23時27分

☆ ごみつさま ☆
こんばんは。
覚えていてくださっていて、ありがとうございます♪
「ハーブ&ドロシー」、前作でこのご夫妻にすっかり魅せられてしまったので
今回の公開を楽しみにしていました。

評価の定まっていない現代アートなので、比較的購入しやすかった、ということも
あるかもしれませんが、それにしても思い切った買い物ですよね。^^
アートへの純粋な愛がなければ、とてもできなかったと思いますし
それだからこそお二人の行動が、人の心を打つだと思います。
ある意味オタクですが^^、ご夫婦の価値観がいっしょだったからこそ
ここまで続けることができたのでしょうね。
ハーブはお亡くなりになりましたが、幸せな生涯だったのだろうな、と思います。

機会がありましたら、是非ご覧になってみてください。

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2013年5月10日 (金) 00時47分

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