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菱田春草展 @東京国立近代美術館

招待券をいただいて、東京国立近代美術館で開催されている「菱田春草展」(~11月3日まで)を見に行きました。春草生誕140年を記念して、重要文化財4点を含む108点を展示する大回顧展です。

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菱田春草は、明治期を代表する日本画家。東京美術学校に入学し、横山大観、下村観山とともに岡倉天心のもとで学び、近代日本画の革新に貢献しました。本展では、36歳という短い生涯の中で、試行錯誤を重ねながら新しい日本画を追求した、春草の作品の変遷をたどることができました。

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卒業制作の「寡婦と孤児」。日清戦争の戦勝ムードの中、未亡人を描くというテーマの斬新さ、伝統的な日本画に光と影の西洋画の技法を取り入れた革新性から、学内で落第か傑作かの議論を巻き起こし、最終的に学長 岡倉天心の鶴の一声で、最優秀に選ばれました。

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「寒林」 卒業後、岡倉天心らとともに日本美術院を創設した年に描いた代表作です。これまでの日本画の特徴である輪郭線を取り払った春草独特の画法は、「朦朧体」(もうろうたい)とよばれ、批判されました。

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「王昭君」 絶世の美女ながら、絵師に賄賂を送らなかったために醜く描かれ、匈奴に嫁ぐことになった王昭君の悲劇を描いた作品。輪郭線のない朦朧体が功を奏し、衣装や肌の淡い色彩がソフトフォーカスで幻想的に浮かび上がって、とても美しかったです。テーマのドラマ性もあって、心に残る作品でした。

1903年にインド、1904年にアメリカ、ヨーロッパと旅しながら展覧会を開いた春草は、日本で朦朧体と批判された作品が高く評価されたことに自信をつけ、帰国してからは西洋画に影響を受けた作品を次々と発表しました。

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「賢主菩薩」 主題からは想像できませんが、袈裟の部分を近くで見ると、点描画法や補色対比など、西洋の印象派絵画の手法が取り入れられていることがわかります。また今回、絵具の科学調査を行ったところ、青、緑、黄色などに西洋顔料が使われていることがわかったそうです。

この後、網膜炎を患い視力が低下した春草は、代々木に移り住み病気療養することになりました。小康を得た時に周囲の雑木林を題材に、「落葉」の連作を制作しました。

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今回、前・後期あわせて全部で5作の「落葉」が展示されています。すっきりとした構図は琳派の影響も感じられ、私はどれも気に入りました。輪郭をもたない幹は位置と濃淡で奥行が表現されていますが、一方葉っぱには輪郭が施され、ボタニカルアートといった細密さでした。

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(左)「黒き猫」 (中)「柿に猫」 (右)「柿に烏」

代表作の「黒き猫」をはじめ、猫を描いた作品が勢ぞろい。よく見ると、輪郭をぼやかすことでビロードのような毛並みがみごとに表現され、触ってみたくなるほどかわいかったです。烏、雀、鹿など、身近な生き物を描いた作品は、どれも命が吹き込まれ、息づいているのを感じました。

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コメント

こんにちは。

菱田春草、名前は知ってましたが、こうやってきちんと彼の人となりとか、作品を見せていただいたのは初めてかも!

アップされた写真を見るだけでも、凄く素敵ですね~。私も実際に作品を見てみたくなりました。

最後の黒猫ちゃん、すごく可愛いですね。cat
「寒林」も見事だな~、私、こういう作品好きです!

最も注目したのはやっぱ王昭君ですね!漢は、匈奴(北方遊牧民族)対策によくこういう事やってたんですよね~。(しみじみ・・)

素敵な絵のご紹介、有難うございました!happy01

投稿: ごみつ | 2014年10月28日 (火) 14時04分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
菱田春草、私もこれだけまとまった作品を見たのははじめてでしたが
作品の変遷を通じて、彼の生涯をたどることができて
とても興味深かったです。
静かなる反骨精神や、弱きものへの温かいまなざしなど
人間としてアーティストとして、惹かれるものがありました。

黒猫ちゃんや落葉など、私は晩年の作品が特に気に入りました♪
近くで見ると、なおのこと繊細さと大胆さに圧倒されましたよ。

王昭君は、いかにも中国らしいエピソードだな~と思いました。
京劇の題材にもなっているそうですが
絵もドラマティックですてきでした。

あ、そうそう、ところで、先日ごみつさんが
台湾からの美術留学生のことをご紹介されていましたが
ちょうど春草と同じ頃に美術学校で学んでいたはずなので
ひょっとしたら席を並べたこともあったかも...?
なんて想像をふくらませました。confident

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2014年10月29日 (水) 10時32分

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