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2014年11月

iichikoデザイン30年展 @東京藝術大学大学美術館

美術館のはしごはめったにしませんが、この日はもうひとつ見たい企画展がありました。東京藝術大学大学美術館で開催された「地下鉄10年を走りぬけて iichikoデザイン30年展」です。会期が短く11月26日で終了してしまいましたが、感想を書き留めておきます。

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以前から駅のホームで見る「いいちこ」のポスターが大好きで、毎回楽しみにしていました。どんな方が作っていらっしゃるんだろうと気になって調べたこともあったのですが、その時はわからず...そんなわけで今回の展覧会でようやく謎が解けてすっきりしました。^^

麦焼酎いいちこのポスターを1984年から30年間、毎月作り続けてこられたのはアートディレクターの河北秀也さん、撮影は写真家の浅井慎平さん。今回は、藝大デザイン科の教授でもあった河北さんの退任を記念しての展覧会。これまで氏が手がけてこられた身近な広告デザインの数々を楽しく見ました。

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会場に入ると、まず地下鉄の車両を模した展示スペースがあって意表をつかれました。河北さんは1973~82年、営団地下鉄(現東京メトロ)のマナーポスターを手がけてこられました。渥美清さんや三平師匠が懐かしい。当時ベリーショートだった森昌子さんのポスターもありました。

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思わずうなったのは、ロートレックの絵を模したポスター。禁煙タイムのお知らせですが、すごくおしゃれです。右上にちらりと見えますが、1972年に地下鉄路線図をデザインされたのも河北さんだそうです。その後、地下鉄路線の拡張にあわせてアップデートされてきました。

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電車の網棚上のスペースには歴代のiichikoの広告がずらり。このほか展示ケースにiichikoの雑誌広告が並べて展示されていました。ちなみに河北さんのデビュー作は、藝大2年生の時に手がけたサクマの「いちごみるく」のパッケージデザインだそうです。

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地下鉄車両の展示スペースを抜けると、駅でおなじみのiichikoの大きなポスターがずらり。30年間に制作された約400点の中から選りすぐりの約100点が展示されています。物語が感じられる写真の数々に引き込まれました。

限られた予算の中で、見る人に強い印象を残すにはどうしたらよいか?その答えは”同じイメージでずっと作り続ける”ことにありました。とはいえまったく同じというわけでなく、その時代の空気にあわせて少しずつ変化していることも感じ取れました。

iichikoのポスターに登場する”世界のどこかにある天国のような場所”も魅力のひとつ。見知らぬ国への好奇心と旅心を刺激されます。実際どうやって見つけてくるんだろう?と感心しますが、その場所は世界各地にわたっています。いくつかご紹介しますね。

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1996年10月 ポルトガル

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2001年8月 テニアン (サイパン近くのアメリカ自治領の島)

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2008年6月 クロアチア

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2013年4月 テキサス

過去のポスターはこちらのサイトで見ることができます。
art iichiko design - Graphic Gallery

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紅葉の上野公園ですごす、楽しい一日となりました。

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フェルディナント・ホドラー展 @国立西洋美術館

国立西洋美術館で開催されている「フェルディナント・ホドラー展」(~2015年1月12日まで)を見に行きました。ホドラーは19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したスイスを代表する国民画家。日本で40年ぶりの回顧展です。

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日本ではあまりなじみのない画家、ホドラー。私もまったく知識はなかったのですが、ポスターの清々しい山の風景に惹かれ、見に行ってきました。3連休の上野公園はものすごい人出でしたが、ホドラー展はそれほどには混んでいなくて、ゆっくり鑑賞できました。

本展ではホドラーの作品約100点が展示され、そのうち8割以上が日本初公開とのことです。まず入口でイントロダクションのビデオを見ましたが、それだけでホドラーが母国スイスでいかに愛されているかが伝わってきました。

1853年、ベルンの貧しい家庭に生まれ、家族全員を早くに亡くしたホドラーは、幼い頃から死を意識し、それが作品に大きな影響を与えます。しかし、その後さまざまな出会いやきっかけによって、作風が明と暗の間を何度も行き来しながら、変遷していくのが興味深かったです。

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(左)インターラーケンの朝(1875) (右)マロニエの木(1889)

初期の風景画はフランス写実主義やバルビゾン派の影響を受け、暗めの作品が多かったですが、1978年にスペインを旅したのをきっかけに、光をいっぱいに浴びた明るい色調にがらりと変わります。透明感のある水辺の表現に心惹かれました。

