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目黒区美術館「マルク・シャガール」展 &ミュージアム・コンサート

目黒区美術館で開催中の「マルク・シャガール 版画の奇跡 ∞ 無限大の色彩」展(~6月8日まで)を見に行きました。20世紀を代表するフランスの画家シャガールの、版画の魅力にせまる作品展です。

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シャガールが描くファンタジーの世界が大好きなので、楽しみにしていた本展。目黒川沿いの青葉茂れる桜並木の下を、ぶらり歩いて訪れました。

今回展示されているのは、「ダフニスとクロエ」の挿絵として制作された多色刷りのリトグラフ全42点、自作の詩を添えたカラーとモノクロのリトグラフ作品集「サーカス」の全38点、そして初期に制作されたエッチングの傑作「死せる魂」全96点など。どれもシャガールの代表的な版画作品です。

シャガールの「サーカス」はいつ見ても心踊る大好きなモチーフですし、ロシアの文豪ゴーゴリの「死せる魂」の挿絵はロシア出身のシャガールならではの視点が感じられ興味深く見ましたが、今回は特に「ダフニスとクロエ」に描かれる物語の世界に魅了されました。

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「フィレーターズの果樹園」(「ダフニスとクロエ」より)

「ダフニスとクロエ」は古代ギリシアの詩人ロンゴスが書いた恋愛物語。ラヴェルのバレエ音楽をはじめ、美術、文学など、さまざまな分野にテーマを与えていますが、シャガールは出版者テリアードからの依頼で、この物語にリトグラフによる世にも美しい挿絵を提供しました。

水彩画で描かれた下絵をもとに、20色もの版を重ねて作ったという作品は、色の濃淡やデリケートな重なり合いによって、無限の色彩が生み出されています。奥行や陰影までみごとに表現されていて、その精巧なタッチと色彩の美しさに息を呑みました。

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「ニンフたちの洞穴での婚礼の祝宴」(「ダフニスとクロエ」より)

そして、作品の中に表現される物語の豊かさに引き込まれました。私は、三島由紀夫が「ダフニスとクロエ」に着想を得て書いたという「潮騒」を思い浮かべながら鑑賞しましたが、牧歌的な美しさや愛することの喜び、そして生命讃歌が伝わってきました。

擬人化された動物の姿や、異なる時間のできごとがいっしょに描かれている様子は、子供の絵本のようでもあるし、ちょっぴり漫画チックにも感じられます。愛らしいイラストに、思わず顔がほころびました。

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この日はシャガールをイメージしたミュージアム・コンサートもあると知り、事前にチケットをとって楽しみにしていました。ピアノ(江藤直子さん)、アコーディオン(大口俊輔さん)、タップダンス(村田正樹さん)というちょっと風変わりな組み合わせに、わくわく期待が高まります。

アコーディオンと聞いて、なんとなくミュゼット(パリのカフェ音楽)を想像していましたが、ちょっと違いました。シャガールと同時代に生き、親交もあったというプーランクやエリック・サティ、それからフランス6人組のひとりミヨーの音楽や、ヨーロピアン・ジャズのジャンゴ・ラインハルトなど。

江藤さんと大口さんのオリジナル曲も絵画的な雰囲気があってすてきでした。ピアノとアコーディオンに、おもちゃのピアノまで飛び出して。タップダンスやパントマイム、はたまたサティの作った詩の朗読を組み合わせたコンサートは、実験的おもしろさがあって楽しかったです。

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コメント

こんばんは!

わ~、良いな~シャガール!!
私、シャガールの個展はたぶん見に行った事がないです。
会期的にこの展覧会は無理ですが、是非、見に行きたいアーチストの一人です。
シャガール、素敵ですよね~。

この展覧会は「ダフニスとクロエ」の挿絵展なんですね。
岩波書店から、「ダフニスとクロエ」の豪華な画集が出てて(もう絶版かも?)わりと人気があったんですよね。
岩波文庫版(ロンゴスの。シャガール挿絵入り)は残念ながら絶版です。

シャガールをイメージしたコンサート、素敵ですね~。
楽しい一日になりましたね!

投稿: ごみつ | 2014年6月 4日 (水) 00時11分

シャガールをイメージしたコンサートですか。
難しい課題かと思いますが、色々と工夫を凝らした
エンターテイメントで楽しそうですね。
シャガール展、時間を作って見に行きたい!^^

投稿: イザワ | 2014年6月 4日 (水) 01時14分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
シャガール、すてきですよね。
今回は版画にまとをしぼった展覧会でしたが
透明感のある色彩がとても美しかったです。

「ダフニスとクロエ」のほか、「サーカス」のリトグラフ
「死せる魂」のエッチングも、全作品が公開されていました。

ごみつさんは「ダフニスとクロエ」の画集を
ご覧になったことがあるんですね!
シャガールが描くファンタジーの世界は
ほんとうに美しいですね。そしてかわいらしい...
私も大好きです。

コンサートも個性的で楽しかったです♪

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2014年6月 4日 (水) 08時33分

☆ イザワさま ☆
こんにちは。
シャガールは1887~1985年と長く生きた方ですが
20世紀はじめの近代音楽からジャズの初期までを
中心に演奏されていました。
モダンテイストのおしゃれな音楽でしたよ。
タップダンスやパントマイム、おもちゃのピアノも取り入れて
耳でも目でも楽しめました☆

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2014年6月 4日 (水) 08時42分

セレンさん☆
オペラに美術館にと有意義な日々をお過ごしですね。
私もシャガール大好きなんです。
彼は制作時期によって、大きく絵のタッチが違う人ですけど、やっぱり彼の代表作として有名な作品でおなじみの淡いタッチが、気持ちをなごませてくれていいですよね。

投稿: ノルウェーまだ~む | 2014年6月 4日 (水) 09時20分

☆ ノルウェーまだ~むさま ☆
こんにちは。
シャガール展、もっと早くに行きたかったのですが
ミュージアム・コンサートにあわせてこの日になりました。
そうそう、ちょうどこのあと
目黒通りでブルーインパルスを見かけたのですよ。
編隊を組んで、ゆっくり国立競技場に向かうところでした。

まだ~むさんもシャガール、お好きなのですね。
恋人たちや花束など...ロマンティックな作品も多く
女性の心をくすぐりますね。
今回は物語を題材にした作品で、シャガールらしい
ファンタジーの世界が堪能できました☆

投稿: ☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ | 2014年6月 4日 (水) 18時43分

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受信: 2014年6月11日 (水) 08時15分

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