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「偽りなき者」「ロイアル・アフェア 愛と欲望の王宮」

DVDで、デンマークの名優マッツ・ミケルセン主演の映画を2本見ました。いずれも昨年劇場公開された時に気になりながら、見逃してしまった作品です。マッツ・ミケルセンは日本でいえば渡辺謙さんみたいな存在でしょうか。渋くて味があって大好きな俳優さんです。

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偽りなき者(Jagten / The Hunt)

今年のアカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品。デンマークの小さな町の幼稚園で保育士として働くルーカス(マッツ・ミケルセン)は、園児で親友夫婦の娘でもあるクララの嘘によって変質者の汚名を着せられ、窮地に立たされます。

少女の嘘が男性の人生を狂わせる映画に「つぐない」という名作がありますが、「つぐない」が少女が意識して言った嘘だったのに対し、この作品では、幼い少女がたまたま聞きかじって言ったことを、まわりの大人たちが勝手に誤解し、話をふくらませ、ルーカスをいつの間にか犯罪者に仕立てます。

しかも、その根拠となるのは「子どもはウソをつかない」という盲信。昨日まで親しかった隣人、友人、そして彼をよく知らない人までが、うわさを鵜呑みにし、真実を確かめようともせず、悪意によってルーカスを追い詰めていくところが昨今のネット炎上にも近いものを感じて恐ろしい...と思いました。

息子と一部の友人がルーカスの無実を信じて戦ってくれたことで、ようやく疑いが晴れたのは救いでしたが、それまでの自分の行動を恥じることなく、手のひらを返したようににこにこと近づく町の人たちに、割り切れない思いを抱きました。

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ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮
(En Kongelig Affære / A Royal Affair)

昨年のアカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品。18世紀のデンマークで実際に起こった王室スキャンダルを題材にしています。イギリスからデンマークに嫁いだカロリーネ王妃と王の侍医との秘められた恋。啓蒙思想を持つ侍医による政治改革とその挫折を描きます。

イギリスから結婚を夢見て嫁いだ先の若き王クリスチャン7世は心の病を抱えていました。のちにクリスチャンは、シェイクスピアが好きで意気投合したドイツ人医師ストルーエンセ(マッツ・ミケルセン)を侍医として迎えますが、カロリーネもまたストルーエンセに惹かれていきます。

啓蒙思想を理想とするストルーエンセは王と王妃を動かして政治改革を進めていきますが、それをよく思わない王太后(王の継母)と保守派貴族たちは、王妃と侍医のスキャンダルをばらまいて民衆の怒りを焚きつけます。民衆のために努めてきたストルーエンセは、道半ばにして処刑されることに...。

王妃と侍医が惹かれあう気持ちはわかるけれど、国を改革するという大きな目的のためには行動を慎むべきだった...と思いました。それによって、心を病んでいるとはいえ純粋な王を裏切り、また、国の歴史を逆もどりすることになってしまったのですから。

とはいえ、映画としてはおもしろかったです。マッツ・ミケルセンほか、王妃を演じたアリシア・ヴィキャンデルも魅力的でしたし、新人ミケル・ボー・フォルスゴーが演じる王は「アマデウス」のモーツァルトみたい。なかなかの怪演でした。

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北欧の映画や小説はどちらかというと重くて暗い作品が多いですが、冬の厳しい寒さと夜の長さが影響しているのかもしれませんね。でも作品を通じて、その国の生活や文化、歴史に触れられることは楽しいです。

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映画」カテゴリの記事

コメント

こちらにも...
マッツ、ファンなのでどちらも楽しみにしていた作品ですが、マッツ映画は時代物より現代物が好きですね。
そう「偽りなき者」はオスカー外国映画賞にノミネートされてましたね。受賞は逃しましたが。
“子供は嘘をつかない。”はホント盲信だと思いました。

「ロイヤル〜」は全く知らないデンマークの王室スキャンダルが面白かったです。ドロドロではなくユーモアたっぷりな描き方も良かったです。

投稿: margot2005 | 2014年3月11日 (火) 21時04分

セレンさん☆
私も見逃してしまって、すごーく気になっていました「偽りなき者」
これはやっぱり見ないとですね☆

今日テレビで「海外の日本人妻は見た」というようなテレビでノルウェーのオスロを紹介していましたけど、そうそう、昼でもあのように暗くてじーっと暖炉の火を見つめて過ごすのよねーと思って見てました。
そんなわけで、どうしても重くて暗い作品になってしまうのですよね。

投稿: ノルウェーまだ~む | 2014年3月11日 (火) 23時54分

いつの時代も炎上に近いある意味いじめのような事が
おこっているんですね。
現代のネットでの炎上は不特定多数からの攻撃ですが、
ネットがない時代は、知人友人からも・・・と思うと
やりきれなくなります。

歴史を変えてしまうほどの不倫とは、なんともスケールが
大きい!!