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傷ついた若者(1886)

しかしその後、詩人ルイ・デュショーザルと出会ったのを機に、作風は心の内面を描く象徴主義へと向かい、1880年代は再び死のイメージが色濃くなります。この作品は聖書の「良きサマリア人」の物語を題材にしていますが、頭から血を流す若者が生々しく描かれています。

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オイリュトミー(1895)

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感情Ⅲ(1905)

と思いきや、今度は反復や対称など幾何学的構造をもったリズミカルな作品を描くようになります。これにはスイス発祥のリトミック(音楽情操教育)の影響もあるようです。転機となった「オイリュトミー」(よいリズムの意)にはまだ死の影が感じられますが、「感情Ⅲ」は生き生きとした躍動感にあふれています。

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ミューレンから見たユングフラウ山(1911)

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シェーブルから見たレマン湖(1905)

この頃のアルプスを描いた風景画が、私は一番気に入りました。表現は抽象化されていますが、イントロダクションのビデオを見ると、実際の風景とぴたりと重なるほど正確なバランスで描かれていて驚きました。ブルーとグリーンの美しさに魅せられました。

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(左)木を伐る人(1910) (右)草を刈る人(1910)

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「全員一致」のための構造習作(1912-13)

労働者や民衆を描いた作品にも心惹かれました。上の2作品は、どちらもスイス紙幣のデザインとして依頼されたものです。またホドラーは、スイス国立美術館、イエナ大学、ハノーファー市庁舎など、国を代表する建物の壁画や装飾も数々手がけています。

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白鳥のいるレマン湖とモンブラン(1918)

晩年は癌に侵された20歳年下の恋人の姿を描き続けます。でも彼女の最期を看取ってからのホドラーは、この世に思い残すことなく、心はまっさらな静寂に満たされていたのではないかと思いました。3年後、彼自身も病で息を引き取っています。

生と死を描き続けたときいて、私はムンクのような画家を想像していましたが、色彩は明るく、穏やかな静けさに満ちていて、あまり悲壮感が感じられなかったのが意外でした。生涯母国で描き続け、国民に愛されたホドラーは、画家としては幸せな人生を送ったのではないかな?と思いました。

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紅葉の箱根(3) 小田原 だるま料理店

強羅で紅葉を楽しんだあとは、塔ノ沢にある日帰り温泉「箱根湯寮」を訪れました。

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昨年オープンしたばかりの新しい温泉施設ですが、ここは以前「ひめしゃらの湯」だったところです。(4年前の記事) 落ち着いた和風旅館風になっていて驚きました。アプローチの紅葉は美しく、木々に囲まれたお風呂は広々として気持ちがよかったです。箱根湯本駅からシャトルも出ています。

温泉でゆっくりくつろいだあとは、国道1号線沿い、箱根口ICの近くにある「鈴廣かまぼこの里」によっておみやげを買っていきました。ここはかまぼこのテーマパークといった感じで、大きなショップのほかレストランや博物館が併設されています。

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揚げかまぼこ(さつま揚げ)にかまぼこ、わさび漬け、イカの塩辛、干物など。早速おいしくいただきました。

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箱根湯寮の休憩室でフリーペーパーを読んでいたら、箱根・小田原で100年以上続く老舗として、富士屋ホテルなどとともに小田原の「だるま料理店」という老舗料理店が紹介されていたので、帰りに夕食を食べていくことにしました。

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すっかり暗くなって全体がよく見えなかったのが残念ですが、入口に唐破風を施した大きく重厚な建物です。創業1893年。地元の網元だった初代ご主人がはじめられた料理店で、相模湾でとれる新鮮な海の幸を使ったお料理がお手頃に楽しめます。

本館の2階と別館はお座敷となっていて、会食などに使われるようですが、1階の食堂はまったく飾らない雰囲気です。でも梁や彫り物など内装は凝っていて、千と千尋に出てくる湯屋を思い出しました。今ではこういう細工ができる職人さんもなかなかいらっしゃらないでしょうね...。

お料理は、お刺身、お寿司、天ぷら、煮魚など、いろいろあってどれもおいしそう。迷いに迷いました。

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こちらは特選ちらしです。見た目の豪華さに圧倒されました。

