「本当にあった奇跡のサバイバル60」
ナショナルジオグラフィック編集の「本当にあった奇跡のサバイバル60」を読みました。
登山事故や自然災害、難破、飛行機墜落、誘拐といった絶望的状況に陥るも、強い精神力と生きながらえるための知恵、判断力、そして不屈の勇気で乗り越えて生還した人々の奇跡の物語、60話が紹介されています。
ひとつひとつがどれもドラマティックなエピソードなので、「大脱走」、「キャプテン・フィリップス」、「127時間」など、映画化されているものが多いのも納得です。読みながら、まさしく事実は小説より奇なり、を実感しました。
また、2009年の飛行機事故「ハドソン川の奇跡」や、2010年のチリの鉱山の落盤事故など、ニュースで知って記憶に新しいエピソードもありました。チリの鉱山の落盤事故については、映画化の話も出ていますね。
収録されているエピソードは古くは16、7世紀、多くは1900年以降に起こったできごと。各エピソードは2~4ページにまとめられていて、美しい写真や経路を示す地図など、資料も豊富で見やすかったです。感情を交えない淡々とした文章はリアリティがあり、ゾクゾクと緊張感を味わいながら読みました。
登山や南極探検などは、冒険者もある程度危険を覚悟し、いざという時の準備もして臨んでいるのでしょうが、飛行機事故などは一般の人たちがまったく心の準備のないままに巻き込まれる不慮の事態。そうした時に生死を分けるものは何か、ふと考えてしまいました。
いくつか印象に残ったエピソードから。
1931年、オーストラリア。人種隔離政策によって家族から引き離されたアボリジニの少女たちの、強制収容所からの脱出劇。彼女たちは、政府が設置した野生動物の侵入を防ぐためのフェンスに沿って2ヶ月間歩き続け、故郷にもどることができました。
2006年、オーストラリア。ヒッチハイクの若者を拾ったところ、睡眠薬を飲まされて車を奪われ、砂漠の中に置き去りにされた青年。彼は雨季でできた川に沿って歩きながら、トカゲやカエルを天日干しにして食べ、2ヶ月以上彷徨って生き延びました。救助された時には体重が半分になっていたそうです。
1971年、米国史上唯一の未解決のハイジャック事件。手荷物に入れて持ち込んだ爆弾で脅して飛行機を乗っ取り、シアトルに着陸させてパラシュートと現金を用意させた男。それから離陸後、男はポートランド付近でパラシュートで脱出したはずですが、その後の足取りがまったくつかめていません。
1972年、雪のアンデス山脈に飛行機が墜落。生存者がいないとみなされて捜索が打ち切られてしまったため、生き残った16人は自力で山から脱出するしかなくなりました。数人が代表して2ヶ月かかって山越えをし、ようやく人里にたどりついて救助をよぶことができました。
もっと過酷で壮絶なサバイバルもありましたが、ナショナルジオグラフィック編集ということもあって、ハリウッド映画の感覚で読んでしまったのもまた事実。小野田少尉の帰還とか、八甲田山 死の彷徨とか、日本版サバイバルが追補であってもおもしろそうです。
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コメント
日本人のものでは、やはり河口慧海の西蔵旅行記が凄いというか、凄まじいですね。他にも幕末にロシアを横断した大黒屋光太夫もまた凄いと思います。
私見ですが、日本人は食に関するタブーが少ないので、案外とサバイバル能力は高いと思います。山をやっている頃は、とにかく食べられるときに食べておくが必修でした。おかげで一食米2合は一人でいけます。胃袋が大きくなってしまったほどですが、数年で元に戻りました。
投稿: ヌマンタ | 2015年2月19日 (木) 14時42分
面白そう!
「キャプテン・フィリップス」「127時間」それから
アボリジニの少女たちの強制収容所からの脱出劇も映画で観ました。
どれも辛くて正視できないような感じでしたが
実話というところが凄いですよね。
1972年の雪のアンデス山脈に飛行機が墜落というのは
人肉を食べて生き延びたというあの話でしょうか?
