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東京都写真美術館 「世界報道写真展2014」

東京都写真美術館で開催されている「世界報道写真展2014」(~8月3日まで)を見に行きました。昨年一年間に撮影された写真を対象とする「世界報道写真コンテスト」の受賞作品から、9部門約140点が展示されています。

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毎年、紛争地域や、世界各地の深刻な問題をテーマにした写真が多く取り上げられる本展。衝撃的な写真も多いですが、私にとっては世界で今、何が起こっているのか、視覚的に知り得る貴重な機会となっています。

今年もそうした作品と向き合うべく覚悟していましたが、例年に比べると、いくぶんマイルドだったように思いました。だからといって昨年が平和だったわけではなく、写真の奥に見える背景について、考えさせられる作品が多かったです。

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大賞となったのは、アメリカの写真家ジョン・スタンマイヤー氏の作品です。アフリカ、ジブチの夜の海岸で、隣国ソマリアの安価な電波をとらえて、母国の家族と携帯電話で連絡を取ろうとする出稼ぎ労働者たちの姿を写しています。

一見、過去の大賞作品のような衝撃はありませんが、貧困、グローバリゼーション、テクノロジーと、現代を読み解くさまざまなテーマが見えてきます。ジブチは、アフリカからヨーロッパ、中東に出稼ぎに出る人たちの中継地となっているそうです。

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昨年亡くなった南アフリカのマンデラ元大統領。首都プレトリアの大統領府に遺体が安置され、最後のお別れに訪れる市民たちが長い列を作りました。写真は最終日になっても間に合わず、落胆している女性の姿です。

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シリア紛争によって国外に追われた難民の数は実に240万人にのぼりますが、そのうち18000人分の定住先しか確保できていない状況です。写真は、ブルガリアの廃校の体育館に設けられた、仮設避難所の様子です。

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テクノロジーの発達で世界はますますグローバルになっているといわれます。その一方で、(ジャングルの奥地や孤島に住む特定の部族ではなく)外界と接触を持たず、静かに暮らす人々を追った作品が目立ち、印象に残りました。

写真はロシアやウクライナで隠遁生活を送っている人々を写した一連の作品のひとつです。この他にも、ルーマニアで何世紀も変わらない自給自足の生活を送っている人々、オーストリアの孤立した小さな集落で生きる人々がそれぞれ紹介されていて、意外な発見がありました。

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自然やスポーツをテーマにした作品は、安らぎと感動を与えてくれました。写真はコンゴの森に住むボノボという動物。チンパンジーの仲間で、知性が高く、人間にもっとも近い猿といわれているそうです。愛くるしい表情の数々に心和みました。

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フランスで行われる犬ぞりレースの世界大会を空から写した作品。報道写真というよりアートのような美しさに心奪われました。

今年の受賞作品は、こちらのサイトで見ることができます。
camera WORLD PRESS PHOTO 2014

また、過去の感想はこちら。
pencil 世界報道写真展2013
pencil 世界報道写真展2012
pencil 世界報道写真展2011

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美術館・博物館」カテゴリの記事

コメント

こんにちはー。
興味深く拝見しました。
写真って、ときには記事として書かれた文章よりも、
いろいろ語ってくれるのですね。
大賞の写真は、ほんとに衝撃は受けないものの、
「現代」を感じる作品ですね。
構図はさすがにアートのように美しいです。

投稿: linen | 2014年6月19日 (木) 11時10分

セレンさん☆
これはいいですね!
やはり現代を知るためには、是非とも見ておきたいものだと思います。
多くの人が支援を必要とし、また「生きる」ことに一生懸命なのだと思うと、自らを振り返ってみるいい機会になりますね。

投稿: ノルウェーまだ~む | 2014年6月19日 (木) 22時58分

私も楽しみにしている展示です。
一瞬のシャッターチャンスを逃さない写真が多く、
目を見張ってしまいます。
私は、報道写真は撮影したことがありませんが、
頭が下がります。

投稿: イザワ | 2014年6月20日 (金) 02時13分

☆ linenさま ☆
こんにちは。
ご覧くださり、ありがとうございます。
そうですねー。
1枚の写真が100の言葉を語ることがありますし
その背景について、いろいろ考えさせられますね。

大賞の写真、私も最初はあっけなく思ったのですが
自分が知らなかった世界に気づかされました。
シルエットの構図も美しく、物語を感じる作品ですね。

投稿: ☆ linenさま ☆ | 2014年6月20日 (金) 18時35分

☆ ノルウェーまだ~むさま ☆
こんにちは。
ニュースだけでは知り得ないことを
さまざまな角度から見て、感じることができました。
それと、世界にはまだまだ未知なる場所やこと
知らない風習や問題があるんだな~
世界は小さくなっているといわれながら、まだまだ広い
と改めて気づかされました。

投稿: ☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ | 2014年6月20日 (金) 18時49分

☆ イザワさま ☆
こんにちは。
今年の大賞受賞作品、シルエットの表現に
イザワさんを思い出しました。^^

報道写真は、事実を正確に伝えるという使命があるので
一切の加工は認められていないそうですが
アートのように感じられる作品もありました。
どんな風に撮られたのか...
プロの方がご覧になると、また違った視点でおもしろいでしょうね。

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2014年6月20日 (金) 19時02分

こんばんはcherry

「世界報道写真展」も見に行かれるのが4回目ですか。毎年、きちんと見に行かれてて凄いですね。
それだけ、この展覧会が魅力のある内容なのだと思います。

私も、報道写真は大好きなのですが、なかなか時間がとれず・・・。

今回は確かに、表面的に見える衝撃度よりも、被写体の内面に迫った作品が多いみたいですね。

大賞になった作品からも、写真が象徴する背景の出来事に心を運ばれていく様で、芸術映画のワンシーンみたいです。

私も、いつか是非、この報道展足を運んでみたいです。camera

投稿: ごみつ | 2014年6月22日 (日) 01時42分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
世界報道写真展、ヘヴィーな作品も多いですが得るものが大きいので
毎年この時期になると、足を運ぶのを楽しみにしています。
ちなみに来年は、池袋の芸術劇場で開催だそうですよ。

今年の受賞作品は、例年に比べて刺激の強い作品が
少なめだったように感じました。
たしかにセンセーショナルな写真ばかりが評価されるようになると
このコンクール本来の目的が失われてしまうように思います。
選考委員の間で、原点に立ち返ろうという話が
あったのかもしれませんね??

大賞の作品をはじめ、多くがじっくり向き合い
多くのことを考えさせられるすばらしい作品でした☆

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2014年6月22日 (日) 12時26分

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