「嗤う分身」
ジェシー・アイゼンバーグとミア・ワシコウスカが共演、ドストエフスキーの「分身(二重人格)」を映画化した不条理スリラー、「嗤う分身」(The Double)を見ました。シュールでアートなサスペンスです。
何をやってもうまくいかない内気で冴えないサイモン(ジェシー・アイゼンバーグ)は、会社のコピー係でアパートの向かいの部屋に住むハナ(ミア・ワシコウスカ)に密かに思いを寄せていて、望遠鏡で彼女の姿をこっそりのぞき見るのが唯一の楽しみ。
そんなある日、会社に期待の新人として、サイモンと全く同じ姿をしたジェームズ(ジェシーの2役)が入社してきます。切れ者で外向的、誰もが一目置く彼の出現で、サイモンの存在は徐々に脅かされて...。
主演のジェシーくんとミアちゃんは独特の個性を持っていて、どちらも注目しているお気に入りの俳優さん。予告で見た不思議テイストな映像に惹かれ、早速初日に見てきました。クセがあるのでお勧めしにくい作品ですが、主演の2人と奇妙な世界を堪能しました。
冒頭、電車での奇妙なやりとりからぐぐっと心をつかまれ、物語の世界に引き込まれました。舞台は近過去のようでもあり、近未来のようでもあり。全体的に薄暗くレトロな映像、古びた設備やインテリアなど、少し前の社会主義国を彷彿とさせます。
会社の経営者は絶対的な権力を持ち、大佐とよばれています。IDカードが登場するところは、舞台を現代に移しているようですが、それは徹底した管理社会を象徴しているようにも思いました。
冴えないサイモンと切れ者のジェームズ。ジェシーくんが一人2役を演じていますが、顔も髪型も洋服も、例の早口の喋り方も全く同じ。その中でわずかなセリフの言い回しと身のこなしだけで、2人のわずかな違いを演じ分けているのがみごとでした。
全く見た目の変わらない2人がいても、ほかの誰もそれを不思議に思わず、ちゃんと見分けて接しているのがなんともシュール。ジェームズがいつの間にか周りの人たちの心をしっかりつかみ、自分の居場所をどんどん侵食してくる恐怖。サイモンの心の叫びが胸に刺さりました。
「上を向いて歩こう」や「ブルーシャドウ」はじめ、日本の昭和歌謡が何曲も登場したのにびっくりしましたが、それが意外にもレトロでアナログな世界にマッチしています。イギリスの新人リチャード・アイオアディ監督、かなりの日本オタクなのかしら?
映像やストーリーなど、いろいろな作品の影響が感じられますが、何度も登場するほかに誰も乗っていない電車、時に唐突に感じられる音楽使い、主人公のキャラクターなど、私はふとエヴァンゲリオンを思い出しました。
サイモンにとって分身ジェームズは、なりたい自分であり、それを否定しようとする自分でもあるのかな...ちょっぴりアングラな舞台演劇の香りもする、不思議テイストの作品でした。
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(2017.01.12)
- My Favorite Movies & Books in 2016(2017.01.06)
- クリスマスの食卓 2016(2016.12.25)
- ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅(2016.11.28)
- ジャック・リーチャー NEVER GO BACK(2016.11.21)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
セレンさん☆
これも気になっている作品です。
今週は子供たちが風邪ひきで家にいたものだから、何も観に行けなくて、ちょっとふて腐れ気味な私。
エヴァンゲリオンを思い起こさせる映画、わお!ますます気になりだしました。
来週も観たいものがたっくさんでどうしましょう??
投稿: ノルウェーまだ~む | 2014年11月14日 (金) 23時24分
こんばんは!
ツイートでこの映画を見に行かれたっていうのを読んだ時は、これロシア映画なのかと思ってました!
イギリス映画かな?凄く面白そう!!
これってドッペルゲンガー?
アップされてる写真だけでも、この映画の雰囲気が伝わってきますね。映像も美しそうだし、主役の2人の演技も気になります~~!
それに劇中で流れる日本の昭和歌謡もどんなイメージで使われてるのかな~。ホントに不思議な内容ですね。;:゙;`(゚∀゚)`;:゙
投稿: ごみつ | 2014年11月15日 (土) 00時33分
映画とは直接関係ありませんが、昔、勤めていた会社に
双子の兄弟が勤めていました。
私は、そのことをはじめ知らず、兄弟のうち一人と仕事で
繋がりがあり、会議や打ち合わせを良くしていました。
ある日、会社の廊下ですれ違ったので、挨拶をしたつもりが
全く、相手からは反応がなく、何回かそのようなことが重なりました。
あとから、双子のことを聴き、驚いたことを思い出しました。
兄弟で同じ会社に就職していたとは、それにもビックリでした(笑)
二人とも、優秀でした^^
投稿: イザワ | 2014年11月15日 (土) 03時08分
☆ ノルウェーまだ~むさま ☆
こんにちは。
お子様たち、風邪をひかれているのですね。
ここのところ急に空気が乾燥してきてますものね~
私ものどがイガイガしてます。
どうぞお大事になさってくださいね。
この作品、テリー・ギリアムの「未来世紀ブラジル」や
デヴィッド・リンチの「イレイザーヘッド」の影響を受けている?
と言われているようですが、私はどちらも未見なので...
他に誰も乗っていない電車のシーンを見ているうちに
私はエヴァを思い出してしまいました。
ちょっと変わった作品ですが、好きな方は好きそうです。^^
投稿: ☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ | 2014年11月15日 (土) 10時25分
☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
そう、これイギリス映画なのですよね。
原作は未読なので、ドストエフスキーの小説に
どのくらい忠実なのか、ドッペルゲンガーという設定だけを
生かしているのか、わかりませんが...
ちょっと不思議な感じの作品で、映像も独特の世界がありました。
主演の2人もよかったですよ。
この作品をきっかけにおつきあいしているそうですが^^
2人とも独特の個性があって、お似合いですよね。
昭和歌謡にはびっくりしました。
エヴァの「翼をください」を思い出しましたが
奇妙な違和感が、不思議とマッチしていました。
投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2014年11月15日 (土) 10時42分
☆ イザワさま ☆
こんにちは。
一卵性双生児って、ほんとうにそっくりですものね。
私も昔、同級生にいましたが、やっぱり区別がつきませんでした。^^
意識的に別の道に進む方たちもいらっしゃるようですが
就職まで同じというのはすごいですね。
やはり興味の対象が近かったのでしょうか?
投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2014年11月15日 (土) 10時54分