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山本有三記念館

週末、三鷹市にある「山本有三記念館」を訪れました。作家の山本有三が、1936~46年に家族とともに住んでいた洋館で、代表作の「路傍の石」もここで執筆されたそうです。戦後はGHQに接収されて、有三はやむなく転居し、返還されてからは三鷹市の施設となりました。

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芝生とお花で美しく整備された前庭の向こうに、木とレンガを組み合わせた味わい深い洋館があります。建物の大きさに比べるとこじんまりとした印象の扉をくぐり、中に入りました。受付をすませて1階の展示室を見ていると、スタッフの方が声をかけてくださり、館内を案内してくださることになりました。

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1階はダイニングルーム、リビングルーム、サンルーム、そして家族の憩いの場だったイングルヌックが公開され、有三の生涯や著作を紹介する常設展の展示室となっています。それぞれデザインの異なる3つの暖炉があり、床の木組みも凝っていて見ごたえがありました。

当時の流行を取り入れつつ、いろいろな建築様式が融合されているそうで、「小さなおうち」に登場する赤い屋根の家もこんな感じだったのかしら?と想像しました。設計者は不明ですが、材料はすべて国内で製造されたものだそうです。

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(左)山本有三のほか、谷崎潤一郎や菊池寛など文士の名前が並ぶ寄せ書き。(右)有三が、長男からの手紙に書き送った返事の手紙。2枚目には誤字脱字が列挙されていて^^; 国語教育に厳しい父親の顔がうかがえました。

栃木県出身の山本有三は小学校卒業後、丁稚奉公に出されましたが向学心を持ち続け、東京帝大に入学。在学中から劇作家として出発し、のちに小説も執筆するようになりました。後年は国語問題に取り組み、国語教科書の編集にも携わりました。

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(左)この家はもとは貿易商で大学教授の清田龍之介の住まいとして建てられました。氏の父親は牧師だったそうで、特にこの階段部分は正面に十字架のモチーフを取り入れたステンドグラスがあり、教会建築のようでした。 (右)2階にある、この家でただひとつの和室。

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2階は家族の寝室だったところが、企画展の展示室となっていました。戦後、有三はふりがなをつけなくてはならない漢字は廃止すべきだという考えを持ち、誰でも理解できるやさしいことばを使う文章を目指したそうです。また、口語憲法の成立や、当用漢字、現代かなづかいの制定にも深く関わりました。

たしかに昔に比べると、今の書きことばの日本語はだいぶ柔らかく、わかりやすくなっています。行き過ぎたら漢字を廃止した韓国語のような道をたどっていたかもしれませんし、ひょっとしたら英語が国語になっていたかも...言葉とは何か、しばし考えさせられました。(右)有三が編集した国語教科書。

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館内を見学したあとは、建物の裏に回りました。こちらが南向きなので窓も多く、表よりも華やいだ雰囲気です。広々とした裏庭は、今は有三記念公園として整備されています。

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裏庭には桜、ハナミズキ、紫陽花、もみじ、山茶花...と植えられ、四季折々の花や紅葉が楽しめそう。この日は紅葉しかけたハナミズキと、咲き始めの白い山茶花がとてもきれいでした。(右)奥には有三が好きだったという竹林と、故郷の栃木から取り寄せた石で作られた池がありました。

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門の前には中野から運んだという「路傍の石」のモデルとなった石が置かれています。人が踏みつけるくらいの小さな石をイメージしていたので、意外と大きくて驚きました。

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コメント

こんばんは。

へ~、三鷹に山本有三記念館があるんですね。知りませんでした。
この展覧会を見に行かれたんですか?

外観も内装も可愛らしい雰囲気ですね。何となくおとぎ話の中に出てくるお家みたいで面白い!

それと、彼が戦後の国語教科書の制定に加わっていたっていうのもはじめて知りました。
いわゆる当用漢字が定められた?っていうことかしら?

漢字は文字としては、複雑で奥が深すぎるのでどこかで線引きは必要だったろうと思います。

ちょっと余談ですが、私、今、中国で使われている簡体字って、てっきり新しく作ったんだろうと思ってたら、あれも昔からある字体なんですね!最近知ってビックリしました。(^_^;)

あと、日本語はあまりにも同音異義語が多すぎて、もう漢字なしでは文章に出来ないでしょうね~。韓国語には、同音異義語があんまりないって何かで読んだ事があります。

投稿: ごみつ | 2014年10月15日 (水) 22時08分

セレンさん☆
三鷹に山本有三記念館があって、しかもこんなに素敵だったとは…
表から見ても裏から見ても趣のあるなんて珍しい、素敵な洋館ですね~
暖炉のお部屋などは「きちんと」したつくりに見えて、なんだか誠実な印象がありますね。
それにしても路傍の石があんなに大きいとは!

投稿: ノルウェーまだ~む | 2014年10月16日 (木) 00時34分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
洋館を見るのが好きなので、ここは以前から行きたい
と気になっていたんです。
この企画展を見たのは偶然でしたが、なかなかおもしろかったです。
ボランティアの方の説明もあって、興味深く見れました。

山本有三は、戦後の国語教育に熱心に取り組んでいたようですよ。
私も教科書を編集したり、当用漢字の制定に関わっていたことを
はじめて知りました。

昔の文章は漢字が多いし、仮名はカタカナで読むのが難しいですが
かといって全部ひらがなだとかえってわかりにくいですものね。
言葉って生きていて、時代に合わせて変わっていくものなのだなあ
と改めて思いました。

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2014年10月16日 (木) 21時29分

☆ ノルウェーまだ~むさま ☆
こんにちは。
山本有三記念館、すてきな洋館でしたよ。
前から見るとちょっと無骨な作りにも見えますが
石を積み重ねたところがちょうど暖炉の煙突になっているんです。
少しうねの入ったガラスでできたステンドグラスも
クラシックな雰囲気でとてもすてきでした。
昔の建築はどこもしっかりとていねいに作られていますね。

路傍の石は大きくてびっくりしました。^^

投稿: ☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ | 2014年10月16日 (木) 21時37分

こんばんは。
いつもありがとうございます。
ここ1か月の間、撮影、レタッチ、編集とかなりの量の仕事量を
こなすのがやっとで、ブログもたまにアップはできたものの、
なかなか、他のことには手も付けられない状況でして、コメントを
頂いておりながら、大変失礼しておりました。
来週、中頃には目処がつきそうになってまいりました。
まずはコメントを頂いておりました御礼に。。。

もう少しで写楽展、いけそうです^^v

今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: イザワ | 2014年10月17日 (金) 01時15分

☆ イザワさま ☆
こんにちは。
お仕事、お忙しそうですが
お体をお大事になさってくださいね。
早く落ち着くといいですね。

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2014年10月17日 (金) 15時02分

山本有三記念館、ここのすぐ南側に友人の家があって、何度かお邪魔しています。
ブログにその様子をアップしたこともあります。
静かで綺麗な住宅街ですよね。
しかし記念館の中には行ったことがなくて、、、
これは一度行かなくっちゃ!

投稿: zooey | 2014年10月19日 (日) 13時28分

☆ zooeyさま ☆
こんにちは。
zooeyさんは、以前ジブリ美術館の時に
三鷹のお友達のおうちに遊びに行かれたと書かれてましたね。
山本有三記念館、建物も展示も興味深く
楽しく見学しました。機会がありましたら☆

投稿: ☆ zooeyさま ☆ | 2014年10月20日 (月) 12時51分

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