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「あなたを抱きしめる日まで」

イギリスの名優、ジュディ・デンチ主演のヒューマンドラマ、「あなたを抱きしめる日まで」(Philomena)を見ました。14歳で出産し50年間生き別れにになっていた息子を探す旅。「クイーン」のスティーヴン・フリアーズ監督が贈る、実話に基づく作品です。

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予告を見たときからジュディ・デンチの圧倒的な演技に引き込まれ、涙ぐんでしまった作品。少し重そうだな...と覚悟しつつ、思い切り泣きたくて?楽しみにしていましたが、映画はイギリスらしいユーモアを交え、思いのほか軽やかな印象でした。多くの方にお勧めしたいすばらしい作品です。

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敬虔なカトリックの国アイルランドでは、かつて結婚せずに子どもを生んだ女性たちは修道院に入れられ、罪を洗い流すためと称して洗濯の重労働をさせられていたそうです。子どもに会えるのは一日にたった1時間だけ。

ジュディ演じるフィロミナもそうした女性たちのひとりでしたが、息子が3歳の時に、修道院によって勝手にアメリカ人夫婦のもとに養子に出されてしまったのです。フィロミナは修道院との約束に従ってそのことを誰にも明かしませんでしたが、片時も息子を忘れたことはありませんでした。

そして50年後、イギリスでいっしょに暮らす娘に初めて息子の存在を打ち明けたフィロミナは、ひょんなことから元BBCの政府担当記者マーティン(スティーヴ・クーガン)の助けを得て、いっしょに息子を探す旅に出ることになります。この2人のやりとりが、実に楽しい。

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いわゆるエリートで無神論者のマーティンと、大衆的な恋愛小説が好きで信心深いフィロミナとは、最初はユーモアのセンスもまったく噛み合わないのですが、そのちぐはぐなやりとりの妙が笑いを誘い、物語の深刻さを柔らげています。

そして、ジュディ・デンチ演じるフィロミナがなんともチャーミングな女性なのです。童女のようにかわいくて純粋な心を持つフィロミナと接していくうちに、誇り高いマーティンが少しずつ変わっていくところもとてもよかったです。

息子の足跡をたどる過程は謎解きとしても引き込まれましたが、結末については映画を見ていただくとして...最後のフィロミナの勇気あることばに、私は激しく心を打たれました。穏やかで厳かなその表情は気高く、フィロミナが聖女のように見えました。

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マグダレンの祈り(The Magdalene Sisters)
アイルランドのマグダレン洗濯所を舞台に、フィロミナのような女性たちの苦しみの日々を描いた作品。辛そうですがこちらも近いうちに見たい。

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オレンジと太陽(Oranges and Sunshine)
イギリス政府によるオーストラリアへの強制児童移民制度の実態を描いた作品。今回の映画と同じく、人の心を救うはずの教会で、母子を引き裂く残酷な犯罪が行われていたことに衝撃を受けます。感想はコチラ

Mother_and_child

愛する人(Mother and Child)
14歳で子どもを生み手放すことになった母と娘の37年後の葛藤と、不思議な運命のめぐり合わせを描きます。地味ながら心に染み入る作品。感想はコチラ

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映画」カテゴリの記事

コメント

こんにちは!

お邪魔します!

すばらしいドラマですね。

おもしろそう!

投稿: 幸奈 | 2014年3月19日 (水) 14時57分

こんにちは。cherry

ツイッターでの感想ツイートでも、この映画の良さが伝わってきましたよ。
映画の印象が鮮明な時に、一番心に残った事なんかをツイートしておくと忘れないし、記事で書きたい事のコアが確認できて良いですよね。
メモになる。happy01

ジュディ・デンチはいつでも演技が素晴らしいので、必ず見ておきたい作品ですね。それにしても、アイルランドでは未婚の女性は修道院にいれられてしまってたのですね。

キリスト教にせよ、イスラム教にせよ、厳しい戒律は、時に女性に対してとても無慈悲で厳しいですよね。

この映画の結末がとても気になります!いずれ必ず見たいです。

投稿: ごみつ | 2014年3月19日 (水) 16時39分

「マグダレンの祈り」「オレンジと太陽」「愛する人」
どれも観ました。
この中では「マグダレン…」が一番衝撃的だったでしょうか。
まだ近年までこんなことが行われていたなんて。
セレンディピティさんとは映画の趣味が共通するようで嬉しいです。
「あなたを抱きしめる日まで」も観るのを楽しみにしています。

