「プレイス・ビヨンド・ザ・パインス/宿命」
ライアン・ゴズリング&ブラッドリー・クーパー主演のヒューマンドラマ、「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」(The Place beyond the Pines)を見ました。強盗に手を染める天才ライダー、彼を追いつめる野心家の警官、そして15年後に出会うふたりの息子たちという3つの物語が流れるように展開します。
移動遊園地のバイクショーで働く天才ライダー ルーク(ライアン・ゴズリング)は、巡業先でかつての恋人ロミーナ(エヴァ・メンデス)と再会。彼女がひそかに自分の息子を産んでいたことを知り、2人を経済的に支えようと、銀行強盗に手を染めます。
しかし、何度も犯行を繰り返すうちにミスをして、新米警官のエイヴリー(ブラッドリー・クーパー)に追い詰められ、誤って射殺されてしまいます。ルークに自分と同じく息子がいたと知り、エイヴリーは苦悩しますが、皮肉にもこの捕物によって英雄となり、出世への道を歩いていきます。
そして15年後、何も知らないルークの息子ジェイソン(デイン・デハーン)は、転校してきたエイヴリーの息子AJ(エモリー・コーエン)と親しくなりますが、やがて実の父ルークがエイヴリーによって射殺されたという事実を知ります…。
ライアン・ゴズリングとブラッドリー・クーパーという、今最高にのっている演技派のふたりが主演ということで楽しみにしていた作品。140分という長丁場ながら、3つにわたる物語は見応えがあり、だれることなく最後まで引き込まれました。見た後も静かな余韻に満たされる、心に染み入る作品でした。
全身タトゥーを彫り込み、バイクショーで命がけのアクロバットをするルークは、ライアン・ゴズリングにぴったりの役どころ。思いがけず息子の存在を知ったルークは、移動遊園地の仕事を辞めてこの地に残り、不器用にせいいっぱい彼なりのやり方で父親らしく愛情を注ごうとします。
お金を得るために銀行強盗となる、その思考回路に全く共感はできないものの、そういう形でしか父親の愛情を示せないルークが、(おそらく彼自身の不幸な生い立ちからきているのだと思いますが)悲しくて、切なくて、胸がしめつけられました。
一方のエイヴリーは法曹界にいる父親に反発し、一度は警官の道に進むものの、組織の不祥事に巻き込まれそうになり、内部告発して警察を離れます。そして結局は父の助けを借りて、州の司法長官をめざすことになります。
スーツをぱりっと着こなすブラッドリー・クーパーは、若い頃のレイフ・ファインズを彷彿とさせる雰囲気でなかなかすてきでした。エイヴリーは決して清廉潔白というわけではなく、したたかさを持ち合わせた典型的な政治家タイプ。それでもルークの存在が、常に彼の心の十字架になっていたと知り、救われる思いがしました。
ジェイソンとAJのパートは、どうしても親目線で見てしまって、危なっかしくて心配ではらはらしました。アメリカの青少年を巣食う、ドラッグの闇も垣間見えたりして…。
これは、父から子へと引き継がれる因果をテーマにした作品。最後に自分自身の気持ちに決着をつけて、バイクで走り去るジェイソンの後姿はさわやかでしたが、彼の行く手に幸せが待っていますように、と願わずにはいられませんでした。
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コメント
今晩は!
へ~、この作品も公開されてるの知りませんでした。
情報に疎くなっちゃててダメですね。
オフィシャルページ見てみましたが、とっても面白そうです。もしも時間がとれたら見てみたいな。
ライアン・ゴズリングってそうハンサムでもないのに、何でこう魅力的なんでしょうね!?
投稿: ごみつ | 2013年6月 7日 (金) 01時00分
☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
この作品、上映館は少ないのですが
初日に行ったら、ほとんど満席でした。
これもライアン人気かしら??
私はこの作品、とっても気に入りました!
ライアン・ゴズリングとブラッドリー・クーパー
タイプは全く違いますが、それぞれ魅力的でしたよ。
ライアンは、「ドライヴ」みたいな役が多いのが気になりますが…
同じ監督さんでライアンと初めてタッグを組んだ
「ブルー・バレンタイン」も見てみたいです。
投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2013年6月 7日 (金) 08時47分
ラストのジェイソンを、しっかり生きろよ~と手を振る気持ちで見送りました。
投稿: 風子 | 2013年6月11日 (火) 12時55分
☆ 風子さま ☆
こんにちは♪
この作品、すごくよかったですね。
お父さんのルークの分も
ジェイソンには幸せになって欲しいです☆
投稿: ☆ 風子さま ☆ | 2013年6月12日 (水) 15時17分
こんばんは。
この作品はとても良かったです。主演の俳優たちは素晴らしかったし、3代にわたる人間ドラマも見応えありました。
ライアン・ゴズリングは破滅的な役柄が似合いますね。「ブルーバレンタイン」の彼も中々でした。
ブラッドリーは反対にリッチな家柄出身という役柄が似合ってました。
レイフ・ファインズ...そうですか。そういや少し似てますかね。確かにぱりっとしたスーツに合いますね彼。
決して清廉潔白でないはないエイヴリーは、おっしゃるようにルークの十字架背負っていたでしょうね。息子ジェイソンとの出会いは予期せぬ出来事でさぞ辛かったに違いありません。
投稿: margot2005 | 2013年6月30日 (日) 18時42分
☆ margot2005さま ☆
こんにちは。
私もこの作品、とっても気に入りました♪
> ライアン・ゴズリングは破滅的な役柄が…
ほんとうに似合いますね。ただ、どうもイメージが固定しがちに
なってしまっているのが気になるところです。
「ブルーバレンタイン」あれから見ました。
かなりきつい作品ですが、ライアンとミシェル・ウィリアムスの
熱演もあって、見応えのあるドラマになっていましたね。
ブラッドリー、すてきでしたね!
「世界にひとつのプレイブック」の時は今ひとつノリきれなかったのですが
この作品で好きになりました。
傍からは順風満帆に見えて、内面に葛藤を抱えている
複雑な役どころをみごとに演じていましたね。
投稿: ☆ margot2005さま ☆ | 2013年7月 1日 (月) 12時12分
セレンさん☆
うわー、何だかセレンさんが紹介されると、ぐっと素敵な映画に感じますね。
内容の説明が実に魅力的です。
息子たちのターンは、実際息子を持つ身としては、ハラハラしちゃいますよねぇ。
ラストのシーンではまさに幸せを願うばかりですが、幾多の困難もきっと乗り越えてくれる信じずにはいられません。
投稿: ノルウェーまだ~む | 2015年3月21日 (土) 00時34分
☆ ノルウェーまだ~むさま ☆
こんにちは。
わー、そんな風に言っていただいて恐縮です。
2年前に見ましたが、不思議と心に残る作品でした。
まだ~むさんのおかげで懐かしく思い出しました。
ご紹介くださって、ありがとうございます☆
息子たちのターンは、ほんとうにハラハラものでしたね。
ジェイソンには自分の道を見つけて、父ルークの分まで
幸せになって欲しい...と願わずにはいられませんでした。
投稿: ☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ | 2015年3月21日 (土) 22時17分