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特選ちらしが1名分しかない、ということだったので、私はお刺身と天ぷらの定食にしました。(先にお刺身が来たので食べかけで失礼します。) 海老の天ぷらがむちっとしておいしかったですが、なんといってもお刺身が新鮮でぷりぷりとして最高でした。

誰も見ていないのにテレビがついていたり、お料理を運んでくださる従業員の方が今どき珍しくそっけなかったり、どれもこれもが昭和らしく懐かしい雰囲気。^^ お料理がおいしかったので、また是非訪れたいなーと思いました。

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紅葉の箱根(2) 強羅公園

お昼を食べたあとは強羅に移動して、強羅公園を訪れました。四季折々の花々や紅葉の名所としても知られる洋風庭園ですが、今年は開園100周年を迎えたそうです。

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園内に入ると、紅葉はまさに見頃。山の斜面に設えられた庭園なので、どの木も日当たりがよく、まんべんなくきれいに色づいていました。

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ゆるやかな階段や坂道を上り下りしながら、園内をゆっったり散策し、自然の中とはまた違う、丹精された紅葉を満喫しました。

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季節はずれの桜が...と思ったら、年に2回咲くというジュウガツザクラでした。主役の紅葉を引き立てるように楚々と咲く、控えめで可憐な美しさが愛おしく感じられました。

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洋風庭園ですが、離れたところにお茶室の一角があり、閑寂な趣に心を奪われました。屋根に足元にはらはらと散るもみじの葉。岩場の間の川を模したところにまっ赤なもみじが降り積もり、花筏ならぬ紅葉筏?のよう。苔むした岩にはらりと落ちた一枚のもみじも風情がありました。

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遠くに見える山々を借景にして、段々と続く紅葉の風景はひなびた里山のようにも見えます。素朴な美しさにうっとりしました。

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公園のまわりもみごとな紅葉でした。ちょうどケーブルカーがくるところだったので思わずパチリ。最新式のかっこいい車両でしたが、昔ながらのケーブルのぎりぎりという音がいい味を出していました。

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紅葉の箱根(1) チェンバレンの散歩道

先週の平日、箱根に紅葉を見に行ってきました。東名高速~厚木小田原道を経由して車で約1時間半。厚木をすぎると丹沢山系の向こうに雪を冠った美しい富士山が見えました。道路沿いの木々もいい感じに色づいています。

箱根に着いたら、そのまま宮ノ下に向かい、チェンバレンの散歩道(堂ヶ島渓谷遊歩道)を散策することにしました。宮ノ下駐車場の前から急な坂道(デジャヴュ坂)を下り、早川沿いに続く遊歩道です。(宮ノ下散策マップ

6年前の冬枯れの時期にここを訪れた時は、遊歩道を歩く人がほとんどいなかったので、今回も静かにゆったり紅葉が楽しめるのでは?と期待しました。少しアップダウンのある山道なのでスニーカーがベターですが、ブーツでも歩けました。

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林の内側から見る紅葉は、赤と緑がとけあうようにきれいです。

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陽のあたるところはまっ赤に紅葉していました。

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前に来た時は、デジャヴュ坂を下りてすぐのところに、松本清張の「蒼い描点」の舞台となった、ロープウェイで行く古い旅館がありましたが、今はちょうど建て替えのための取り壊し工事の真っ最中でした。今度来る時には、ぴかぴかのリゾートホテルに替わっているかもしれません。

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1時間ほどの軽いトレッキングを楽しみましたが、今回気がついたのは、紅葉は中からより外から見た方がきれい、ということ。陽のあたる木の外側から紅葉するので、林の中を歩いていると、内側の緑のところばかり見えてしまうのです。^^; ひとつ勉強になりました。

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吊り橋を渡ったら、トレイルはそろそろ終点。ここから階段をのぼり、バス通りをてくてく歩いて宮ノ下にもどりました。

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バス通りから見る山々の紅葉が、それはそれはすばらしかったです。赤~オレンジ~黄色~緑、とまるでパッチワークのようでした。

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お昼は、富士屋ホテルの「ウイステリア」でいただきました。クラシックな雰囲気の洋食レストランです。

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前菜のスモークサーモンにパン(orごはん)、食後のコーヒー(or紅茶)がつくビーフシチューのランチセットをいただきました。スモークサーモンはレモンをしぼって手が汚れるので、フィンガーボールがついてきました。今はおしぼりが出るところがほとんどなので、レトロなおもてなしが新鮮に感じられました。