投稿: zooey | 2014年3月19日 (水) 18時14分

☆ 幸奈さま ☆
こんにちは。
コメント、ありがとうございます。

「あなたを抱きしめる日まで」すてきな作品でしたよ。
よかったらご覧になってみてください☆

投稿: ☆ 幸奈さま ☆ | 2014年3月20日 (木) 10時44分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
そうそう、感動が冷めないうちにツイートしておくと
自分がその時何を感じたか、覚書になりますし
その後、記事を書くのがラクになりますね。wink

ジュディ・デンチ、今回も期待通りにすばらしい演技でした。
心に悲しみの過去を秘めながら、愛情深く生きる
すてきな女性をみごとに演じていましたよ。

未婚で妊娠した女性や、美しいというだけで男性を誘惑したとされて
修道院に入れられてしまったそうです。
これについては改めて「マグダレンの祈り」を見てみようと思います。

ミステリーとしてのおもしろさもありましたよ。
是非いつかご覧になってみてください☆

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2014年3月20日 (木) 10時55分

☆ zooeyさま ☆
こんにちは。
zooeyさんは、どれもご覧になったのですね!
「マグダレンの祈り」はかなり強烈なのでは...
と覚悟していますが、是非見ておきたいです。

zooeyさんがご紹介される映画や本は、私にとっても興味深く
いつも刺激になっています。
これからも楽しみにしています。

「あなたを抱きしめる日まで」よかったら是非☆ お勧めです。

投稿: ☆ zooeyさま ☆ | 2014年3月20日 (木) 11時28分

こんばんは。
いい映画でしたよね~。
思いテーマなのに、爽やかなエンディング。
私も、シスターと対峙したフィロミナは、長年神に仕えてきたシスターにも到達できない聖女の域に達していましたね。
「マグダレン…」未見なので、見てみようと思っています。
彼女の息子さんのストーリーも映画になりそう。

投稿: ryoko | 2014年4月 1日 (火) 23時52分

☆ ryokoさま ☆
こんにちは。
すばらしい作品でしたね。
ryokoさんが今年のベスト3に入るとおっしゃってましたが
私も今年見た映画の中で現時点でのベストです。good
ジュディ・デンチとスティーヴ・クーガンが
なんともいい味を出していましたね。
最後のフィロミナの勇気あることば、態度に圧倒されました...。
息子さんの人生もまたドラマティックでしたね。
「マグダレン...」私も見てみようと思います。

投稿: ☆ ryokoさま ☆ | 2014年4月 3日 (木) 10時04分

こんばんは。TBありがとうございます。
中々素敵なドラマでしたね。

上に書かれた「マグダレンの祈り/オレンジの太陽/愛する人」はどれも素晴らしい作品です。愛する子供との仲を突然引き裂かれてしまう母親の気持ちなんて考えられないです。
私自身息子の母親なので、本作の結末はとても悲しかったです。ハッピー・エンディングだとばかり想像していたものでなおさらでした。
フィロミナとマーティンのコンビが良かったです。演じる二人もナイスでした。

投稿: margot2005 | 2014年4月 5日 (土) 19時35分

☆ margot2005さま ☆
こんにちは。
心に残るすばらしい作品でした。

子をもつ母親として、なおのこと感情移入して見てしまいました。
また、人の心を救うはずの教会が、母子を引き裂くという
残酷な行為を行っていたことに、衝撃を受けました。
シスターたちは、自らを厳しく律することの反動が
女性の幸せを罰することに向かったのでしょうか。神様は決して
そんなことは望んでいらっしゃらないと思うけれど...
それだけにフィロミナの勇気あることばに心打たれました。

最初は凸凹コンビだった2人が、最後には親子のように見えました。
フィロミナは新たにすてきな息子を得ましたね。

投稿: ☆ margot2005さま ☆ | 2014年4月 6日 (日) 01時57分

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