投稿: zooey | 2015年2月19日 (木) 21時41分
セレンさん☆
こちらもかなり興味深いですねぇ。
わたしは映画も実話ものが好きなので、やはり興味が尽きないです。
何しろリアリティが違うし☆
人間のサバイバル力って凄いのですねぇ~
投稿: ノルウェーまだ~む | 2015年2月20日 (金) 00時15分
☆ ヌマンタさま ☆
こんにちは。
日本のサバイバルを集めても、おもしろい本ができそうですね。
NatGeo版とはかなりテイストの違ったものになるでしょうが。^^
関東大震災のエピソードも載っていましたが、欧米目線なので
どうしてもこれじゃない感がはんぱなかったです。(笑)
それにしても一食米2合はすごいですね。動けなくなりそう…
山に登る人は、ふだんでもチョコレートを持ち歩いている
と聞いたことがあります。
投稿: ☆ ヌマンタさま ☆ | 2015年2月20日 (金) 10時19分
☆ zooeyさま ☆
こんにちは。
この本、おもしろかったですよ。
アボリジニの少女たちの脱出劇も、映画になっているのですね。
「アポロ13」や、「キリング・フィールド」のもとになった
エピソードもありました
アンデス山脈の飛行機墜落事故、ご存知でしたか。
人肉がらみでは、「白鯨」のもとになったエピソードもありました。
極限状態の中で生きるって凄まじいことですよね...
投稿: ☆ zooeyさま ☆ | 2015年2月20日 (金) 10時31分
☆ ノルウェーまだ~むさま ☆
こちらにもありがとうございます♪
私も実話をもとにした作品、好きです。
やはりリアリティがあるので、共感しやすいですし
自分の立場に置き換えて、考えさせられることが多いです。
絶望的な状態に陥った時に、人間って
とてつもない力を発揮することがあるのでしょうね。
その勇気に励まされます。
投稿: ☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ | 2015年2月20日 (金) 10時44分
こんばんは!
わ~、これ面白そうですね!私もこういった実録もの大好きなので、今度読んでみようかな。ナショジオなら、図版や写真も良さそうです。
映画化されたサバイバルものっていうと、私、「奇跡の詩」っていう作品を思い出します。
飛行機がアマゾンに墜落して、一人だけ生き残った少女が、満身創痍、単身で生きて戻ってくる話。これものってましたか?
ところで私、一度の食事でご飯2合
は、けっこう楽勝ですよ。(笑)食べすぎだから食べないだけで。(笑)
投稿: ごみつ | 2015年2月21日 (土) 01時53分
過酷な状況が描写された映像を直視できなくて映画で見たことないのですが、本なら読めそうかなと思いました。
実話を映画化したものは、事実と変えてみて視聴者ウケを狙っているのでは?と思うものもあるから、
こういう本はぜひ読んでみたいです。
私は精神力がなくてすぐになまけるから、戒めの為にも読むべきかも。
自分は恵まれた環境にあるということを認識するためにも(^^)
投稿: ruri | 2015年2月21日 (土) 19時36分
☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
この本、ゾクゾクとした緊張感があっておもしろかったです。
写真や地図も豊富で、より具体的にイメージを
ふくらませながら、読むことができました。
アマゾンに墜落して、一人だけ生き残った女の子の話
載っていましたよ!
お父さんに教わったことを思い出しながら
川沿いの道を歩き続けて助かったのですよね。
これも映画になっているのですね。見てみたいです☆
ごみつさん、2合いけますか?
私はさすがに無理。量もさることながら途中で飽きちゃいそうです。^^
投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2015年2月21日 (土) 23時47分
☆ ruriさま ☆
こんにちは。
わかります、わかります。
私も映像では、あまり過酷なものは見れないので...
(「127時間」も途中どうしても見れなくて
目を背けてしまった場面がありました。)
本だと頭の中で情報をセーヴして読めるのかもしれませんね。
ruriさんはいつもきちんとしていらっしゃるじゃないですか。
でもまあ、こういう過酷な状況にはできれば陥りたくないですね...^^;
投稿: ☆ ruriさま ☆ | 2015年2月21日 (土) 23時58分