« 紅葉の軽井沢(2) 白糸の滝ドライヴ | トップページ | 「ルポ MOOC革命 無料オンライン授業の衝撃」 »

「嗤う分身」

ジェシー・アイゼンバーグとミア・ワシコウスカが共演、ドストエフスキーの「分身(二重人格)」を映画化した不条理スリラー、「嗤う分身」(The Double)を見ました。シュールでアートなサスペンスです。

The_double

何をやってもうまくいかない内気で冴えないサイモン(ジェシー・アイゼンバーグ)は、会社のコピー係でアパートの向かいの部屋に住むハナ(ミア・ワシコウスカ)に密かに思いを寄せていて、望遠鏡で彼女の姿をこっそりのぞき見るのが唯一の楽しみ。

そんなある日、会社に期待の新人として、サイモンと全く同じ姿をしたジェームズ(ジェシーの2役)が入社してきます。切れ者で外向的、誰もが一目置く彼の出現で、サイモンの存在は徐々に脅かされて...。

The_double_6

主演のジェシーくんとミアちゃんは独特の個性を持っていて、どちらも注目しているお気に入りの俳優さん。予告で見た不思議テイストな映像に惹かれ、早速初日に見てきました。クセがあるのでお勧めしにくい作品ですが、主演の2人と奇妙な世界を堪能しました。

冒頭、電車での奇妙なやりとりからぐぐっと心をつかまれ、物語の世界に引き込まれました。舞台は近過去のようでもあり、近未来のようでもあり。全体的に薄暗くレトロな映像、古びた設備やインテリアなど、少し前の社会主義国を彷彿とさせます。

会社の経営者は絶対的な権力を持ち、大佐とよばれています。IDカードが登場するところは、舞台を現代に移しているようですが、それは徹底した管理社会を象徴しているようにも思いました。

The_double_3

冴えないサイモンと切れ者のジェームズ。ジェシーくんが一人2役を演じていますが、顔も髪型も洋服も、例の早口の喋り方も全く同じ。その中でわずかなセリフの言い回しと身のこなしだけで、2人のわずかな違いを演じ分けているのがみごとでした。

全く見た目の変わらない2人がいても、ほかの誰もそれを不思議に思わず、ちゃんと見分けて接しているのがなんともシュール。ジェームズがいつの間にか周りの人たちの心をしっかりつかみ、自分の居場所をどんどん侵食してくる恐怖。サイモンの心の叫びが胸に刺さりました。

The_double_5

「上を向いて歩こう」や「ブルーシャドウ」はじめ、日本の昭和歌謡が何曲も登場したのにびっくりしましたが、それが意外にもレトロでアナログな世界にマッチしています。イギリスの新人リチャード・アイオアディ監督、かなりの日本オタクなのかしら?

映像やストーリーなど、いろいろな作品の影響が感じられますが、何度も登場するほかに誰も乗っていない電車、時に唐突に感じられる音楽使い、主人公のキャラクターなど、私はふとエヴァンゲリオンを思い出しました。

サイモンにとって分身ジェームズは、なりたい自分であり、それを否定しようとする自分でもあるのかな...ちょっぴりアングラな舞台演劇の香りもする、不思議テイストの作品でした。

|

« 紅葉の軽井沢(2) 白糸の滝ドライヴ | トップページ | 「ルポ MOOC革命 無料オンライン授業の衝撃」 »

映画」カテゴリの記事

コメント

セレンさん☆
これも気になっている作品です。
今週は子供たちが風邪ひきで家にいたものだから、何も観に行けなくて、ちょっとふて腐れ気味な私。
エヴァンゲリオンを思い起こさせる映画、わお!ますます気になりだしました。
来週も観たいものがたっくさんでどうしましょう??

投稿: ノルウェーまだ~む | 2014年11月14日 (金) 23時24分

こんばんは!

ツイートでこの映画を見に行かれたっていうのを読んだ時は、これロシア映画なのかと思ってました!
イギリス映画かな?凄く面白そう!!
これってドッペルゲンガー?

アップされてる写真だけでも、この映画の雰囲気が伝わってきますね。映像も美しそうだし、主役の2人の演技も気になります~~!

それに劇中で流れる日本の昭和歌謡もどんなイメージで使われてるのかな~。ホントに不思議な内容ですね。;:゙;`(゚∀゚)`;:゙

投稿: ごみつ | 2014年11月15日 (土) 00時33分

映画とは直接関係ありませんが、昔、勤めていた会社に
双子の兄弟が勤めていました。
私は、そのことをはじめ知らず、兄弟のうち一人と仕事で
繋がりがあり、会議や打ち合わせを良くしていました。
ある日、会社の廊下ですれ違ったので、挨拶をしたつもりが
全く、相手からは反応がなく、何回かそのようなことが重なりました。
あとから、双子のことを聴き、驚いたことを思い出しました。
兄弟で同じ会社に就職していたとは、それにもビックリでした(笑)
二人とも、優秀でした^^

投稿: イザワ | 2014年11月15日 (土) 03時08分

☆ ノルウェーまだ~むさま ☆
こんにちは。
お子様たち、風邪をひかれているのですね。
ここのところ急に空気が乾燥してきてますものね~
私ものどがイガイガしてます。
どうぞお大事になさってくださいね。

この作品、テリー・ギリアムの「未来世紀ブラジル」や
デヴィッド・リンチの「イレイザーヘッド」の影響を受けている?
と言われているようですが、私はどちらも未見なので...

他に誰も乗っていない電車のシーンを見ているうちに
私はエヴァを思い出してしまいました。
ちょっと変わった作品ですが、好きな方は好きそうです。^^

投稿: ☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ | 2014年11月15日 (土) 10時25分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
そう、これイギリス映画なのですよね。
原作は未読なので、ドストエフスキーの小説に
どのくらい忠実なのか、ドッペルゲンガーという設定だけを
生かしているのか、わかりませんが...
ちょっと不思議な感じの作品で、映像も独特の世界がありました。

主演の2人もよかったですよ。
この作品をきっかけにおつきあいしているそうですが^^
2人とも独特の個性があって、お似合いですよね。

昭和歌謡にはびっくりしました。
エヴァの「翼をください」を思い出しましたが
奇妙な違和感が、不思議とマッチしていました。

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2014年11月15日 (土) 10時42分

☆ イザワさま ☆
こんにちは。
一卵性双生児って、ほんとうにそっくりですものね。
私も昔、同級生にいましたが、やっぱり区別がつきませんでした。^^

意識的に別の道に進む方たちもいらっしゃるようですが
就職まで同じというのはすごいですね。
やはり興味の対象が近かったのでしょうか?

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2014年11月15日 (土) 10時54分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「嗤う分身」:

» 嗤う分身/The Double [我想一個人映画美的女人blog]
ある日、自分と同じ姿の人間が現れて、全てを奪っていく ロシアの文豪、「罪と罰」や「カラマーゾフの兄弟」などでお馴染み ドストエフスキー著の「分身」を英語圏では初の映画化。 お気に入りのジェシー・アイゼンバーグが主演と聞いたときから楽しみにしてい...... [続きを読む]

受信: 2014年11月27日 (木) 23時45分

« 紅葉の軽井沢(2) 白糸の滝ドライヴ | トップページ | 「ルポ MOOC革命 無料オンライン授業の衝撃」 »