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フェルディナント・フォン・シーラッハ 「コリーニ事件」

ドイツのミステリー作家、フェルディナント・フォン・シーラッハの第3作にて初めての長編小説、「コリーニ事件」(Der Fall Collini / The Collini Case)を読みました。

Collini

シーラッハは、デビュー作の短編集、「犯罪」を読んでからの大ファン。今回は、初めての長編小説ということで、楽しみにしていました。

舞台は、2001年ベルリン。著名な実業家マイヤー氏が高級ホテルの一室で惨殺されます。逃げ隠れせず間もなく逮捕された犯人は、コリーニという名のイタリア系移民の工員、67歳。新米弁護士ライネンは事務所を開設して2日目に、ごく軽い気持ちでコリーニの国選弁護人を引き受けます。

凄惨な殺し方から、そこには強い殺意があったと思われますが、2人の接点は見つからず、またコリーニは決して動機を語ろうとしません。やがて被害者のマイヤー氏が少年時代の親友の祖父であることを知ったライネンは、いきなり初仕事で、公職と私情とのはざまで苦悩することになります...。

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はじめは比較的ゆるやかなテンポで、シーラッハはやはり短編向きの作家さんかな...?と思いながら読み進めましたが、法廷の場面に入ってからの緊迫した展開はさすが。現役の刑事弁護士でもあるシーラッハの筆は冴えわたり、ぐいぐいと引き込まれました。

コリーニは自らの凶行を認め、弁解せず、理由をすべて胸の中にしまいこんだまま、罪を潔く受け入れようとします。しかし動機を明らかにすることで、少しでも罪を軽くしようと奮闘するライネンは、ある手がかりをつかんだことで、この事件に秘められた哀しい過去を解き明かします。

コリーニが人知れず抱えてきた苦しみ、それがある法の改正によって絶望へと変わった時、おとなしい善良な市民であった彼を何かが突き動かしたのです。コリーニの行き場のない悲しみを思い、胸を衝かれました。

事件の謎そのものは、過去にもさまざまな小説が取り上げていることで、シーラッハのプロフィールを知る人にはそれほど意外性はないかもしれません。それでも、この作品が私の心をとらえてやまないのは、シーラッハが抱えているものの大きさに、思いを寄せてしまうから。

新米弁護士ライネンのまっすぐな情熱が、シーラッハの姿と重なり、重苦しい事件の中に、すがすがしい余韻を残しました。

過去に読んだシーラッハ作品の感想はこちら。
book 「犯罪」(デビュー作・短編集)
book 「罪悪」(第2作・短編集)

シーラッハのHPを見ると、すでにドイツでは5作品が出ているようです。日本でのあと2作の出版が待ち遠しいです。

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コメント

セレンさん☆
これは面白そうですね!
彼の作品を知らなかった私ですが、かなり読んでみたくなりました。
やはり弁護士さんが書くからこそのリアリティなのでしょうね。

投稿: ノルウェーまだ~む | 2014年2月19日 (水) 15時22分

☆ ノルウェーまだ~むさま ☆
こんにちは。
今朝から女子フィギュアの結果にどんより落ち込んでいます...。

シーラッハ、ドイツで人気の作家さんですが
初めて読んだ時は、今までに出会ったことのない新鮮な感動を覚えました。
もしご興味がおありでしたら、デビュー作の「犯罪」がお勧めです☆

投稿: ☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ | 2014年2月20日 (木) 10時57分

こんばんは。

「コリーニ事件」表紙のイラストが素敵ですね。
シーラッハの感想記事、毎回面白そう!って思いながら、まだ未読です。

これ文庫にならないのかな~。

本はどうしても入手して読みたい派なので、中古あたってみようかな~?

とにかく楽しみです~~。happy01book

投稿: ごみつ | 2014年2月21日 (金) 00時20分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
「コリーニ事件」ちょっと渋い表紙がかっこいいですね。good

そうかー、シーラッハの作品、まだどれも文庫化されてないんですね。
いずれ手に入ることがあったら是非☆
ごみつさんもこの独特の雰囲気、きっと気に入られると思います♪

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2014年2月21日 (金) 10時35分

Schirachの長編があるんですね!それは興味があります!
セレンディピティさんは2作目の「罪悪」も読まれていたんですね、私はやっと暮れに読んだんです。薄い本なので日本行の飛行機の中で詠んだんですが、この短編は重かった!腑に落ちない暗い事件ばかりで、「男子校での事件」あたりでもうギブアップして、続きは帰りに読みました。「罪悪」は「え?この事件はこれで終わっちゃうの?大岡裁きはどうした?」って煮え切らない事件が多かったですね。セレンディピティさんも書いていらっしゃるけど、「夏祭りのレイプ事件」なんか、しょっぱなから「きたな…」って感じでした。同じような状況(レイプまではいかなかったけど)、よくドイツの夏祭りではありますから…

前作の話をしてしまいましたが、彼の作風はキレがよく、システマティックで読みやすいですが、この長編の後味はいいですか?「罪悪」みたいにずんっと重くなる様だったら、きっと読まないと思います(苦笑)「エチオピアの男」みたいな大岡裁きがいいなぁ

投稿: schatzi | 2014年2月21日 (金) 21時09分

☆ schatziさま ☆
こんにちは♪
schatziさんは、「罪悪」も読まれたのですね~。
これは「犯罪」に比べると、陰惨で後味の悪い作品が多かったですね。
先に「犯罪」を読んでいたので、シーラッハの別の面を楽しむことが
できましたが、最初にこちらを読んだ読者は、この作者を嫌いになって
しまうかもしれませんね。^^;

今回の「コリーニ事件」は長編といってもそれほど長くなく
さらっと読めます。新米弁護士ライネンの活躍が初々しく
これからシリーズ化されるといいな、と思いました。
ライネンの活躍でコリーニの動機は明らかになるのですが
それでもコリーニの心は救うことはできなかった...
そういう意味では哀しいお話ですが、私は嫌いではありません。
ドイツという国や、シーラッハの背負っているものの大きさを
知ることができて、読んでよかったと思いました。

投稿: ☆ schatziさま ☆ | 2014年2月22日 (土) 15時10分

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小説「コリーニ事件」を読みました。 著者は フェルディナント・フォン・シーラッハ 短編で傑作を書いていた著者の初の長編 とはいえ本作も200ページぐらいと短めですが ストーリーはシンプルに弁護士が殺人事件の弁護を引き受けるもので 被告も罪を認めているが、動機...... [続きを読む]

受信: 2014年11月13日 (木) 12時05分

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