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東京都美術館 「バルテュス展」

東京都美術館で開催中の「バルテュス展」(~6月22日まで)を見に行きました。20世紀最後の巨匠といわれるバルテュスの、油彩画の代表作40点以上を含む100余点を公開する、没後はじめての大回顧展です。

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私がバルテュスを知ったのは学生の頃。新聞の美術欄で見た「街路」「コメルス・サンタンドレ通り」などの作品が特に印象に残っています。時が止まった、というより不自然に硬直した空間。そこにバルテュス自身の謎めいた印象が重なり、その後も気になる存在となりました。

今回の企画展では、バルテュスの作品が時系列に紹介されるとともに、晩年をすごしたスイスのアトリエ(再現)や家族のフォトなども公開され、バルテュス氏が歩んだ人生と、感性の一端に触れることができました。

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自画像の「猫達の王」。バルテュスは幼少期に飼い猫ミツとの出会いから別れまでを40枚の絵本に描き、それがデビュー作となりましたが、その後も猫をモティーフとした作品を数々残しています。猫はある時は自らの分身であり、自身を猫たちの王と位置づけていたようです。

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「美しき日々」 バルテュスは、少女の刺激的な姿を描いた作品を数多く残しました。最初は個展を成功させるための話題作りだったということですが、その後は少女の姿に完璧な美の象徴を見出し、その姿を追い求めました。

どの絵にも隠れたメッセージがあるように思いますが、発表当時は賛否両論、非難轟々、大センセーションを巻き起こしただろうと想像します。私は一連の作品に、写真家のアラーキー(荒木経惟さん)を思い出しましたが^^ 芸術とは何かという永遠のテーマを投げかけられた気がしました。

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(左)エミリー・ブロンテの小説「嵐が丘」の挿絵より。バルテュスは、小説のキャシーとヒースクリフの悲恋を、(のちに最初の妻となる)アントワネット・ド・ヴァトヴィルへの切ない恋心に重ねて、この一連の作品を描いたそうです。

(右)「キャシーの化粧」 嵐が丘の挿絵から、さらに内面に踏み込んで描いているように感じられます。左のヒースクリフは、苦悩するバルテュスの姿にしか見えません。ムンクの「嫉妬」という作品を思い出しました。

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「樹のある大きな風景 (シャシーの農家の中庭)」 バルテュスは45歳の時に、パリからブルゴーニュ地方のシャシーの城館に移り住みました。穏やかで美しい農村風景に心がやすらぎます。

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「地中海の猫」 がらりと変わった画風にびっくり。パリの地中海料理レストランのために描かれた作品だそうです。これからお魚を食べようとしている猫ちゃんは、バルテュスの分身でしょうか。

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「朱色の机と日本の女」 これまたアラーキーの作品みたい。モデルは節子夫人です。バルテュスは来日した時に学生だった節子さんにひと目で惹かれ、その後ご結婚されました。この作品からは浮世絵の影響とチャレンジ精神が伝わってきますが、少々違和感も覚えました。

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バルテュスが晩年を送ったスイス グラン・シャレーのアトリエの再現。自然光の差し込む温かみのある空間でした。20世紀に活躍しながら、バルテュスが、いわゆる抽象的な現代美術に向かわなかったのは、豊かな自然の中で季節の移ろいを感じながらすごすことを愛したからかもしれない、と思いました。

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最後に私が気に入った作品を。(左)「窓、クール・ド・ロアン」 (右)「ジャクリーヌ・マティスの肖像」。ジャクリーヌ・マティスは、画家のマティスの孫娘です。

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コメント

セレンさん☆
いいお天気の連休、楽しんでいらっしゃることでしょう。

バルテュスの作品は独特のセンスがありますよね。
挿絵を多く描いていたとすると、なるほど・・・とも思います。
どこか違和感のあるデフォルメされた人物像は、こちらに訴えかける何かを感じますね~

投稿: ノルウェーまだ~む | 2014年5月 4日 (日) 12時34分

☆ ノルウェーまだ~むさま ☆
こんにちは。
連休後半は、気持ちのよい五月晴れが続いていますね。
私は近くや家で、のんびりすごしています。

バルテュス、少女の絵はインパクトがあって印象に残っていましたが
淡い色彩の風景画や、思いがけないポップな作品など
いろいろな作品を見ることができて楽しかったです。

特に人物画には強烈な個性を感じますね。

投稿: ☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ | 2014年5月 4日 (日) 15時07分

こんばんは。

わ~、やっぱりバルテュス展、良さそうですね。
バルテュスの奥さんって日本人だったんですね!はじめて知りました。

本当、作品によってタッチが変わって、見た時の印象が大きく異なりますね。
私もはやく見に行かなくっちゃ~~。

明日は休みなのですが、友人と「アナ雪」見に行く予定で~す。happy01

投稿: ごみつ | 2014年5月 5日 (月) 01時00分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
バルテュス展、少女を描いたセンセーショナルな作品は
やはりインパクトがありましたが、それ以外に
彼の作品の変遷をたどることができて、楽しかったです。

節子さんは日本のメディアでもよくお見かけしますが
今回の回顧展開催にあたって、ずいぶん尽力してくださったようですよ。

アナ、見に行かれるのですね~☆
私は映画を見ていないのに、主題歌が頭をぐるぐる回って
困っています。(笑)

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2014年5月 5日 (月) 13時09分

バルテュスについて全然詳しくないのですが…
「朱色の机と日本の女」は不思議な絵ですね。
浮世絵のような感じもあります。
これだけ見たら、日本女性をどう思ってるの?と腹が立ちそうですが
節子夫人と仲がよかったバルテュスが描いたのですものね。
そう思って納得することにしますw

投稿: zooey | 2014年5月 7日 (水) 19時07分

☆ zooeyさま ☆
こんにちは。
バルテュスの晩年の作品は、やはり節子さんの影響か
歌舞伎の見栄のポーズを取り入れたものや
この絵のように浮世絵的な作品がありました。
日本文化をリスペクトしてのことなのでしょうが
日本人から見ると、ちょっと違和感も感じますね。^^

バルテュス氏は、和服もとてもお似合いで
川端康成みたいな雰囲気がありました。

投稿: ☆ zooeyさま ☆ | 2014年5月 8日 (木) 08時45分

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今年に入ってから展覧会の記事はまったくつくっていなかったので、記録だけ残しておき [続きを読む]

受信: 2014年9月 5日 (金) 23時08分

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