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フェルディナント・ホドラー展 @国立西洋美術館

国立西洋美術館で開催されている「フェルディナント・ホドラー展」(~2015年1月12日まで)を見に行きました。ホドラーは19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したスイスを代表する国民画家。日本で40年ぶりの回顧展です。

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日本ではあまりなじみのない画家、ホドラー。私もまったく知識はなかったのですが、ポスターの清々しい山の風景に惹かれ、見に行ってきました。3連休の上野公園はものすごい人出でしたが、ホドラー展はそれほどには混んでいなくて、ゆっくり鑑賞できました。

本展ではホドラーの作品約100点が展示され、そのうち8割以上が日本初公開とのことです。まず入口でイントロダクションのビデオを見ましたが、それだけでホドラーが母国スイスでいかに愛されているかが伝わってきました。

1853年、ベルンの貧しい家庭に生まれ、家族全員を早くに亡くしたホドラーは、幼い頃から死を意識し、それが作品に大きな影響を与えます。しかし、その後さまざまな出会いやきっかけによって、作風が明と暗の間を何度も行き来しながら、変遷していくのが興味深かったです。

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(左)インターラーケンの朝(1875) (右)マロニエの木(1889)

初期の風景画はフランス写実主義やバルビゾン派の影響を受け、暗めの作品が多かったですが、1978年にスペインを旅したのをきっかけに、光をいっぱいに浴びた明るい色調にがらりと変わります。透明感のある水辺の表現に心惹かれました。

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傷ついた若者(1886)

しかしその後、詩人ルイ・デュショーザルと出会ったのを機に、作風は心の内面を描く象徴主義へと向かい、1880年代は再び死のイメージが色濃くなります。この作品は聖書の「良きサマリア人」の物語を題材にしていますが、頭から血を流す若者が生々しく描かれています。

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オイリュトミー(1895)

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感情Ⅲ(1905)

と思いきや、今度は反復や対称など幾何学的構造をもったリズミカルな作品を描くようになります。これにはスイス発祥のリトミック(音楽情操教育)の影響もあるようです。転機となった「オイリュトミー」(よいリズムの意)にはまだ死の影が感じられますが、「感情Ⅲ」は生き生きとした躍動感にあふれています。

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ミューレンから見たユングフラウ山(1911)

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シェーブルから見たレマン湖(1905)

この頃のアルプスを描いた風景画が、私は一番気に入りました。表現は抽象化されていますが、イントロダクションのビデオを見ると、実際の風景とぴたりと重なるほど正確なバランスで描かれていて驚きました。ブルーとグリーンの美しさに魅せられました。

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(左)木を伐る人(1910) (右)草を刈る人(1910)

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「全員一致」のための構造習作(1912-13)

労働者や民衆を描いた作品にも心惹かれました。上の2作品は、どちらもスイス紙幣のデザインとして依頼されたものです。またホドラーは、スイス国立美術館、イエナ大学、ハノーファー市庁舎など、国を代表する建物の壁画や装飾も数々手がけています。

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白鳥のいるレマン湖とモンブラン(1918)

晩年は癌に侵された20歳年下の恋人の姿を描き続けます。でも彼女の最期を看取ってからのホドラーは、この世に思い残すことなく、心はまっさらな静寂に満たされていたのではないかと思いました。3年後、彼自身も病で息を引き取っています。

生と死を描き続けたときいて、私はムンクのような画家を想像していましたが、色彩は明るく、穏やかな静けさに満ちていて、あまり悲壮感が感じられなかったのが意外でした。生涯母国で描き続け、国民に愛されたホドラーは、画家としては幸せな人生を送ったのではないかな?と思いました。

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コメント

こんばんは!

お~、ホドラー行かれたんですね!
なかなかまとめて観賞する機会も少ない作家さんだと思うので、貴重な展覧会ですよね。happy01

セレンディピティさんがまとめられた記事を見させていただくと、やっぱり色合いがきれいですね~。

そうそう、記事でも書かれてる様に、感情をぶつけてくるタイプのアーチストじゃないんですよね。淡々として静かです。

家族や恋人といった大切な人達を、次々と見送る事になったけど、私も彼は幸せな人生だったんじゃないかな・って思いました。confident

投稿: ごみつ | 2014年11月29日 (土) 00時36分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
ホドラー展、ごみつさんの記事に背中を押されて
見に行ってきました♪ すごくよかったです。
ご紹介くださってありがとうございました。

上映されていたビデオの中でも「色彩がとてもきれいなのよ!」と
おっしゃっているご婦人がいらっしゃいましたが
私も特にブルーとグリーンの美しさに魅了されました。
スイスの自然の色でもあるのでしょうね。

ジャコメッティやクレーのように国外に出ることなく
母国にとどまって活動したことが、かえって彼の個性を
生かすことになったのかもしれないな...とも思いました。

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2014年11月29日 (土) 22時00分

セレンピディティさま
今わかったのですが、40年余り前に上野の美術館で見てました。
1975年4月、私は30歳で、新聞で見て「夢」「昼」などにひかれたようです。最後の恋人が死んだあとで最後の自画像を描いてそして苦痛と戦いに満ちた生涯を閉じたのですね。芸術家と言うものは芸術愛好家とは違うのだということ、軽やかな作品が労働者のような手から生まれるということを彼の自画像から感じたあのころの私もまだ感受性が豊かだったようです。歳月の流れを思い、懐かしいとも、かなしいともつかぬ思いです。

投稿: Bianca | 2014年11月30日 (日) 18時12分

☆ Biancaさま ☆
こちらにもコメントありがとうございます♪

Biancaさんは40年前にホドラー展をご覧になったのですね!
「夢」は今回来日していませんが
「昼」の習作や「昼Ⅲ」は見ることができました。
「昼Ⅲ」は私はなんだかヴィーナスの誕生を思い出しました。^^

最後の自画像というのは、おそらく背景にバラが描かれた作品ですね。
今回、自画像は3点ほどありましたが
このバラの自画像は、深く刻み込まれたしわから
彼のこれまでの人生に思いを馳せました。

40年の時を超えて、こうして共通のアーティストについて
お話できるというのが、なんだか信じられない思いです。
ありがとうございました☆

投稿: ☆ Biancaさま ☆ | 2014年12月 1日 (月) 09時22分

セレンさんこんにちは。
ホドラー展は行かなかったのですが、同じ3連休に私も家族で上野公園の科学博物館へ行きましたよ。天気も良く紅葉も見頃で素敵でしたね。
最近はどうしても子ども中心の休日を過ごしているので静かなところは敬遠しがちで、ホドラー展も横目に観てスルーでした。
ホドラーについては全く知らなかったのですが、セレンさんの感想や皆様のコメントを見させて頂いて興味が出てきました。
実は毎日利用している上野駅ですので、期間中に時間が出来たら行ってみたいと思います。

投稿: asa | 2014年12月 2日 (火) 11時49分

☆ asaさま ☆
こんにちは。
asaさんも同じ頃に上野公園にいらしたのですねー。
紅葉、きれいでしたね。

私も息子が小さい頃は、上野の科学博物館や
お台場の科学未来館にはよく行きましたよー。
科学未来館は年間パスも持っていたので、しょっちゅう行ってました。
asaさんも楽しい一日をおすごしだったことと思います。

ホドラー展、貴重な作品を見ることができてよかったです。
もしお時間がとれそうでしたら、ご覧になってみてください☆

投稿: ☆ asaさま ☆ | 2014年12月 3日 (水) 11時53分

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