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「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」

今世紀最高のピアニスト、マルタ・アルゲリッチの素顔に迫るドキュメンタリー映画、「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」(Bloody Daughter)を見ました。アルゲリッチの三女、ステファニーによる監督長編デビュー作です。

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子どもの頃から大好きだった憧れのピアニスト、マルタ・アルゲリッチのドキュメンタリー映画ということで楽しみにしていた本作、3週間ほど前に見に行きました。ドキュメンタリーだし、そんなに混んでいないだろう...と予約もせずふらりとでかけたら、まさかの満席。結局、タリーズで時間をつぶして次の回を見ることになりました。

考えてみたら、私の少し上の世代の方たちにとって、彼女はまさにクラシック界のミューズ。今なお圧倒的な人気を誇るのは当然のこと、と納得しました。現在、別府で毎年アルゲリッチ音楽祭が開催され、日本ともつながりの深いピアニストです。この音楽祭の模様も、映画で少し登場します。

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映画は、三女のステファニーが撮っていることもあり、ピアニストではなく、母親であり、ひとりの女性であるアルゲリッチの素顔が描かれています。演奏シーンはあまりなくて、寝起きの顔だったり、そのへんに寝そべっていたり...まるでホームビデオを見ているようなカジュアルさ。

アルゲリッチはマスコミ嫌いで知られ、取材にもほとんど応じないそうですから、それだけでも貴重なフィルムといえそうです。私自身、彼女のプライベートについてはほとんど気に留めてこなかったので、今回はじめて知って驚いたこともたくさんありました。

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私は、彼女がアルゼンチン出身のピアニストだと思っていたので、だからラテンならではの情熱的な演奏をされるんだなあとずっと思っていましたが、実はルーツはヨーロッパにあり、両親の仕事の関係でアルゼンチンで暮らしていたのだということ。今は、ベルギーを拠点に活動されているようです。

そして、指揮者のシャルル・デュトワと結婚していたことは知っていましたが、彼は2番目の夫であり、実はこれまで3回の結婚と離婚を経験し、3人の娘たちはすべて父親が違うということもはじめて知りました。

若い頃はとにかく美しくて、才能にあふれ、光り輝く存在だったので、恋多き女性だったというのも納得ですが、アルゲリッチは女性に生まれたことを何より誇りに思っていたと知り、うれしくなりました。だから彼女の強力な遺伝子パワーで、3人の女の子に恵まれたのかな?とも思いました。

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とはいえ、ふつうのおかあさんのような子育てはとても無理で、ステファニーは小さい頃は学校にも通えず、母といっしょに演奏旅行で世界中を飛び回るような生活だったそうです。それでもきっと、3人のお嬢さんたちはそれぞれの立場から母の背中をしっかり見て、成長されたのだろうな...と想像しました。

長女と次女は離婚によって親権が父親に移ったこともあり、アルゲリッチといっしょにすごした時間は短かったようですが、長女はヴィオラ奏者、次女はライター、三女は映像作家...とそれぞれ分野は違うものの、クリエイティブな世界に自分の道を見出し活躍しています。

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バロックから現代音楽まで、幅広いレパートリーをもつアルゲリッチですが、ステファニーがプロコフィエフのピアノ協奏曲が好きだというのに納得しました。私はラヴェルのピアノ協奏曲が好きなのですが、いずれにしてもアルゲリッチは、オーケストラを従えて、女王のように華やかに演奏するのが似合うように思うからです。

でもアルゲリッチ自身は、意外にもシューマンが好きなのだそうです。理由はわからないと言ってましたが、シューマンは「子供の情景」のようなかわいらしい小品集もありますし、なんとなくアルゲリッチの母なる部分に触れたような気がしました。

Argerich_5_2 若き日のアルゲリッチ

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コメント

セレンディピティさん、こんにちわ。
私が20代の半ばですから、今から40数年前、何かでアルゲリッチの肖像を見て感動したことがありますが、当時は確か独身だったと思います。その後3人の男性との間に3人の娘さんが出来ていたのですね。カトリックゆえにできたら産むということかも知れませんが、与謝野晶子を思い出します。彼女の演奏同様、凄まじいエネルギーを感じますね。その彼女がシューマンが好きって…自分にないものを求めるのでしょうか。

投稿: Bianca | 2014年10月30日 (木) 14時05分

ご無沙汰しておりました。
ここの所、大物の編集作業中心に活動していて
いましたが、やっと6時間半もののDVDの編集に
OKがでて一息です^^

やはり、天才的なアーティストは、生活的には破天荒の
性格の方が多いようで、美貌と才能を持つ、彼女も
まさしく、そんな感じですね。
3人の娘さんたちもアーティストとして育ち、素晴らしい。

私も、もっと破天荒にしないといけないな~(笑)
あ、だめだ。私の場合は、ただの破天荒だけが残ってしまう(笑)

投稿: イザワ | 2014年10月30日 (木) 15時02分

☆ Biancaさま ☆
こんにちは。
私もアルゲリッチのプライベートについてはほとんど知らなかったので
こんな風にドラマティックな人生を歩まれていたとは驚きました。
性格はさばさばとあっけらかんとしているように見えますが
実はすごく女性的、というか母性の強い方なのかな?とも思いました。

なるほど、与謝野晶子ですか!
情熱的で、それゆえに芸術の世界で生きてこられたところなど
なんとなく共通したものを感じますね。

シューマンが好きというのは意外でしたが
そこに彼女の海なる母性愛を感じました。

投稿: ☆ Biancaさま ☆ | 2014年10月30日 (木) 16時21分

☆ イザワさま ☆
こんにちは。
お仕事、お疲れ様です。

アルゲリッチ、芸術家として自由奔放に生きてきたようで
知らず知らずのうちに、きちんと子育てもされていて
すごいなーと思いました。
離婚したご主人と今もおつきあいがあって、
お子様同士も仲良くされているようですし
一般によくある面倒なあれこれを
すっかり超越してしまっている存在のようです。^^
これも彼女の魅力なのでしょうね。

イザワさんもお嬢さまがしっかりお父さまの背中を見て
カメラマンの道に進まれたのですものね...
すばらしいです☆

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2014年10月30日 (木) 16時35分

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