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マイケル・サンデル 「それをお金で買いますか」

「これから『正義』の話をしよう」のマイケル・サンデル教授の新刊。経済学のようなタイトルですが、倫理、道徳のお話です。

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マイケル・サンデル 「それをお金で買いますか 市場主義の限界」
(What Money Can't Buy - The Moral Limits of Market)

TV放映された「ハーバード白熱授業」は見ていませんが、本を読んで、なるほどこんなにおもしろい授業だったら、人気が出るだろうなあと納得しました。私は数学専攻なので、”答えのない問題について考える”ことが新鮮な体験でもありました。

今 世の中では、かつては考えられなかったさまざまなものがお金で取引されています。戦争のために民間兵が雇われ、移植手術のために臓器が売買され、企業の名前を冠した競技場や劇場はいたるところにあります。それらは合法ではありますが、ゆきすぎて割り切れない思いを抱くことこともしばしばです。

この本では、主にアメリカでのさまざまな事例が紹介されていますが、え~っと驚くようなものもたくさんありました。例えば、出産を代行してもらう(代理母)、額(ひたい)に広告を刺青で入れてもらう、議会を傍聴したいロビイストに代わって徹夜で行列に並んでもらう…など。

お金を払う側と報酬を得る側がお互いに納得しているのですから、周りがとやかく言うべきではないのかもしれませんが、そこには”正しくない価値観”が存在するように思えて、なんとなく納得がいかない気持ちが残るものもありました。

つい先日、パキスタンのクイズ番組で、身寄りのない赤ちゃんが子どものいないご夫婦にクイズの景品として贈られたことが、物議を醸していましたが(ニュースはコチラ)、私たちは特に”命”や”心”が商品のように扱われることに、激しい抵抗を覚えます。

一冊本を読むごとに2ドルもらえる学校。優先的に名医に診療してもらえる医療コンシェルジュ。聖域ともいうべき”教育”や”医療”に、市場の論理はどこまで許されていいでしょうか。個人の価値観はさまざまで、その線引きはなかなか難しいものがあると思います。

身近な話では、アイドルの人気投票券が大量に販売されたり、税収を増やすためにカジノを作ろうという構想を聞いたりすると、たとえそれが経済を活性化することにつながるとしても、私などは、道徳に反する気がして、どうしても反発を感じてしまいます。

サンデル教授は、本の中で私たちにさまざまな問いを投げかけますが、明確な回答は示されていません。事例の数は膨大で多岐にわたり、その情報収集力と分析力に驚かされました。

よくよく考えてみれば、お金は価値があるようなないような、不思議な存在だなあと思います。”お金では買えないもの”を残しておくことが、人間が人間であるための最低条件になるのでは?そんな気がしてなりませんでした。

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コメント

今晩は。cherry

サンデル先生のこの新刊も今、売れてますよね!
読んでないのですが、やっぱり前作と同じく、読者に対して問題を提起して、一緒に考えていくっていう、授業でのスタイルの本みたいですね。

「お金で買えないもの」・・・。たくさんあるけれど、なぜお金では買えないのか・・まで、普段はあまり深く考えませんよね。

あらためて提起されて、思考をめぐらせる事の重要性を教えてくれそうです。

「ハーバード白熱教室」は本よりも、授業風景の映像の方が絶対に楽しいですよ。また再放送やらないかしら?

投稿: ごみつ | 2013年8月 6日 (火) 02時06分

お金で買えないもの・・・映画や小説などで
テーマになることが多く、ちょっと、考える機会はありますが、
深くは考えませんでした(笑)
お金では買えないものは沢山あるとは思っていても
ある時は、お金で価値を比較している自分もいて、
そういった意味では、お金はモノの尺度だとは思います。
その尺度では収まらないもの、そんな比較できない大切な、
貴重な体験を沢山していきたいものです。

投稿: イザワ | 2013年8月 6日 (火) 02時34分

☆ ごみつさま ☆
こんばんは♪
サンデル先生の本、おもしろかったです!
脳のいろいろなところが刺激される感覚でしょうか。
今度またTVで白熱授業を放映することがあったら
是非見てみたいです。

私のようにおっとりしている人間には
「よくもまあ、そんなことが思いつくな」と感心するぐらい
いろいろな”商品”が登場します。

お金で買えないもの=お金で買うべきではないもの?
例えば純粋な善意が、お金に換算されることで
尊さが失われてしまうこともありますし…
なかなか一筋縄ではいかない問題ですね。think

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2013年8月 7日 (水) 00時42分

☆ イザワさま ☆
こんばんは。
通常では、お金はものの価値をはかる尺度なのでしょうが
そこに道徳的・政治的な問題がからむと
価値の意味が変わってしまうことがあるのでしょうね…。

その昔、O.J.シンプソンが無罪になった時に
アメリカでは正義も買えるのか、と驚いたことを思い出します。
映画などでも、司法取引とか出てくることがありますし…。

アメリカは拝金主義の傾向が強いように思いますが
ヨーロッパでは、まだ道徳心が生きているな
と思える例も紹介されていて、救われる思いがしました。

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2013年8月 7日 (水) 01時02分

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