ビーフシチューは熱々で、お肉がとろけるように柔らかかった。老舗のお味を堪能しました。売店のピコットで、パンを買っていきました。

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吉例顔見世大歌舞伎 「寿式三番叟」「井伊大老」「熊谷陣屋」

歌舞伎座に、吉例顔見世大歌舞伎 昼の部を見に行きました。初世松本白鸚三十三回忌追善でもある本公演。白鸚さんゆかりの演目をゆかりの俳優さんが演じます。華やかな舞踏に重厚な歴史ドラマ、歌舞伎ならではの伝統の舞台を堪能しました。

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寿式三番叟 (ことぶきしきさんばそう)
能楽の「翁」を題材とした、天下泰平、五穀豊穣を祈る、お祝いの舞踏。昨年のお正月に見て、格調高い舞に厳粛な、それでいて晴れやかな気持ちに包まれたことを思い出します。

翁(片岡我當)が3人の千歳を従えて舞台をせり上がり、厳かに舞ったあとは、お揃いの黒い衣装をつけた2人の三番叟(市川染五郎・尾上松録)が元気よく登場。アップテンポの奏楽にのせて、跳んだと思えばくるりとまわり、鮮やかなステップに魅了されました。

涼やかな染五郎さんとお目々ぱっちりの松緑さん、踊りもそれぞれすばらしく、二人の個性がみごとに調和して見ごたえがありました。華やかでエキサイティングな舞台に気持ちがわくわくと浮き立ちました。

井伊大老 (いいたいろう)
井伊大老邸の奥書院より桜田門外まで

中村吉右衛門さんの井伊大老を楽しみにしていました。

井伊直弼は歴史的には評価が分かれるところでしょうが、横浜開港に貢献したとして紅葉坂の掃部山公園に銅像があって、子どもの頃から親しみを覚えていました。(未見ですが)今公開中の映画「柘榴坂の仇討」も桜田門外を題材にした作品で、吉右衛門さんが井伊大老を演じていらっしゃいますね。

舞台では、幼馴染の水無部六臣(中村錦之助)、そして側室のお静の方(中村芝雀)とのやりとりなど、吉右衛門さんのしみじみと味わい深い語り口から、直弼の苦悩と決意、覚悟が伝わってきて、引き込まれるように聞き入りました。

直弼の運命を知っているだけに、仙英禅師(中村歌六)が書き残していった一期一会ということばも、華やかなお雛飾りも、お静の方とすごす最後の穏やかな夜も、すべてがのちの悲劇につながっているように思え、胸苦しさを覚えました。ラストのお濠端の雪景色の白さが心に残りました。

一谷嫩軍記 熊谷陣屋 (くまがいじんや)
源平争乱の時代を舞台に世の無常を描いた時代物の名作です。

源氏の武将 熊谷直実(松本幸四郎)は須磨の浦で平敦盛を討ちとったとし、源義経(尾上菊五郎)が首実検をします。しかし実は、義経の意を汲み、後白河院の血を引く敦盛を助けるために、熊谷は身代わりに我が子 小次郎を犠牲にしたのでした...。

忠義のために我が子を犠牲にするという状況は、我が身に置き換えればとうてい受け入れられるものではありませんが、それゆえに幸四郎さんはどんな思いで演じていらっしゃるのだろうと思うと、なおのこと辛さが身にしみました。

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帰りに銀座によったら、ミキモトさんの前にクリスマスツリーが飾られていました。来年、本店を建て替えるのにともない、今年が最後のツリーとなるそうです。毎年楽しみにしていたので寂しくなります...。なお、ツリーの展示は12月25日まで。詳細はコチラ

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「ルポ MOOC革命 無料オンライン授業の衝撃」

7月に読んだ本ですが、遅ればせながら記録を残しておきます。

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金成龍一 「ルポ MOOC革命 無料オンライン授業の衝撃

以前、MOOCについてコチラで書きましたが、あれからMOOCやオープンエデュケーションについてもっと知りたくて、MOOCで北海道大学の「オープンエデュケーションと未来の学び」という講座を受講しました。その時、受講者の間でよく話題にあがっていたのがこの本で、私も読んでみました。

これは朝日新聞の記者の方が、国内外のMOOCやオープンエデュケーションの運営者たち、そこから新たな学びを得た受講者たちを丹念に取材し、MOOCの今についてまとめた本です。(出版は2013年12月) 今、教育の世界を大きく変えつつある動きについて、理解を深めることができました。

