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「誰よりも狙われた男」

今年2月に亡くなったフィリップ・シーモア・ホフマンの最後の主演作、「誰よりも狙われた男」(A Most Wanted Man)を見ました。「裏切りのサーカス」のジョン・ル・カレ原作の、味わい深い硬派なスパイ映画です。

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ドイツ、ハンブルク。諜報機関でテロ対策チームを率いるバッハマン(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、ロシアからの密入国者イッサに目を留めます。イスラム過激派として指名手配されている彼は、人権団体の弁護士アナベル(レイチェル・マクアダムス)を介し、銀行家ブルー(ウィレム・デフォー)と接触しようとしていました。

バッハマンはイッサの行動を利用することで、かねてから追っていたイスラムテロ組織の資金源となる人物をあぶりだそうと画策しますが、一方、別の諜報機関やCIAは、イッサ逮捕に向けて動き出します...。

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フィリップ・シーモア・ホフマン主演で、ル・カレのスパイ小説が原作、ということで楽しみにしていましたが、期待通りにおもしろかったです。かっこいいヒーローもいなければ、派手なアクションもありませんが、息もつかせぬ緊迫した展開に、最後までドキドキと引き込まれました。大人のための上質なサスペンスです。

なんといってもホフマン演じるバッハマンの、これまで数々の修羅場をくぐり抜けてきたであろう人間としての深みが魅力的。彼はかつてCIAにしてやられた経緯があり、今は組織の片隅にいますが、信念に従い、あくまで泥くさく、プロに徹した仕事ぶりを見せてくれます。

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最初のうちはバッハマンの真の目的が見えていませんが、やがてそれが入念に準備された緻密な計画の上にあることが明らかになり、じっくり確実にターゲットとの距離を縮めていく展開に、鳥肌のたつような興奮を覚えました。

舞台がドイツのハンブルクというのがまた効いています。重厚な石造りの街並み、陰鬱な曇り空。バッハマンを支える有能なスタッフ役を、ニーナ・ホスにダニエル・ブリュールと、ヨーロッパの俳優さんが演じていたのも心憎いキャスティングでした。

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ひとつわからなかったのは、どうして”彼”は父親を裏切ってバッハマンに協力したのだろうか?ということ。これはイッサが父親に反発して遺産を寄付しようとしたのと、同じ心理なのかしら?そこが腑に落ちませんでした。(私が見落としていたのかもしれませんが)

それにしても役柄上とはいえ、バッハマンのチェーンスモーキングぶりが目を引きました。最近は映画でも、煙草を吸うシーンがどんどんなくなりつつあるので、よけいに気になったのかもしれませんが、彼の昔気質の性格がよく表れていたように思います。

バッハマンは最終目的を達したら、あとは人情味あふれる取り計らいを算段しますが、ラストは思いがけない結末を迎えます。ドイツとアメリカという両国の違いが鮮やかに描かれていましたが、思わず地団駄を踏んでしまいました。

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映画」カテゴリの記事

コメント

こんばんは!cherry

面白そうですね~~!!
記事を読ませていただくと、やっぱり、主人公のキャラクター設定がスマイリーに似てるところがある感じがします。

私、「裏切りのサーカス」が凄く好きなので、この作品もかなり楽しめそう!
P・S・ホフマンの主演遺作でもある事だし見に行きたいな~。行けるかしら~~。(^_^;)

投稿: ごみつ | 2014年11月 1日 (土) 00時22分

セレンさん☆
これ相当面白かったですよねー!
この手の作品が大好きなので、とっても気に入ってしまいました。
彼が父を裏切ったのは、やはりイッサと同じで倫理に反することが嫌だったのでは・・・?と思いました。
もしくは、最も身近な人に近づいて巻き込んでしまう、バッハマンの手中に落ちただけかもですが。

投稿: ノルウェーまだ~む | 2014年11月 1日 (土) 00時40分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
この作品、すごくおもしろかったです!
「裏切りのサーカス」よりお話としてはシンプルですが
それぞれの登場人物の人間造形や
緻密に計算された物語の運びにうならされました。

ホフマンの演技も堪能できました。
お時間がありましたら是非☆

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2014年11月 1日 (土) 17時24分

☆ ノルウェーまだ~むさま ☆
誰よりも狙われた男、おもしろかったですね!
私もとっても気に入りました☆

なるほど...やっぱりイッサと同じく倫理の問題だったのでしょうか。
若さゆえの潔癖性が彼を決断させたのかもしれませんね...
おっしゃるように、バッハマンの長年の工作の賜物でも
あったのかもしれませんね。

投稿: ☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ | 2014年11月 1日 (土) 17時31分

こんばんは。
本作は素晴らしく見応えのあるスパイ映画でした。実はスパイ小説の大ファンで、アクションなしのこういった展開のドラマは大好きです。
ジョン・ル・カレは良いですね。出演者たちもナイスです。

本作はドイツが舞台ですが、フランスもテロ対策がスゴいようですね。しかしながらやはりCIA(アメリカ)はテロとなると執拗に頑張る気がします。

投稿: margot2005 | 2014年11月11日 (火) 22時56分

☆ margot2005さま ☆
こんにちは。
この作品、見応えがあっておもしろかったですね。
久々ぶりに緊迫した真の諜報戦を堪能しました。
ジョン・ル・カレの原作も読んでみたくなりました。
ヨーロッパ、それもハンブルクが舞台...というのが
またリアリティがありましたね。
ホフマンはじめ、俳優陣も演技もみなすばらしかったです。

ISISの問題もあって、特に地続きのヨーロッパは
今、テロの恐怖が現実のものとしてありますものね...
アメリカのテロ対策は一網打尽といった感じなので
バッハマンの職人のような地道な手法が印象に残りました。

投稿: ☆ margot2005さま ☆ | 2014年11月12日 (水) 09時39分

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