「ジャージー・ボーイズ」
クリント・イーストウッド監督の最新作、「ジャージー・ボーイズ」(Jersey Boys)を見ました。60年代に圧倒的な人気を誇ったポップスバンド、「ザ・フォー・シーズンズ」の栄光と影を描いたヒューマンドラマ。同名のブロードウェイミュージカルの映画化です。
ニュージャージーの貧しい移民の街で生まれ育ったトミーとニックは、軽犯罪に手を染めながらバンドを組んで音楽活動をしていました。やがて地元で有名な天使のような歌声をもつフランキー、すでにヒット曲を書いていた才能あるソングライターのボブを仲間に引き入れ、「ザ・フォー・シーズンズ」を結成します。
最初はほかの歌手のバックコーラスばかり務めていた彼らでしたが、ようやくレコーディングにこぎつけた「シェリー」が大ヒットしたのを皮切りに、次々とヒットを飛ばして大人気に。押しも押されぬトップスターへの階段をかけあがっていきます...。
イーストウッド監督の作品はどれも大好きですが、今回はミュージカルの映画化というのがちょっぴり意外で、興味津々楽しみにしていました。ひとことでいえばミュージシャンのサクセスストーリーなのですが、名匠イーストウッド監督がつむぐドラマの巧さに引き込まれ、心地よく酔いしれました。
オリジナルはトニー賞を受賞しているブロードウェイの人気ミュージカル。フランキー・ヴァリを演じるジョン・ロイド・ヤングはじめ、ボブとニックは舞台で演じた俳優さんがそのまま映画でも演じているので、チームワークはばっちり。音楽シーンも見ごたえありました。
ザ・フォー・シーズンズは知らなかったのですが、歌はどれもどこかで聞き覚えがありました。「君の瞳に恋してる」は、80年代にヒットしたディスコバージョンの印象が強かったので、もとはフランキー・ヴァリがこんなに切ない思いを込めて歌った歌だったなんて...思いがけなくて驚きました。
映画を見て、フランキーの娘に対する万感の思い、ボブのフランキーに対する長年の友情とリスペクトが伝わってきて、この歌に対するイメージがすっかり変わりました。
ジャージースタイルの結束の強さで、順風満帆に成功を収めていったフランキーたちでしたが、リーダーのトミーが莫大な借金を作っていたことが発覚し、メンバーたちは解散の危機を迎えます。
もっともそれは単なるきっかけで、それまでの小さな行き違いが4人の間に少しずつほころびを作っていたのかもしれません。ラストに再集結したシーンでニックが冗談めかして言っていた「僕はこのバンドのリンゴ・スターだ」ということばが、はからずも真実をずばりと突いているように思いました。
映画は、制作にも関わっているフランキー・ヴァリとボブ・ゴーディオの視点になっているかもしれませんが、フランキーが「トミーが声をかけてくれたから、今の自分がある」と言い切り、追い詰められていたトミーのために、年間200回ものコンサートをこなして借金を返済する男気にぐっときました。
フランキーの歌声に惚れ込み、ザ・フォー・シーズンズを支えてきたマフィアのボスにクリストファー・ウォーケン。彼の代表作「ディア・ハンター」にも、フランキー・ヴァリの歌う「君の瞳に恋してる」が使われているそうで、こちらも見てみたくなりました。
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(2017.01.12)
- My Favorite Movies & Books in 2016(2017.01.06)
- クリスマスの食卓 2016(2016.12.25)
- ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅(2016.11.28)
- ジャック・リーチャー NEVER GO BACK(2016.11.21)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
こんばんは。
「ジャージー・ボーイズ」良かったですね~!
クリストファー・ウォーケンがマフィアのボスみたいな人だし、おそらく彼らも若い頃には悪い事をたくさんしてきてたのでしょうが、音楽の才能ではいあがってこれたんですね。
一つのサクセスストーリーだけど、娘をドラッグで亡くすとか辛い出来事もたくさんあって、借金を肩代わりするために場末のコンサートまでこなして、でも歌い続けてきて、「君の瞳に恋してる」の大ヒットがあって・・・。
それらを達観した様な視線で語るイーストウッドのバランス感覚の良さはさすがでした。
「ディア・ハンター」でこの歌、使われてたっけ!?C・ウォーケンも出てることだし、私も再見してみようかな!?
投稿: ごみつ | 2014年10月13日 (月) 01時37分
☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
ジャージー・ボーイズ、とってもよかったですね☆
クリストファー・ウォーケンってミュージカル出身の俳優さん
なんですか??
それにディア・ハンターでの「君の瞳に~」のつながりもあって
そんなあれこれからのキャスティングだったのでしょうか。
なんだか心憎いですね。まさにジャージースタイル。^^
イーストウッド監督の手際のよさ、センスのよさが抜群で
安心して身をゆだねて見ていました。
この世界を知り尽くした巨匠の余裕を感じる作品でしたね。
投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2014年10月13日 (月) 10時54分