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MOOCはMassive Open Online Courses(大規模公開オンライン講座)の略で、2012年にハーバードやMIT、スタンフォードなどがはじめた、大学の授業を無料で公開するオンライン講座です。現在、200以上の大学が参加し、登録者は世界で1000万人を超えています。

ネット環境があれば世界のどこからも授業が受けられ、一定の成績を収めると修了証がもらえます。以前、MITの電子工学の講座を受講して優秀な成績を収めたモンゴルの少年が、その後MITに合格して17歳で大学生となり、MOOCの申し子として話題になったことがありました。

MOOCの運営を財政面で支えているのは、大学や企業など。採算を度外視しても、世界から優秀な学生を集める、優秀な学生を企業に紹介するなど、出資側にも大きなメリットがあります。中堅の大学の中には、一流大学のMOOCの講座を有償で授業に取り入れるところも出てきているそうです。

こうした世界的な流れを受け、日本でも京大や東大がedX(ハーバードなどが参加するMOOC)への参加を決め、英語による講座の提供をはじめました。今後、日本の大学は海外への発信力を高め、魅力や実績をアピールしていくことが重要になってくると思います。

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MOOC以外では、オンライン教育のカーン・アカデミーの話に感銘を受けました。設立者のサルマン・カーン氏は、もとは離れて住むいとこに勉強を教えるためにビデオ教材を作ったのですが、You Tubeにアップしたところ、多くの人たちからわかりやすいと評判になり、それがNPO設立のきっかけになりました。

当初は貯金を切り崩して運営していたものの、のちに支援者が現れたというのがアメリカらしい。今は初等教育から大学レベルの講座まで、英語版だけで4000本以上の教育ビデオがあり、各国語に翻訳されて、世界で600万人以上が利用しているそうです。

また、本書を読んで、日本にもmanavee、eboardといった大学受験生や小中学生を対象とした無料の学習支援サイトがあることを知りました。予備校のない、地方に住む受験生がこのサイトを使って学び、大学生になると今度は先生としてボランティアに参加しているという話に胸を打たれました。

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身近なところでは、今年は大手予備校が経営破綻する一方でビデオ授業の予備校が躍進したり、日本版MOOCがはじまったりと、時代の変化を実感した年でもありました。高品質の無料の授業が発信されることで、学びの世界はこれからますますボーダーレスになっていくのか、注目していきたいと思います。

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話かわって...我が家近くのいちょうの木。美しい黄葉にパチリ。

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「嗤う分身」

ジェシー・アイゼンバーグとミア・ワシコウスカが共演、ドストエフスキーの「分身(二重人格)」を映画化した不条理スリラー、「嗤う分身」(The Double)を見ました。シュールでアートなサスペンスです。

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何をやってもうまくいかない内気で冴えないサイモン(ジェシー・アイゼンバーグ)は、会社のコピー係でアパートの向かいの部屋に住むハナ(ミア・ワシコウスカ)に密かに思いを寄せていて、望遠鏡で彼女の姿をこっそりのぞき見るのが唯一の楽しみ。

そんなある日、会社に期待の新人として、サイモンと全く同じ姿をしたジェームズ(ジェシーの2役)が入社してきます。切れ者で外向的、誰もが一目置く彼の出現で、サイモンの存在は徐々に脅かされて...。

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主演のジェシーくんとミアちゃんは独特の個性を持っていて、どちらも注目しているお気に入りの俳優さん。予告で見た不思議テイストな映像に惹かれ、早速初日に見てきました。クセがあるのでお勧めしにくい作品ですが、主演の2人と奇妙な世界を堪能しました。

冒頭、電車での奇妙なやりとりからぐぐっと心をつかまれ、物語の世界に引き込まれました。舞台は近過去のようでもあり、近未来のようでもあり。全体的に薄暗くレトロな映像、古びた設備やインテリアなど、少し前の社会主義国を彷彿とさせます。

会社の経営者は絶対的な権力を持ち、大佐とよばれています。IDカードが登場するところは、舞台を現代に移しているようですが、それは徹底した管理社会を象徴しているようにも思いました。

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冴えないサイモンと切れ者のジェームズ。ジェシーくんが一人2役を演じていますが、顔も髪型も洋服も、例の早口の喋り方も全く同じ。その中でわずかなセリフの言い回しと身のこなしだけで、2人のわずかな違いを演じ分けているのがみごとでした。