投稿: イザワ | 2014年3月12日 (水) 01時34分

☆ margot2005さま ☆
こちらにもコメントありがとうございます♪
マッツ・ミケルセン、渋くてすてきな俳優さんですね。
ロイヤル・アフェア、偽りなき者...と2年連続で
デンマーク映画が外国語映画賞にノミネートされましたね。
デンマークはスザンネ・ビア監督など活躍されているし
骨太の見ごたえのある作品が多いですね。

「偽りなき者」 女の子は怖いな...なんて思っちゃいました。
「ロイヤル・アフェア」では、王室スキャンダルを通じて
デンマークが少し身近に感じられました。おもしろかったですね。

投稿: ☆ margot2005さま ☆ | 2014年3月12日 (水) 15時17分

☆ ノルウェーまだ~むさま ☆
こんにちは。
まだ~むさんも「偽りなき者」気になっていらしたのですね。
ちょっとしたボタンのかけ違いで、こういうことがいつでも
起こりうるような気がして、怖くなりました。
よかったらご覧になってみてください☆

オスロがTV放映されていたのですね。
懐かしくご覧になったことでしょう。
北欧は冬が長い分、あかりを上手に取り入れたり
生活を楽しむ工夫をいろいろご存知なのでしょうが
映画や小説ではぞくっとするものもありますね。(ミレニアムとか)
そんなギャップがまた魅力的だったりします☆

投稿: ☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ | 2014年3月12日 (水) 15時31分

☆ イザワさま ☆
こんにちは。
「偽りなき者」の舞台は小さな町という設定だったので
都会に比べて少し排他的なところがあるのかもしれません。
いずれにしても、うわさが一人歩きしてしまうのは怖いですね。

「ロイヤル・アフェア」で描かれているのは
デンマークではよく知られている王室スキャンダルだそうです。
そんな他国の歴史に触れられるのも、映画の楽しみですね。

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2014年3月12日 (水) 15時39分

「偽りなき者」はつらい映画でしたね。
愛犬が袋の中に入れられて…
私はとても正視できませんでした。
最後の銃声も、あれは一体何だったのか、
どのようにお感じになりました?

投稿: zooey | 2014年3月14日 (金) 09時24分

☆ zooeyさま ☆
こんにちは。
「偽りなき者」あのわんちゃんの場面は本当に辛かったですね。
直接自分に被害があったわけでもないのに
あれほどのまでの悪意はどこからくるのでしょう...
そこが私には理解できません。

最後の銃声は何を意味していたのでしょうね。
表面では笑顔を装いながら、なおルーカスを
憎んでいる人がいるのでしょうか??

投稿: ☆ zooeyさま ☆ | 2014年3月15日 (土) 22時17分

こんにちは~。
ほぼ同時期に同じ作品を鑑賞していたなんてシンクロ二シティですねwink

クララの父親は無実だと分かったでしょうが、他の人はどうでしょう?
余程皆が納得する証拠でもない限り、一度芽生えた不信感・嫌悪感、特に性犯罪は、なかなか消えないという事でしょう。
あの銃弾は、自分が鉄拳を下すといった正義に裏打ちされた狂信的な行いなのではないでしょうか?表面的にはまたみんなに受け入れられたように見えますが、今のルーカスの置かれた状態の方が怖いかもしれません。

投稿: ryoko | 2014年3月19日 (水) 10時38分

☆ ryokoさま ☆
こんにちは。
ほんとうに! うれしい偶然でした。
いろいろ考えさせられる作品でしたね。

事件が一件落着したかに見えた後だっただけに
あの銃声は怖かったですね。
たしかに無実が証明されたからといって
ほんとうに潔白かどうかは当人しかわからないわけで...
一度不信感が植えつけられてしまうと、それを払拭することは
なかなか難しいのかもしれません。

投稿: ☆ ryokoさま ☆ | 2014年3月19日 (水) 14時34分

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