全く見た目の変わらない2人がいても、ほかの誰もそれを不思議に思わず、ちゃんと見分けて接しているのがなんともシュール。ジェームズがいつの間にか周りの人たちの心をしっかりつかみ、自分の居場所をどんどん侵食してくる恐怖。サイモンの心の叫びが胸に刺さりました。

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「上を向いて歩こう」や「ブルーシャドウ」はじめ、日本の昭和歌謡が何曲も登場したのにびっくりしましたが、それが意外にもレトロでアナログな世界にマッチしています。イギリスの新人リチャード・アイオアディ監督、かなりの日本オタクなのかしら?

映像やストーリーなど、いろいろな作品の影響が感じられますが、何度も登場するほかに誰も乗っていない電車、時に唐突に感じられる音楽使い、主人公のキャラクターなど、私はふとエヴァンゲリオンを思い出しました。

サイモンにとって分身ジェームズは、なりたい自分であり、それを否定しようとする自分でもあるのかな...ちょっぴりアングラな舞台演劇の香りもする、不思議テイストの作品でした。

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紅葉の軽井沢(2) 白糸の滝ドライヴ

雲場池のまわりも、すばらしい紅葉・黄葉でした。

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車を駐車場に停めたまま、お昼を食べにぶらぶらと...ラウンドアバウトの六本辻周辺にいくつかレストランがありますが、紅葉の時期とあって予約でいっぱいのところもありました。私たちは、フレンチレストランのル・ベルクール軽井沢に入りました。雑木林の中にひっそりと建つ、趣のある洋館のレストランです。

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コースのメニューもありますが、気分ではなかったのでプレートランチをいただくことに。信州牛の赤ワイン煮に地元の新鮮野菜がたっぷり。お肉はほろほろにくずれるほどに柔らかく、野菜もみずみずしくておいしかったです。

食事のあとは、車で旧軽井沢方面に向かいましたが、ものすごい人混みだったので沢屋さんでジャムだけ買って、旧三笠ホテルの前を通り、白糸の滝までドライヴを楽しむことにしました。

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このあたりは街中より少し標高が高いので、もうすっかり紅葉は終わり、葉も落ちてしまっていましたが、冬枯れの木立もまた趣があってすてきでした。

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白糸の滝の駐車場に入ると、大きな観光バスが何台も停まり、ものすごい賑わいでした。最近は特に、(世界遺産に登録された)富岡製糸場と軽井沢をセットにしたツアーが増えてきているようです。

駐車場から渓流に沿ってゆるやかな坂道をのぼっていくと...

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白糸の滝に到着。高さは3mとそれほど高くありませんが、幅が70mもあり、なかなかの迫力です。地層の間からにじみ出すように細い糸が幾重にも流れ落ちる滝は清涼感たっぷりでした。

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山を下りるにしたがって、ふたたび少しずつ黄葉がはじまって...

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中軽井沢の星野リゾートのあたりまで下りると、またすっかり秋の景色にもどりました。ほんの少しの標高の差で、こんなに違うなんて...まるで秋と冬をいっぺんに楽しんだみたいです。

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帰りの高速道路から見る風景。夕陽に照らされた山々の陰影が、とても美しかったです。

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【 おまけ 】 軽井沢に行く時は、帰りにおぎのやさんで峠の釜めしを買って、家で夕食にいただくのがきまり?になっています。今回は軽井沢駅で買いましたが、信越道の横川SA(上り線)にも売店があります。

沢屋さんでは、ナガノパープル(ぶどう)と紅玉のジャムを。トーストやヨーグルトに、楽しみたいと思います。

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紅葉の軽井沢(1) 雲場池散策

予報がはずれて気持ちよく晴れた3連休の最終日、軽井沢にふらりと紅葉を見に行ってきました。関越道を北へ北へと進むにつれて、周りの木々が少しずつ彩りを増していく様子が感じられ、わくわく期待が高まりました。

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妙義山の奇岩の風景が見えてきたら、碓氷軽井沢ICはすぐそこです。Exitを出ると、なんでもない雑木林や街路樹が赤~黄色のグラデーションに彩られ、ため息が出るような美しさでした。そのまま新軽井沢方面に向かい、雲場池を訪れました。

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雲場池は、ちょうど紅葉のピークを越したばかりといったところでしたが、雑木林のもみじや、池を縁どるように植えられたドウダンツツジが真っ赤に燃えて、とても美しかったです。カモたちが集まり、気持ちよさそうに泳いでいました。

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澄んだ湖面にドウダンツツジが鏡のように映っています。

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雑木林の中も燃えるような赤。

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細長い池に沿って、ぐるりと遊歩道が続いています。午前中はまだそれほど人が出ていなくて、左右の紅葉を愛でながら、ゆったり散策できました。

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清水が流れ入る池の上流側まで歩くと紅葉がふと途切れ、ほとんど人もいなくて貸切状態。底まで見える清らかな水の流れと湿原の風景は、紅葉とはまた違う心洗われる美しさでした。

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しんと静まりかえった秋の風景。

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ふたたび池の反対側をもと来た方にもどると、そろそろ人が増えてきました。ドウダンツツジが秋の陽に照らされ、きらきらと輝いています。

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池の方に思い切り枝を伸ばして。

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雑木林にはもみの木もあり、その香りがすばらしかった。五感で感じながらの楽しい散策となりました。

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「マダム・マロリーと魔法のスパイス」

ヘレン・ミレン主演のコメディテイストのヒューマンドラマ、「マダム・マロリーと魔法のスパイス」(The Hundred-foot Journey)を見ました。南フランスを舞台に星つきフレンチレストランとインド料理店が繰り広げる、愛と美食の物語です。

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インドのムンバイでレストランを営んでいたカダム一家は、新天地を求めてヨーロッパへ。南フランスで車が故障したのが縁で、新鮮でおいしい食材に出会った彼らは、その地に留まり廃屋を改装して、インド料理店を開きます。

しかしそこは、気難しい女性オーナー マダム・マロリー(ヘレン・ミレン)が経営する星つきフレンチレストランのすぐ目の前。マダム・マロリーとカダム家のパパは、何かと対抗意識を燃やし、騒動を巻き起こしますが...。

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予告を見ておもしろそう!と楽しみにしていた作品、早速初日に見に行きました。王道のストーリー展開ながら、笑いあり、ロマンスあり、家族愛あり。そしておいしそうな食材やお料理も登場し、食いしん坊にはうれしい作品でした。

とにかくマダム・マロリーとカダム家のパパ、全くタイプの違う2人のバトルがおかしくて、おかしくて...。そして、その陰で進行する?カダム家の次男で若き天才シェフ ハッサンと、フレンチレストランで修業中の女性シェフ マルグリットのロマンスが、なんともさわやかで微笑ましい。

天性のお料理の才能があるハッサンは、フランス料理にも興味津々。マルグリットからフレンチの手ほどきを受けたり、いっしょにきのこを採りにでかけたり。一流のシェフになるという共通の夢に向かって励まし合い、それゆえに相手の才能に嫉妬することもある2人の姿はとても美しかったです。

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お料理もいろいろ登場しますが、なにより一番おいしそうだったのは序盤でマルグリットがカダム家の人たちをもてなした、ありあわせの野菜と乳製品。そしてハッサンがマダムをうならせた、鳩のお料理とオムレツも食べてみたくなりました。

途中でちらりと人種問題にも触れられますが、あれほどカダム・パパに嫌がらせ(笑)をしていたマダムが、これにはすぐに毅然とした態度で対処したことにも感動しました。いつの間にかマダムとパパが仲良くなるのは想定外の展開でしたが^^ マダムを演じるヘレン・ミレン、いつもながらほんとうにエレガントでした。

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予備知識なく、なんとなくフランス映画かイギリス映画?と思っていたので、エンドロールで、スピルバーグとオプラ・ウィンフリーが製作を務めるディズニー映画と知ってびっくりしましたが、なるほど、この口当たりのいいわかりやすい博愛主義は、(いい意味で)ディズニーらしいと納得しました。

イギリス、インド、フランスの名優にフレッシュな若手俳優、そして監督は「ショコラ」「ギルバート・グレイプ」(どちらも好き!)のスウェーデンのラッセ・ハルストレム。映画同様、多国籍のスタッフとキャストが織り成すハーモニーがなんとも魅力的な作品でした。

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以前、フレンチコメディの「シェフ!~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~」を見た時にも思いましたが、フランスのレストランの”星の数”に対するこだわりとプレッシャーは並々ならないものがありますね。でも、技術以上に愛あるお料理が、作る人も食べる人も幸せにする、というラストが心憎かったです。

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